THE RAKE DISPATCH: PANTELLERIA
アルマーニが惚れた島、パンテッレリーア
September 2022
イタリア、パンテッレリーアは、地中海のシチリア島とアフリカ大陸チュニジアの間に位置する火山島である。
温泉があり、ワイナリーがあり、何よりも美しい海がある。
その名前は、焼き菓子スフォリアテッラのように、あるいは海の女神の名前のように甘美である。
by CHRIS COTONOU
地中海のシチリア海峡に浮かぶパンテッレリーアは、大自然に囲まれた島だ。昔から豊かな暮らしと上質なものを愛する人たちの秘密の場所になっている。特にデザイナー、ジョルジオ・アルマーニは1979年からこの島に別荘を所有し、毎年夏になると友人たちを連れて頻繁に訪れている。
アルマーニはこの島のどこを見て、ジェットセッターの友人たちに披露する価値があると思ったのだろうか。それは、誰にも邪魔されない平穏さや、昔ながらのローカルな文化かもしれない。村々は半世紀前の面影を残している。村人たちはユーモアに溢れ、温かいと評判で、往年のイタリアのロマンティックな雰囲気が残されている。
しかし、島の奥に進むと、風景は一変する。マスタードイエローの道を進むと、青々とした茂みと澄み切った海、天然のプールにぶつかる。水平線の向こうには、遠くチュニジアを望むことができる。
ラグジュアリーなものは何ひとつないが、アラン・ドロンの映画『太陽が知っている』(1969年)を原案とした『胸騒ぎのシチリア』(2005年)で見られるような、手つかずの大自然がある。この映画は、パンテッレリーアへの旅に何を着ていくかを考える上で参考になる。レイフ・ファインズが着ていたパステル調のリネンシャツは、島の風景の中で際立っていた。軽いトラウザーズはスエードのローファーと実にマッチしていた。ビーチから山でのディナーまで、イージーに楽しめるチョイスだ。
<EAT>
この島には、高級レストランから気軽なトラットリアまで、さまざまなタイプのレストランが揃っている。
ミシュランにも掲載されている「La Nicchia(ラ・ニッキア)」は、18世紀の建物とセンスのいい内装が特徴だ。料理はクラシックなイタリアンを現代風にアレンジしたもの。シチリアワインと地元産のポモドーロに酔いしれながら、白いテーブルクロス越しに恋人を見つめるには、理想的なロケーションである。
海辺でランチを楽しむなら、「Alta Marea(アルタ・マレア)」が最適だ。食事の前にはひと泳ぎすることもできる。水着の用意をお忘れなく。
<STAY>
数ある宿泊施設の中でも、「Sikelia(シケリア)」ほど魅力的な場所はないだろう。山と白い石壁に囲まれたこのホテルは、豪華なプール、レストラン、そして火山岩を利用した伝統的な石造り建築「ダムーゾ」で出来ており、地中海の情緒たっぷりだが、イビサ島のような騒々しさはない。
この島には、他にラグジュアリーなホテルはほとんどないが、シケリアが満室だった場合、代わりに地中海を見渡せる「Zubebi(ズベビ)」もおすすめだ。
<DRINK>
ホテルのバーで一杯やるのもいいし、島のバーに出かけてみるのもいい。カリアリ通りにある「Cicci’s(チッチ)」は、照明を落としたエレガントな雰囲気で、食後のネグローニを飲むのに最適だ。「Emporio del Gusto(エンポリオ・デル・グスト)」は南イタリアのワインを楽しむのによい。どちらも食事をとることもできる。
この島のバーの魅力は、その素朴さにある。籐やプラスチックの椅子が置かれた、ローカルなスポットだ。ここはカプリ島ではないし、そうなろうともしていない。
<DO>
アクティビティは昔ながらのオーセンティックなものが多い。山でのハイキングや、海岸線のあちこちで見られるクリフダイビングである。
町では、ふたつの大岩「バラタ・デイ・トゥルキ」を眺めながら、午後のひとときを過ごすことができる。アイスクリームを片手に、親しみやすいニカ港を散歩するのもいいだろう。
パンテッレリーアがこれほど長く昔の姿を留めてきたのは奇跡的である。火山の熱気と大自然、海岸の静けさ……。昔ながらの活気に満ちているが、他の島々のように過度な商業化には至っていない。
ジョルジオ・アルマーニは、それを望まないかもしれないが、私はこう言わざるを得ない。
「パンテッレリーアは、最高にレイキッシュなリゾート地である」