OXFORDS: A SURE FOOTING
確かな一足、オックスフォード
February 2022
ブラックタイの晩餐会に欠かせない足元として知られるオックスフォード・シューズは、あらゆる装いに対応できる万能選手だ。
by FREDDIE ANDERSON
1961年に行われたインドへの王室ツアー。首相ネルー(左)、国務大臣クリシュナ・メノン(右)と一緒に写真に収まるエリザベス2世とエディンバラ公フィリップ王配。
最も欠かすことのできない靴のスタイルは何だろうか。これは難しい問いだ。さまざまな素晴らしいスタイルがあるが、それぞれに価値があり、時代を超えて愛されている。しかし、都市部に住んでいる私がただひとつのモデルを選ぶとしたら、オックスフォードだろう。エレガントかつ控えめで、まさにスタンダートな靴だ。ヴァンプの下にアイレットタブが付いているクローズドヴァンプが特徴で、スマートでエレガントなシルエットを実現している。クリーンでクラシックなこのシューズは、レザーの輝きを引き立てる素晴らしいキャンバスであり、ソフトタッチな構造を持っている。
モンクストラップやダービーシューズよりも格式が高いとされる伝統的な靴だが、レザーの素材も重要な要素である。例えば、シナモンスエードの靴は、週末のセパレートスタイルにも快適に合わせることができる。これは光沢のあるモンクストラップにはできない芸当だ。
多くの伝統的なアイテムと同様、オックスフォードの起源に明確な答えはなく、偽りの説も少なくない。とはいえ、17世紀から18世紀にかけてフランスとイギリスの宮廷で履かれていたヒール付きのブーツを起源とすることは明らかだ。1830年代の初頭には、オックスフォード大学の学生たちが、オクソニアン・シューズと呼ばれる高さの低いハーフブーツのバリエーションを履いていたという報告がある。履き心地の良さが評価されたオクソニアンがいつどこで作られたのか明確な記録は残っていないが、時を経て、クローズド・ヴァンプ・レーシング・システムが加えられ、ヒールが低くなり、現在の形に縮小された。
1969年2月25日、ロンドンのバッキンガム宮殿でニクソン大統領と会談する英国王室メンバー(左からアン王女、チャールズ皇太子、エディンバラ公フィリップ王配、エリザベス2世)。
ロンドンのマリーネ・ディートリッヒとダグラス・フェアバンクス・ジュニア(1937年)。
ブラウンのオックスフォードは、ネイビー、フランネルグレイ、チャコールと相性がよく、オフィスでも週末でも使えるベーシックなアイテムといえる。他のブラウンシューズと同様、購入する際には慎重に検討する必要がある。組み合わせるアイテムとの色合わせには注意して欲しい。スタイルの達人は、テーラリングには控えめな色合いのブラウンがいいと言うが、それは正しいかもしれない。
レザー・オックスフォードは、テーラード・トラウザーズのためだけの靴だ。そのすっきりとしたフォルムは、テーラードに合わせると映えるのだが、デニムやチノパンとは相性が悪い。一方、同じオックスフォードでもブラウンスエード製なら、チノのようなリラックスしたトラウザーズに合わせてもいい。
ブラックのオックスフォードは、伝統的なスーツと完璧に調和し、ブラックタイの着こなしにも適応する。決して人目を引くような靴ではないが、その控えめさが最大の強みであり、多くのことができる靴なのだ。
上質なオックスフォード・シューズにぜひ投資してほしい。ハリウッド流のワイドパンツにも、ナポリ流のテーパードしたウール・トラウザーズにも、同じように颯爽と合わせることができる稀有なシューズである。基本中の基本だが、本当に高品質なオックスフォードは、どこにでもあるとはいえない。