POCKET GUIDE: Salvatore Parisi

【世界のファッショニスタに学べ】サルヴァトーレ・パリーシ:エレガンスという世界に生きる侯爵

May 2025

イタリアきってのキューバン葉巻のコレクターであり、深淵なサルトリアの世界を愛するサルヴァトーレ・パリーシ侯爵のローマの邸宅を訪ねた。

 

 

text and photography yuko fujita

 

 

Salvatore Parisi/サルヴァトーレ・パリーシ

1955年、ナポリ生まれ。17歳のときにローマに移り住む。臨床心理学の権威。キューバンシガーをこよなく愛す、イタリアきっての葉巻コレクター。超エクスクルーシブな葉巻クラブ「UBI MAIOR」の総帥。イタリアの政財界とも非常に強いパイプをもっている。

 

ローマ郊外の自宅の庭にて。ジャケットはナポリのキアイア通りのミンモ・ピロッツィ、シャツはサバティーニ、タイはE.マリネッラ、靴はローマのマルコ・チェッキ。シャツの左カフには必ずループがついており、そこに時計ベルトを通してカフの上から時計をするのが氏のスタイルだ。

 

 

 

 葉巻を愛する者なら、イタリアでサルヴァトーレ・パリーシ侯爵の名を知らぬ者はいないだろう。超エクスクルーシブなメンバーで構成される葉巻クラブ“Ubi Maior(ウビ・マイオール)”をはじめ、数々の紳士クラブを創設してきた。キューバに通うのが人生の楽しみだと語る侯爵は、ローマ郊外の邸宅に6万本ものキューバン葉巻のコレクションを所有しており、自身がセレクトしたブレンドによる貴重なオリジナル葉巻も多数。2011年に刊行されたキューバン葉巻に関する侯爵の著書『IL SIGARO AVANA』は、イタリアの葉巻愛好家のバイブルとして、今なお崇められている。

 

 ナポリの裕福な家庭に生まれ、常に美しい世界に囲まれて育ってきた。自身の絶対的なスタイルをもつ侯爵の突き抜けたエレガンスは、日々の生活の中で自ずと築かれていったものだ。この日は違ったが、4ポケットジャケットの右胸ポケットに白チーフを挿すのは氏の象徴的なスタイルであり、シャツの左カフには時計の革ベルトを通すループが付いている。

 

 そんなパリーシ侯爵は、最近自身のブランド“Vivere Elegante(ヴィーヴェレ エレガンテ)”を立ち上げた。イタリアだけでなくモンテカルロにも支部を作り、自身のアイデアを注入してこれまでさまざまな職人にオーダーしてきた革製品のアイテムを製品化し、世に出していくという。上の写真のスモールブリーフケースをはじめ、キャンバスとブライドルレザーで作られた旅行用ネクタイケースや、サングラスに付けるチンギアーレのサンバイザーなど、侯爵ならではの他にはないアイテムが揃う。

 

 

 

イタリアの紳士は英国のスタイルに憧れを抱いているというが、パリーシ侯爵も同様。タイは圧倒的にストライプを好む。ただ、自身の紳士クラブや葉巻クラブでさまざまなドレスコードのもとで装いを楽しむため、アメリカ式のストライプもあり。

 

 

これまでローマのバッティストーニやミラノのシニスカルキ、ジェノヴァのフィノッロなどさまざまな超一流カミチェリアでシャツを仕立ててきたパリーシ侯爵が辿り着いたカミチェリアは7~8年前までローマのフラミニア通りにあった伝説のサバティーニ。引退したステッラ・サバティーニ氏だが、今もパリーシ侯爵のシャツだけは注文を受け、仕立て続けている。

 

 

パリーシ侯爵が選んだ葉のブレンドで巻かれたキューバン葉巻。お気に入りのトルセドールに巻いてもらい、リングにもすべてパリーシ侯爵の名が入ったスペシャルなものだ。侯爵によって“Huevo No.1”と名づけられた右の1本が特にお気に入り。

 

 

普段の鞄には、スモールブリーフケースを愛用している。こちらは氏が昨年立ち上げたブランド“Vivere Elegante”のもの。葉巻、タバコ、いくつものサングラスなどを入れて持ち歩いている。お気に入りの革はチンギアーレだ。

 

 

左のノルウィージャン製法のエプロンダービーはボローニャのペロン&ペロンのもの。1990年代の始めにス ミズーラしたもので、完全な手縫いによるもの。右のフランチェーゼは2000年代にローマのマルコ・チェッキでオーダー。底付けはマシンによるものだが、質実剛健で気に入っている。ローマの石畳の上を歩くには、厚みのあるダブルソールが必然で、ビスポークシューズであろうとどっしりとした靴を好む。ここにも侯爵のスタイルが表れている。

 

 

ベルトは靴をオーダーしたときに、靴と同じ革で一緒にオーダーすることが多く、ペロン&ペロンとマルコ・チェッキのモノが多い。その他、コードバンのベルトはオールデン、クロコダイルのベルトはローマのサルヴァトーレ・ニコーシアのものだ。コレクションはこれでもごく一部。

 

 

6万本を超えるといわれているキューバン葉巻をコレクションしているパリーシ侯爵のシガールーム。奥にウォークインの保管庫がある。ちなみに侯爵が自宅で催す葉巻のフェスタには、イタリアの政財界をはじめ、名だたる著名人らが集う。