RALPH LAUREN: IN HIS OWN FASHION

ラルフ・ローレン:彼自身のファッションとは?

June 2022

アメリカの著名な服飾評論家であるアラン・フラッサーが、全米で最も偉大なデザイナーについて語る。

ラルフ・ローレンがファッションの枠を超え、すべてのモノ・コトの最前線にいる理由とは?

 

 

by CHRISTIAN BARKER

 

 

 


アラン・フラッサーはその著書で「ポロコートほど、ラルフのスタイルを象徴する衣服はない」と綴っている。

 

 

 

「ファッション・ブランドのランウェイで目にする服のほとんどは、実際にワードローブとして着用するのは難しい。それらはブランドのコンセプトを示すために存在しており、店頭に並べられる服とは目的が違うのだ」

 

 そう語るのはアメリカの著名な服飾評論家、アラン・フラッサーである。ラルフ・ローレンが一般的な服飾デザイナーと一線を画しているのは、ランウェイでの派手さではなく、永続的なスタイルを追求していることだとフラッサーは語る。

 

「ラルフは決してファッションの世界に入りたかったわけではない。彼は自分自身のスタイルを表現したかったのだ。そこに大きな違いがある」

 

 こんなアプローチから、フラッサーの著書『Ralph Lauren: In His Own Fashion』が生まれた。10年の歳月をかけて執筆された豪華なブックは、1967年にラルフ・ローレンが自身の名を冠したブランドを設立して以来、50年以上にわたって彼が形作った世界と、シームレスでタイムレスなスタイルや美学を網羅し、彼の才能を余すところなく紹介している。

 

「上手な着こなし方を教えること。その場しのぎではなく、先々まで役に立つワードローブを構築させること」がローレンのポリシーなのだという。

 

 

 

 

 多くのデザイナーが目新しく、けばけばしいものを作るのに熱中しているのに対し、ローレンのアプローチは正反対だ。

 

「ラルフの関心は、顧客が持っているワードローブに自然に加えられるようなクラシックな服をデザインすることにある。彼は人々に必要な要素と、それを組み合わせるためのノウハウを提供し、“社会的に成功するためのスタイル”を学ばせたいのだ」

 

 ラルフ ローレンのランウェイに登場する服は常に素晴らしいが、最も興味深いのは相反する服と服との組み合わせだ。例えば、着古したデニムのウエスタン・シャツにピンストライプのスーツ、キャメルのポロコートにグレイのスウェット・パンツ、フィッシャーマンズ・セーターにヴィンテージのモーターサイクル・ジャケットといった組み合わせだ。フラッサーはこう言う。

 

「着こなしを知り尽くした男だけができる、高度なテクニックだ」

 

 もちろん、こうしたアプローチでは、瞬発的な衝撃を与えたり、注目を集めたりする服作りよりも、メディアの注目は得られない。

 

「挑発的で刺激的になりやすいのは、ファッション・ブランドとしては仕方がないのかもしれない。しかし私は、本質的にスタイリッシュでタイムレスな服を作ることは、もっと難しく、もっと価値があることだと思っている。特に今日ではサステナビリティの意識が高まっており、長く使えるものを作ったり、買ったりすることが重要となりつつある」

 

 

 

 

 

「アメリカンドリームを体現するデザイナーにとって、不朽の名作を生み出そうというこの哲学は、むしろヨーロッパ的な考え方だ。ヨーロッパのメディアこそ、ラルフのことをよりよく理解していると思う。なぜなら、彼らは長く使えるものに対して、より高い評価を与えているのだから」

 

 アメリカのファッション界は一貫性ではなく、常に斬新さを求めている。そのため、アメリカのファッション・ジャーナリストの中には、ローレンのコレクションは毎シーズン同じことを繰り返していると見なす者もいる。

 

「ジャーナリストから賞賛されないことは、ローレンにとってちょっとしたトラウマになっていると思う」とフラッサーは言う。しかしローレンが半世紀にわたるキャリアの中でファッション界に多大な影響を与えたことを鑑みると、これは非常に不当なことだと感じている。

 

「他のどの人物よりも、ファッション界に影響を与えている。確固たる自分の世界を築き上げ、そして本当に世界全体を変えてしまったのだから」

 

 

 


ラルフ・ローレンは、従業員に慕われることでも知られている。これは1986年、バフィー・ビリテラとのツーショット。彼女はその後長く勤め、取締役のひとりとなった。

 

 

 

「平日はビジネスマン、夜は劇場通い、週末はスポーツマン、休暇中はカウボーイやセーラー、サーファーなど……ひとりの人物にもいろいろな異なるスタイルがある。ラルフは洋服が着る人のライフスタイルを反映するべきだということを、最初に意識したデザイナーだ」

 

 これは大きな発想の転換だった。

 

「誰もそのような視点からファッションにアプローチしたことはなかった」

 

 さまざまな人のさまざまなスタイルに対応できるようなブランドを作ろうとした人はいなかった。ラルフ・ローレンは、ライフスタイル・マーケティングのパイオニアとして、私たち自身を着飾る方法だけでなく、私たちを取り巻く環境をも形作ってきたのだ。

 

 ラルフ・ローレン自身のスタイルは、彼の美学を端的に表している。

 

「本を執筆するにつれて、ラルフと彼の仕事とのつながりが、どれほど個人的なものであるかがわかった。ローレンはポロのデザイナーであると同時に、ポロそのものなのだ。自分がメンズウェアを着るのはもちろん、妻にはレディスウェアを着用させ、そして3人の子供たちもポロの子供服を着せて育てた。家ではポロのホームインテリア製品に囲まれて暮らしている」

 

 

 

 

 

 

「過去50年で、彼はポロだけではなく、他のブランドとポロを組み合わせる人々に囲まれて仕事をしてきた。今まで自分のデザインにこういった形で日々接するような経験をしたデザイナーはいなかっただろう。カルバン・クラインも、ジョルジオ・アルマーニも、イヴ・サンローランも、ココ・シャネルでさえも。これだけ消費者に近いデザイナーはかつていなかった」

 

 フラッサーの本が発売されると、ローレンはこう言ったという。

 

「この本がとても古い本のように見えるのが好きだ。これは永遠に残る本のようだ」

 

 

「流行に左右されず、しかし時代を先取りしていること」。それがローレンの成功の秘訣だとフラッサーは言う。

 

 ラルフ・ローレンの才能は、私たちが意識するより前に、私たちが欲しいものを先取りしてデザインすることである。ある意味、彼はずっとファッションの最前線にいるのだ。