From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

世界最強にお洒落なプロレスラー
ウルティモ・ドラゴンさん

Saturday, October 10th, 2015

ウルティモ・ドラゴンさん

プロレスラー、TORYUMON代表

interview kentaro matsuo photography natsuko okada

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プロレスラー、ウルティモ・ドラゴンさんのご登場です。本場メキシコ、日本をはじめ、アメリカ、カナダ、英国など、世界中を転戦している、超有名レスラーです。

私は、これまで何百ものお洒落な人に会って来ましたが、覆面を被った人を取材したのは、初めてのことです。プロレスという、一見ファッションとは無縁の世界に、ここまでお洒落な方がいるとは、正直驚きです。

 

スーツはローマのジョバンニ・チェレンターノのスミズーラ。

「よく顔を出しているイタリアのシガークラブの会長、サルバトーレ・パリージさんに進められたのがきっかけです。このクラブには、イタリアの大臣、議員、実業家など錚々たる人たちが所属していて、皆いいものを知っているのです。そこで『本当にいいスーツは、チェレンターノで作るものだ』と言われて、いきなり3着頼みました。ナポリのスーツも好きなのですが、ここのものはディテールの仕上げがキレイなのです。素材が麻なので、ポケットをパッチにして、遊び心を入れてみました」と洋服への造詣も、プロ級です

 

「自分の体型はウエストに比べ、二の腕や太ももが太過ぎて、プレタのスーツは入らないのです。また僧帽筋が発達しているので、スーツが肩にフィットしません。やはりオーダーメイドでないと、ダメなのです」

なるほど、プロレスラーならではのお悩みですね。ちなみに私自身の体型は、ドラゴンさんと真逆です。

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シャツは、ナポリのルカ・アビタービレ。

「シャツもいろいろなところで作りましたが、着心地という点で、ここは素晴らしいですね。実は今着ているスーツのパンツの裏地には、このシャツとそっくりな生地が張ってあるのです。テーラーの『こういうシャツを着なさい』というメッセージなのかと思って、これを選びました。

 

タイは、やはりナポリのE.G.カペッリ。

「ナポリと言えば、某Mが有名ですが、本当のナポリ人はカペッリをするのです。今日の1本はマスクの色に合わせて、選んでみました」

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そのマスクも、やはりオーダー品です。

「マスクは、メキシコの職人に作ってもらったものです。生地はロサンゼルスにて、自分で買ったものを持ち込みました。エンターティンメントの街、ロスには派手な生地がたくさん売っているのです。もともとはダンサーなどの衣装用の生地だと思います。実は日本にもマスクを縫う職人はいるのですが、やはり本場メキシコ製と比べると、何かが違いますね。これはちょうど、日本製スーツとイタリア製スーツの差のようなもので、感性そのものが違うのだと思います」

ちなみに、ドラゴンさんが消費するマスクの数は凄まじく、今でも月に10〜20枚程度は発注していて、これまでにのべ3000枚ほど作って来たそうです。 さらに言うと、オーダースーツは50着、タイは200本、シャツは50着、靴は150足ほどお持ちだとか。何事にもスケールが違いますね。

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時計は、ナポリのカラブリット28というブランド。まるで懐中時計のようなデザインが面白いですね。クオーツですが、向こうではお洒落な人の間で秘かな人気だそうです。

 

カフスはメキシコのタスコという“銀の街”で買ったもの。

「コーディネイトに何かしらメキシコのものを取り入れるようにしています。これはアステカ時代のカレンダーがモチーフです」

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シューズは、日本で作ったもの。

「みちのくプロレスに参戦しているので、よく東北へ行くのですが、盛岡に菅原靴店という地方らしからぬ素敵な店があって、そこで作ってもらったものです。イタリアでも何足かオーダーしましたが、自分の足には合いませんでした。しかし、これはとても履き心地がいい」

 

小さい頃からプロレス少年だったというドラゴンさんは、往年のレスラーたちのスタイルに憧れていたそうです。

「力道山やジャイアント馬場さんなど、昔のレスラーたちは公の場ではいつも、スーツでビシッとキメていました。特にカッコよかったのは、ミル・マスカラスです。全盛期の彼の写真を見てみて下さい。そのコーディネイトは完璧ですよ。来日の際は飛行機の中ではリラックスした格好でいても、機から降りる際には、いちいちスーツに着替えていたそうです」

 

日本に生まれ、メキシコで開花して、世界で活躍するウルティモ・ドラゴンさんには、昔のプロレスラーが持つ“粋”を継承していきたいという、熱き思いがあるようです。

 

 

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