THE EQS: A GIFT TO THE WORLD

電気自動車の頂点を極める

November 2022

メルセデスの最高級電気自動車EQSは、700km※という航続距離を達成した。その性能とラグジュアリネスを、自動車評論家、渡辺慎太郎が解説する。

 

 

 

text shintaro watanabe

 

 

 


EQS 450+
メルセデスが誇る最上級電気自動車。比類なきラグジュアリーネスとクラス最高の性能を誇る。全長×全幅×全高:5,225×1,925×1,520mm ※写真はオプション装着車
 

 

 

 

 

 “Cd値”という言葉をご存じだろうか。空気抵抗係数のことで、数値が小さくなるほど空気抵抗を受けにくいボディになっている。メルセデス・ベンツの電気自動車EQSのCd値は0.20(欧州仕様参考値)。これは量産車として世界最高レベルである(2022年0月時点。メルセデス・ベンツ日本調べ)。それまで世界トップクラスだったSクラスの0.22を下回った。メルセデス・ベンツは空力に関しても、世界基準を自ら塗り替えているのである。

 

 電気自動車にとって、空力はとても重要な要素となる。通常、バッテリーはホイールベース内のフロア下に収められている。ホイールベースを伸ばせばバッテリー容量も増えるが、曲がりにくくなるし重量も増加する。バッテリー容量=航続可能距離ではあるけれど、空気抵抗を減らすと航続距離も延ばせるのである。結果、EQS 450+は700km※の航続距離を達成した。

 

 

 

4ドアセダンに見えるスタイリングだが、実はリアにテールゲートを持つ。EQS 450+にはパッケージオプション、メルセデスAMG EQS 53 4MATIC+には標準で装備されるMBUXハイパースクリーンはダッシュボード全体を全幅141cmもの特殊ガラスで覆い、3つディスプレイを内蔵する。HEPAフィルターによる強力な空気清浄機能を持つエアコンも装備。もちろん最新の安全装備や電気自動車用にアレンジしたMBUXも備えている。※写真はイメージ

 

 

 

 空力向上による効果はこれだけではない。電気自動車はエンジンがないので、そもそもエンジン搭載車よりも静粛性が高く、エンジン音でかき消されていた音が目立つようになる。風切り音もそのひとつだが、EQSの風切り音の少なさは、これまで経験したことがないレベルでたいそう驚いた。ラグジュアリーサルーンには必須の性能である静粛性も、EQSは比類なきレベルに達している。

 

 ホイールベースは3mを超えるので、室内には広大なスペースが確保されている。いっぽうで、曲がりにくくなるというデメリットは後輪操舵機構を装備することで解消した。エアサスペンションとの統合制御により、乗り心地の向上だけでなく正確無比なハンドリングも実現している。

 

 電気自動車ならではの滑らかで力強い動力性能、エアサスペンションがもたらす優れた快適性と操縦性、そして圧倒的な静粛性は、ラグジュアリーセダンの頂点を極めている。

 

 

 


リアシートは特に足元がゆったりとしておりくつろげる。107.8kWhのリチウムイオンバッテリーにより、EQS 450+は700km※(メルセデス AMG EQS 53 4MATIC+は601km)の航続距離を確保。※写真はイメージ

 

 

 

 

メルセデスAMGからも最上級電気自動車はリリースされた


Mercedes-AMG EQS 53 4MATIC+ MP202301
EQSは後輪駆動のEQS 450+に加えて、4輪駆動のメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+を用意する。658PS/950N・mものパワースペックはスポーツカーと呼ぶにふさわしいものだが荒々しさはなく、むしろ上質感を感じさせる。5mを超えるボディとは思えないほどよく曲がり、約2.6トンもの車重を感じさせない加速性能は圧巻だ。全長×全幅×全高:5,225×1,925×1,520mm ※写真はオプション装着車

 

 

 

 

※一充電走行距離(WLTCモード/国土交通省審査値、EQS 450+の場合)は、定められた試験条件での値。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)、整備状況(タイヤの空気圧等)に応じて値は異なる。電気自動車は、走り方や使い方、使用環境等によって航続可能距離が大きく異なる。WLTCモードは、市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な走行モード。市街地モードは信号や渋滞等の影響を受ける比較的低速な走行を想定し、郊外モードは信号や渋滞等の影響をあまり受けない走行を想定、高速道路モードは高速道路等での走行を想定。※写真はオプション装着車。写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合あり。

 

 

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