IN CONVERSATION WITH:
THE ARMOURY’S MARK CHO

アーモリーの“マーク・チョー”

Sunday, October 27th, 2019

香港とニューヨークにてショップを展開し、メンズウェアの“メッカ”といわれるアーモリー。

その共同設立者であるマーク・チョーが、彼のスタイル哲学を明らかにする。

 

by christian barker

 

  彼と友人のアラン・シー、イーサン・ニュートンは、2010年に“インターナショナル・クラシック・アルチザン・クロージング”を扱う店“アーモリー”を設立した。それ以前、マーク・チョーは投資ファンドで働いており、数百万ドルもの価値を持つ不動産物件を扱っていた。メンズウェアの世界への転身は、かなり劇的に見えるかもしれない。

 

 しかし実際には、彼がアーモリーと、もうひとつのビジネスであるブランド、ドレイクスでしていることは、前職と似ている。服装の世界において、紳士が高級ワードローブに“投資”することについて、賢明なアドバイスをしているのだ。

 

 チョーは間違いなく、クラシック・テイラーリングの大家である。彼ほどスタイルについて尋ねるのに適した人物はいないだろう。それはアメリカ、イギリス、アフリカ、極東にまたがる教育とキャリアの中で培われたものだ。

 

 日本からアメリカへの道中でチョーをつかまえ、どんなアイテムを購入するのが、最も効率的な“投資”かを尋ねてみた。なぜアルチザンたちが彼を惹きつけるのか? そして現代社会のなかで、いかに相応しい装いをするかということについて、語り合ってみた。

 

——“グッド・ヴァリュー”について、個人的な定義を教えて下さい。

 

「“ヴァリュー”とは、ベネフィット(利益)からコストを引いたものです。ただしベネフィットは、広く解釈されるべきです。それはあなたが、本当に好きなものを身に着けることによって、どれだけいい気分になれるかということです。また、雨の日を乗り切るために適切なゴム底の靴を履くなど、より実用的なものになる可能性もあります。グッド・ヴァリューとは、アイテムのコストが、受け取ったベネフィットよりも、少ないときに得られるものです」

 

 

——投資・収益率の観点から、あなたが過去に購入したアイテムで、とてもグッド・ヴァリューであることが証明されているものには、どのようなものがありますか?

 

「基準に合うものがいくつかあります。まずはブラウンのスエード・シューズ。私が何よりも愛用しているものです。カーフよりも柔らかく、非常に用途が広く、メンテナンスの手間も必要としません。それから白いボタンダウン・カラーのシャツ。特にドレイクスとアスコットチャンのシャツです。テーラード・クロージングと合わせるのもいいし、単体でも頻繁に着ています。あとはネイビーのカシミア・ブレザー。見た目も素晴らしく、冬には非常に便利です。多くの場合、オーバーコートが必要ないほど、十分に温かいものです」

 

——アーモリーの哲学は、サスティナビリティとどのように結びついていますか?

 

「長く使えるものを、選ぶということはとても重要なことです。フル・キャンバス芯地で丁寧に作られたテーラードジャケットは、実に長持ちします。キャンバス地は、ジャケットがあなたの体に優雅にフィットするのを助けてくれます。体重が増えたり減ったりして、ジャケットが体に合わなくなった場合は、再びフィットするようにお直しできます。同じことがよい仕立てのトラウザーズにも当てはまります。注意深くお直しすれば、仕立て服を復活させるのはとても簡単なのです。

 

 アーモリーのアウトレット兼ユーズド・クロージング・ショップであるドロップ93では、アーモリーの顧客の中古衣料品を扱っています。顧客がもはやその服を必要としないと判断した場合、彼らは私たちのところで売却することができます。これらの衣服は、多くの場合、元の所有者のために作られたオーダーメイドであり、所有者はそれらを新しいオーナーに譲りたいと考えています。売り出す前には、徹底的なチェックを行います。すべてのアイテムを検査し、各サイズを慎重に測定し、状態レポートと明確な写真を提供して、興味を持った人が安心して購入できるようにしています。

