RAKE TRAVEL: PARIS EDITION WITH KEVIS MANZI
ラルフ ローレン パリ旗艦店の名物スタッフ、
ケヴィス・マンジ インタビュー
May 2022
パリ在住で、ラルフ ローレン フラッグシップ・ストアのシニアセールスアソシエイト/スタイリストを務める名物スタッフ、ケヴィス・マンジのスタイルとインタビューをお届けしよう。ルワンダからパリへ移住した彼が、花の都で見たものとは?
fashion director MELISSA JANE TARLING
by FREDDIE ANDERSON
photography BRANDON HINTON
アマルフィ・イエローの“ヘリテージ”ジャケット、アマルフィ・イエローの“ヘリテージ”トラウザーズ、ともにエドワード セクストン。シャツ、帽子、靴は本人私物。
私たちはいつも、パリの優雅さに魅了されている。長く美しい大通り、統一された建物、広大な庭園の美に尊敬の念を抱いている。素朴な街並みにも、常にエレガントな香りが漂っている。パリよりスタイリッシュな都市はないといえる。
ウィメンズウェアのデザイナーが多くいることで有名なパリは、1980年代には高級紳士服の中心地でもあった。その後、時代は少々変わったが、今でもメンズ・スタイルをリードする都市のひとつだ。
新シリーズ「RAKE TRAVEL」のスタートを飾るにあたり、パリほど相応しい都市はない。そこで最近、メンズウェアのファッショニスタとして注目を集める新星ケヴィス・マンジにパリについて聞いてみた。フランスに20年以上滞在している彼は、さまざまなメンズウェアに精通しているだけでなく、この業界で最も好感の持てる人物のひとりだ。
―ルワンダのキガリで生まれ、幼い頃にパリに移り住みましたね。どのような経緯でフランスの首都に住むことになったのでしょうか?
「単純に家族と合流したのです。しかしそれは大きな環境の変化でした。まず言語。フランス語はまったく話せなかったし、フランス文化に触れたこともありませんでした。母は新しい生活に馴染めるように、そして私たちがどこから来たのかを忘れないようにと、いつも考えてくれていました。今でもとても感謝しています」
―メンズウェアへの情熱は、いつ、どのように芽生えたのでしょうか。また、パリという都市は関係しているでしょうか?
「私は20歳で父親になりました。最初に男の子が生まれたとき、私は一瞬にして思春期から大人になってしまったのです。大きな責任を負ったので、アパートに引っ越し、新しい仕事を見つけなければなりませんでした。すべてを変えなければならなかったのです。着ているものも、少しずつですが大人っぽく変えていきました。特に、子供を保育園に迎えに行くときなどのために……。雑誌を読み込んでいくうち、サルトリアルの世界に興味を持つようになりました。参考にしたのはいつもTHE RAKEです。タバコに火をつける女性、オーダーメイドのスーツを着てサン-ジェルマンを歩く紳士、掲載されているすべてがエレガント。ページをめくるのがいつも楽しみでした」
―長年にわたり、さまざまな本物のアイテムを使ってクリエイティブに表現する方法を示してきました。ご自身のスタイルと、影響を受けた人物を教えてください。
「自分のスタイルはまったく自由です。昨日はライト・フランネルのスリーピース・スーツに、ボルサリーノのハット、タッセルローファーを合わせていました。今日は、ニューヨーク・ジャイアンツのベースボールキャップに、大戦モノのチノパン、グリーンのコーデュロイ製ショートボンバージャケット、そしてコンバースのチャックテイラーを合わせています。最近はヴィンテージの世界に興味があります。完璧なバランスを持った、ハイウエストのパンツや帽子などのアイテムです。まるでニコラス・ブラザーズ(1930年代から活躍した黒人の俳優・ダンサーの兄弟)のようですね」
―あなたはラルフ ローレンで働いていますよね。サン-ジェルマンのフラッグシップストアの貴重なシニアセールスアソシエイトであることはよく知られています。ラルフ ローレンとあなたとの関係について教えてください。
「このブランドとの特別な関係を築いたのには、ふたつの大きな理由があります。お話したように、私はルワンダの首都キガリのニャミランボ地区で生まれました。そこでは市長、県知事、学校長など、社会の要人たちは皆、ラルフ ローレンを着ていました。ラルフ ローレンは常に成功の代名詞だったです。そして今、私はそこにいます。夢が現実になったのです。私にとってラルフ・ローレン本人のスタイルは、永遠のインスピレーションの源です。もうひとつは、私は服を通じてストーリーを語りたいと思っているからです。その点、ラルフ ローレンで仕事をするのは、本当にエキサイティングです。彼はコレクションのたびに、歴史的なディテールをトレースすることに注力しています。例えば今シーズンの、アメリカの黒人大学モアハウスカレッジとスペルマンカレッジとのコラボレーションでは、1930年代から40年代にかけてのアフロ・アメリカンの美学を忠実に再現しています。このコレクションは、私にその時代を考えさせ、歴史がどのように作られたか、アフロ・アメリカンが正義と平等を求めてどうやって戦ってきたかを再発見させてくれます。史実を示し、苦難の証拠を提示してくれます。問題への取り組みには一定の進展が見られますが、結論としては、今後も努力を続ける必要があるということです」
―20年以上前からパリにお住まいで、素敵なご家族にも恵まれていますね。奥様やお子様と過ごす特別な日に行ってみたい場所や、おしゃれな父親におすすめの場所はありますか?
「パリは、時間が止まっているような、歴史を俯瞰できるようなユニークな場所。妻や子供たちと一緒に、オテル・ナショナル・デ・ザール・エ・メティエの屋上で過ごす時間はとても幸せなものです。また、2区のグラン・ブルヴァールホテルは魔法のようで、子供たちは自家製シロップに夢中になっています」