POCKET GUIDE: Kelly See

世界のファッショニスタに学べ:ケリー・シー

December 2023

単に装いがエレガントなだけでなく、所作や立ち居振る舞い、すべてが優雅で美しいジェントルマン。彼のことを知る皆が“すべてが美しい”と口を揃えるケリー・シー氏のエレガンスとは?

 

 

text yuko fujita

photography don ching

 

 

Kelly See/ケリー・シー

1971年、マニラ生まれ。ロサンゼルスの大学を卒業後、ファミリービジネスである貿易業と製造業の世界に入る。愛するメンズのクラシックスタイルを自国に広めていきたいという強い思いをもって、2013年、マニラにメンズクロージングショップ「シグネット」をオープン。

装いも往年の映画の中の俳優のようにエレガントだ。フォックスブラザーズのフランネルで仕立てたリヴェラーノ&リヴェラーノの3ピーススーツ、アスコット チャンのシャツ、タイ ユア タイ フローレンスのタイ、1906年に手織りされたシモノ ゴダールのリネンポケットスクエア“Fil de boche”、ロック&コーの6パネルハット。

 

 

 

 ケリー・シー氏が共同オーナーを務めるフィリピンはマニラのメンズショップ「シグネット」でトランクショーを開催しているスピーゴラの鈴木幸次氏が、かつて「ケリーほどクールでエレガントな紳士はいない」と話していたのが強く印象に残っていた。同じことをナポリのサルヴァトーレ・アンブロージ氏やダルクオーレのダミアーノ・アンヌツィアート氏からも聞いていた。シー氏とは何度か会ったことがあったので彼のエレガンスについては理解していたつもりだが、2020年2月、幸運なことに彼とマニラで5日間一緒に過ごす機会に恵まれ、皆が私に言っていたことがよくわかった。

 

 話し方、相手への気配り、礼儀作法、美しい所作や立ち居振る舞い、完璧なエスコート、食事をする姿まですべてが美しく、まるでスクリーンの中の往年の名俳優を見ているかのように優雅であった。

 

 ビスポークのスーツやジャケットを大変趣味のいい生地で仕立てたシー氏の装いは常にクラシックでエレガントだ。スタッフからも大変厚い信頼を得ており、カリスマ性は群を抜いている。身に着けているアクセサリーにもストーリーがあり、控えめでありながらときに遊び心を見せていたりと、そのあたりのセンスもすこぶるいい。

 

 シー氏が「シグネット」をオープンしたのは2013年。10年が経った今、マニラにおけるメンズのクラシックウェアのシーンは、シー氏の尽力もあって大きなマーケットへと成長を遂げている。

 

 

高校の卒業祝いに父から贈られたロレックスのデイトジャスト。大学生活はもちろん、バスケットボールの試合など本来なら時計を身に着けない場でも着けてきた結果、メタル・ブレスレットがとても柔らかくしなやかになったという。

 

 

モンブランのマイスターシュテュックは25年以上愛用しており、思い入れもたっぷり。「この間、何度も失くしては取り戻しました」。

 

 

1940年代後半に洗礼祝いとして父に贈られた14KYGのバックル。ベルト自体も特別なもので、厳選されたクロコダイルを用い、フィレンツェに在住の鞄職人、Saicの村田博行氏に作ってもらったものだ。

 

 

ブレスレットはフランスの老舗メゾンのタイムレスなデザインが好きで、カルティエのサントス(上3点)とエルメスのシェーヌダンクル(下2点)を15年間ローテーションしながら愛用している。

 

 

1950年代に作られたティファニーの14KYGのピルボックスセットは、小さいながらも複雑な細工に惚れ惚れしている。ズボンのコインポケットにすっぽり収まる便利なサイズだ。

 

 

老眼鏡とサングラスは、パリのダニエル・ベルナールのべっ甲製。タイマイという海亀の甲羅の特定の部分からしか採れない飴色の白甲(上)は、しっとりとした独特の艶を備えた最高級品だ。

 

 

シグネットリング(下)はバーリントンアーケード最古のジュエラー、ハンコックス社製で、WG×オニキスと、18KYG。スカルリング(上)はフィレンツェのランファーニ製。この4つをよくミックスさせる。

 

 

折り畳むと小指ほどの長さになる、バックのミニチュア・ユーティリティ・ナイフ。素朴なホーンのはめ込みとブレードのダマスカス模様が気に入って、ズボンのポケットに忍ばせてもいる。