POCKET GUIDE: CALVIN ZANG

世界のファッショニスタに学べ:カルヴィン・ツァン

November 2022

 

カルヴィン・ツァン

1984年北京生まれ。大学卒業後、高級自動車メーカーを中心にクリエイティブサービスを提供するトップエージェンシーへ。下積みから10年でクリエイティブ・ディレクターに。現在はフリーで動画制作を行うコンテンツクリエイターとして活動中。

 

ジャケットはサルトリア ジュン、Tシャツはナポレオネルバのもの。「お気に入りのテーラーであり、友人でもあるサルトリア ジュンのジュン・ビョンハがプレゼントしてくれたジャケットです。ウール×リネンのブレンドであることと、北京の夏の蒸し暑さのなかでも海辺の涼しさを感じさせてくれるブルーが気に入っています。Tシャツは、男性の筋肉質な部分を引き出すフィット感がありながら、小さなラペルや細かいボーダーがかわいく、面白みがあって好きです」。トラウザーズはダルクオーレ、時計はパテック フィリップのノーチラス。「ジョージが譲ってくれたスーツ組下のフレスコパンツです。フォーマル過ぎない洗練されたデザインが気に入っています。この時計は友人から購入しました。腕がとても細い私にぴったりのサイズで、男性的でありながら文学的な雰囲気があります。とても万能な時計だと思います」

 

 

 

 

 カルヴィン・ツァン氏のことを知らなくとも、彼の最近のインスタグラム(@calvinzang)のリール動画を見れば、誰もがこの男に興味を抱くだろう。アップされているのは、彼自身が主役となってアイスを食べたり、ハンバーガーを作ったり、愉快に踊ったりとユニークな動画ばかり。聞くところによると、これらの動画の構成や撮影、編集などは、すべて自分で行っているという。

 

「食べ物や料理、好きな服のスタイル、映画や音楽などを組み合わせて、軽快な気分や感動、そして古きよき時代へのノスタルジーみたいなものを伝えようと試みているところです」

 

 しばらく動画を見ていると、中で身に着けているものから、彼が只者ではないことを察するのではないだろうか。

 

「幼い頃から、格好よくて質のよい服、特にクラシックなメンズウェアを着ることを意識していました。身に着けるものに、よりお金をかけられるようになったのは社会人になってからで、2015年にブリオ ベイジンの創業者ジョージ・ワンと出会ってからですね。ジョージのメンズウェアのスタイルや消費者意識の理解に大きな影響を受け、東京やミラノ、フィレンツェ、ナポリへ行きました。旅する機会が増えるにつれて、自分なりの多様でオープンな着こなしができるようになったと思います」

 

 ファッションに興味を持ち始めた頃について、こんなエピソードも教えてくれた。

 

「たしか6、7歳の頃だったと思います。母が買ってくれたシルク混のエメラルドグリーンのスーツがとても気に入り、それを着て学校の合唱コンクールで指揮をしました。今でもそれは一番の自慢で、人にとって服装がいかに重要かを実感するようになったきっかけでもあります」

 

 好みのスタイルについて聞くと、「イタリアのクラシックなスタイルも好きですが、日本のシティボーイのようなスタイルも好きです。最近では、そのふたつを組み合わせて、わざとらしく見えないノンシャランなスタイルを作るのが好きです」とのこと。そんな北京きってのウェルドレッサーである彼が愛するアイテムを詳しく見ていこう。

 

 

 

外出時には指輪や時計、サングラス を身に着けるというカルヴィン。ゴールドにブラッドストーンを組み合わせた120年前のイギリスのアンティークリングは、アール・ヌーヴォーの流れを汲むデザインの産物だ。

「5年くらい前に東京のソラックザーデで購入しました。私の宝物です。中指につけています。非常に堂々としていて、英国の誇りが感じられます」

 

 

「TESIのパナマハットは、織りが非常に繊細で、とても軽いところが気に入っています。北京の夏は非常に暑く、髪が乱れやすいですが、この帽子のおかげで髪の乱れを心配する必要はありません」

 

 

1枚目の写真でも身につけているベルトは、ブリオ ベイジンで購入したというイル ミーチョのもの。

「イル ミーチョのカジュアルなベルトは、とてもアーティスティックで、カラーバリエーションも豊富です」

 

 

「3年ほど前にブリオ ベイジンで購入したムーンスターのスニーカーは、キャンバス地ではなくレザーです。トラッドなカジュアルスタイルのトラウザーズと合わせることが多いです。汚れてもわざわざ磨いたりせず、生活の刻印として残しています」

 

 

ソラックザーデで購入したというサングラス。

「お気に入りのひとつです。1930年代のもので、オクタゴンオーバルのレンズデザインにラグスタイルのゴールドテンプル。形、素材、色の組み合わせが美しいですよね。日差しを遮るという点ではあまり優れていないかもしれませんが(笑)、顔に注目を集められますし、とてもよくできています」

 

 

1枚目の写真で着けている時計のほかに彼が愛用しているというパテック フィリップのカラトラバ。

「この時計は友人から譲り受けたものですが、証明書から、私の父と同じ年齢の1955年製であることがわかり、私にとってとても意味のある時計となりました。70年近く経った今でもとてもよい状態です」

 

 

インスタグラムに投稿しているリール動画の一部。動画を投稿しようと思ったきっかけについて彼はこう語る。「もともとスキルを持っていたこともありますが、現在のストリーミング時代において、自分自身やコミュニティのメッセージ、感情を表現するための最適な手段と考えたからです。アイデアを整理し、撮影、ポストプロデュース、プレゼンを一から行うのは、私にとって楽しい仕事です」。ぜひ一度覗いてみてほしい。