The all new EQB

ユーティリティで選ぶ電気自動車の本命

September 2022

ベストセラーGLBをベースにした電気自動車が登場した。

高い評価を得た機能性に加え、BEVならではの走りを実現している。

「メルセデス博士」の異名をとる自動車評論家の渡辺慎太郎が解説する。

 

 

 

text SHINTARO WATANABE

 

 

 

左:EQB 350 4MATIC(全長×全幅×全高:4,685×1,835×1,705mm ※写真はオプション装着車)

右:EQB 250(全長×全幅×全高:4,685×1,835×1,705mm ※写真はオプション装着車)

安全上の理由から3列目シートの対応身長が両モデルとも165cm以下

 

 

 

 

 数あるメルセデスのSUVの中で、GLBは全体的なバランスがとてもよく取れた1台だと個人的には思っている。3列目シートを装備するためにGLAよりも延長したホイールベースは、結果的に優れた直進安定性や乗り心地までもたらしたからだ。3列目シートは、不要なときはきれいに収納でき、代わりに広大なラゲッジスペースが出現する。機能性に長けたモデルでもある。

 

 EQBはそんなGLBをベースにしたBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)である。前後輪の間の床下にバッテリーを搭載しているので、室内スペースはGLBと比較してもほとんど変わりない。むしろ、GLBよりも重心が下がり、これがハンドリングのさらなる向上に大きく寄与している。ステアリングを左右に何度も切り返すような場面でも、ボディがグラッとすることはなく、安定した旋回姿勢をキープする。全高がちょっと低くなった感覚さえ覚えるほどだ。都会の喧噪の中を流すくらいのタウンスピードでも、木々の息吹を浴びるワインディングロードでも、EQBは運転する愉しさを常に感じさせてくれる。

 

 日本仕様には前輪駆動のEQB 250と4輪駆動のEQB 350 4MATICの2モデルが用意されている。EQB 250でも日常領域では活発な動力性能を備えているので、パワー不足の心配はまったくない。いっぽうで、BEVならではの走りをより体感できるのはEQB 350 4MATICである。BEVの4輪駆動では、アクセルペダルからの入力を電気信号でモーターへ伝えるので、内燃機の4輪駆動よりも圧倒的にレスポンスがいい。

 

 その証拠に、EQB 350 4MATICの前後駆動力配分は1秒間に約100回というとてつもない速さで、路面や運転状況に応じて常時最適化されるのである。4輪駆動がその威力を発揮するのは雪道など滑りやすい路面だけとは限らない。登り坂や下り坂、旋回中や高速巡航などドライの路面でも、4輪に最適な駆動力伝達が行われることによりクルマの挙動は安定し、スタビリティの高い走りが実現する。

 

 EQBのステアリングにはパドルが装着されている。内燃機搭載車ではトランスミッションのマニュアル操作に使うが、BEVでは回生ブレーキの強度調整が行える。BEVにはトランスミッションがないので、エンジンブレーキが使えない。その代わりとなるのが回生ブレーキだ。回生ブレーキを使わないコースティング、軽度の回生ブレーキ、中度の回生ブレーキ、前走車との車間距離や路面の勾配などを考慮した上で最適な強度を自動で選ぶ計4段階を、パドルによって選択できるようになっている。

 

 GLBのバランスのよさを冒頭で書いたけれど、それをベースにしたEQBは、BEVになったことでGLBのポテンシャルをさらに引き出し、そこにBEVならではの面白さが加わって、唯一無二の魅力を携えたモデルに仕上がっている。

 

 

 

インテリアの意匠はGLBに準じているが、所々にローズゴールド(標準モデルのみ)のアクセントが配されている。これはモーターの銅線コイルをモチーフにしたもので、さりげなくこのクルマがBEVであることを主張する。MBUX、Mercedes me connect(サービスの利用には別途手続きが必要)、インテリジェントドライブなどの先進技術はもれなく装備。GLBの機能性も踏襲する。

 

 

多彩なアレンジが可能なシートには最大7人が乗車可能だ。

 

 

 

 

※日本仕様のハンドル位置は右ハンドル/本記事内写真の仕様・装備は日本仕様と異なる場合あり

 

 

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