 

 私にとって重要なことは、人々に自分の服の価値を認識させることです。それは安い服が手軽に入手できるようになったことで、ますます失われていることだと思います。わずか100年前の人々は、衣類を家宝として扱っていました。服を買うためは、収入のかなりの部分を必要としましたが、その代わり長い間役に立つものでした。それは美しいアプローチだと思います。中国人がオフシーズンの衣類を保管するために使用していた、クスノキ製のチェストを見てみて下さい。素晴らしい職人技が使われており、さらに価値があると考えられていた衣服を保管するために使用されていたものです。

 

 私はこの業界で10年近く働いており、一着の洋服を作るのに、どれだけの労力が重ねられているのかを知っています。よい服は安価な商品ではなく、人間の努力の賜物であり、真の価値があることを人々に知ってもらいたいのです」

 

 

——家族やメンターから学んだ最も重要な教訓は何ですか?

 

「人は本質的に誤りやすいということです。笑ってしまうような話ですが。私たちは理解する前に、直感で考えてしまいがちであり、私たちの論理は私たちが認知することよりもはるかに脆弱です。そう認めると、私自身や他のすべての人について、人生が少し楽になります。自分の不完全さを知ることで、自分の過ちを認めやすくなります。人々がどれほど不完全であるかを知ると、周りの人々を許すことができるようになります。さらに、あなたの人生により良い期待を持たせ、他の人々と、より良い関係を築くのに役立ちます。

 

 実はそのことを学んだのは、家族やメンターからではありませんでした。私は、ダニエル・カーネマンの本『ファスト&スロー』から学んだのです。それは心理学、統計学、経済学を組み合わせた“行動経済学”の分野で、最も重要な本のひとつです」

 

——あなたの生い立ち、キャリアを反映して、あなたのビジネスは非常にインターナショナルです。英国、アメリカ、アジアなど、それぞれ異なる文化を持つ顧客に、等しくアピールするブランドを、どのようにして作ったのですか?

 

「英国、アメリカ、アジアは確かに別個の場所ですが、アーモリーとドロップ93は非常にニッチなビジネスです。私たちは、デザイン、クオリティ、ディテール、そしてクラシックなスタイルに対して、共通の嗜好を有しているお客様にアピールしています。

 

 アーモリーは、他の店とは少し異なります。それは私と共同創業者のアラン・シー、そして店のバイヤーたちも、すべて販売員として店に立っているという点です。その結果、私たちにとってお客様は非常に近しい存在です。彼らは私たちの友人であり、私たちが彼らに影響を与えるのと同じくらい、彼らのテイストは私たちに影響を与えます。新しい製品を作成したり、バイイングしたりするときは、自分用に購入するのと同じように考え、友人である顧客に楽しんでもらおうと思うのです」

 

——一緒に仕事をするブランドを選ぶ際の、判断基準は何ですか?

 

「私が言ったように、私たちはお客様の好みだけでなく、自分自身の好みにも基づいてセレクトを行います。生産量が少なく、ハンドメイドのパーツが多く、本物の存在感を持つものを強く好みます。私たちは通常、私たちが実際に興味を持っているブランドから製品を購入しようとします。まずは彼らの定期的な顧客となって商品を購入します。それから店舗に在庫を置き、さらなる協力関係を築いていきます。また、ブランドとコラボレーションして、彼らとわれわれの専門知識を組み合わせ、新しいエクスクルーシブ商品を開発することも行っています」

 

——最後に、THE RAKEとのコラボレーションを決定した理由は何ですか?

 

「THE RAKEは、幅広く多様な読者を持っています。それがヴァリューです。興味深いセレクションと、魅力的なプレゼンテーションを組み合わせているとも思います。洋服を愛してはいるが、普段はそんなに服ばかりにお金を使うことができない人々もいることを理解しています。だからこそTHE RAKEは、アーモリーとドロップ93が、新しく興味深く、また好奇心でいっぱいの顧客にリーチするための、完璧なパートナーなのです」