VITALE BARBERIS CANONICO

世界のトップサルトリアが認めた服地

October 2020

父フランチェスコは1941年生まれ。8歳でサルトの道に入り、15歳でミラノに渡ってサルトリアを渡り歩き、マリオ・ドンニーニのもとで12年働いて独立。83年生まれのジャンフランチェスコは3人兄弟の末っ子で、父フランチェスコのもとで11歳のときから修業をはじめ、立派な2代目へと成長を遂げた。後継者問題を抱えるイタリアのサルトリア界にあって、ふたりの未来は明るい。

 

 

 

VITALE BARBERIS CANONICOを語るー

 

MUSELLA DEMBECH

ジャンニ・アニェッリの服を200着仕立てた男

 

 イタリアのサルトリアはほとんどが個人経営で、その行く末の鍵を握っているのはジュニアの存在だ。超一流といわれているサルトたちはだいぶ高齢にさしかかり、引退と睨めっこしている状態である。

 

 一方でジュニアが継いだサルトリアは、父の抜きんでた技術と経験に新しい感性を注入し、変革を起こしている。スタイルが大きく変わるわけではないけれど、ムゼッラ デンベックのようにミラノの小さなサルトリアが、世界から注目されるサルトリアになるといった感じだ。

 

 

叩き上げ世代のサルトは高齢になり、同僚たちが引退していくなかで、ムゼッラ・デンベックは息子のジャンフランチェスコがサルトの仕事を継いでくれた。200着ものアニェッリの服を仕立てることで、父はエレガントな服地とは何か、そしてエレガントな服とは何かを学んできた。アニェッリが好んで仕立てたというダブルブレステッドのスタイルは、アニェッリ亡き今もここムゼッラ・デンベックの仕立てに息づいているのだ。今日、息子のジャンフランチェスコは父と一緒に工房で服を仕立て、ときに世界でトランクショーを開いている。

 

Musella Dembech

Via Celestino IV, 9, 20123 Milano

Tel.+39-340-8520357

 

 

 父フランチェスコ・ムゼッラ・デンベックは今日まで知る人ぞ知る存在だった。彼はナポリ近郊のカゼルタに生まれ、8歳でサルトの道に入った。15歳のときにミラノに渡っていくつかのサルトリアで修業したのち、ミラノの伝説、マリオ・ドンニーニのもとで働いた。当時ドンニーニはA.カラチェーニと工房をシェアしており、かのジャンニ・アニェッリはそれぞれでスーツを仕立てていた。

 

 アニェッリがドンニーニに注文したジャケットは、すべてフランチェスコが仕立てていたという。その数およそ200着。超一流の嗜好を長らく見てきたからか、フランチェスコは生地に対して一家言ある。その彼が最近好んでいるのがVBCである。

 

「ここ数年のVBCは格段にクオリティを上げていて、長く着られる素晴らしい生地を多数揃えるようになりました。それに伴い、私たちもVBCの生地を好んで使うようになったのです。モヘア混やフランネルは大変素晴らしく、英国生地同様のタッチがありながら、決して重すぎず、現代的で今日のライフスタイルにもマッチしている。ベーシックな中にもほんのり色気を備えた色柄もいい。アニェッリが好んでいたようなヴィンテージ調の色柄、タッチが、今のVBCにはある。イタリアが最もエレガントだった時代の空気を感じる生地なのです」

 

 

MUSELLA DEMBECHが選ぶ

お気に入りVBCファブリック

Wool & Super Fine Kid Mohair

「VBCの中で特に魅力を感じるのは仕立て映えのする生地」とのことで、21マイクロンシリーズを筆頭にフランネルなどいくつかの生地をあげていたが、面白いところではウール&スーパーファインキッドモヘアの名があった。弾力性としなやかさを備え、シワ回復力にも長けている同生地は無地でのラインナップになるが、発色の美しいブルーが秀逸。230g/mと軽量で、モヘア特有の光沢も抑えて品よくまとまっている。今日のサマースーツに大変おすすめの生地である。

 

本記事はISSUE14(2017年1月25日発売号)にて掲載されたものです。
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