MICHELANGELO AND THE YEARNING FOR TRAGEDY
愛の不毛を描き続けた巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニ
August 2020
現在に継承される偉大な影響力
彼の映画はさまざまな反響を呼んでいたが、アントニオーニの耳に届くには遅すぎた。「ハリウッドは、実在しないものについて実在しない人々に語りかける、非実在的な場所である」と彼は述べている。これについては、プラトンのイデア論を彷彿させる彼の映画そのもののようだと言っておく必要がある。
だが、そんなことはどうでもよい。少なからずハリウッドの住人やクリエイティブなコミュニティの中で、彼の才能は認められていた。アントニオーニ特有の不安感を掻き立てる作風に影響を受けたと思われる者は数多くいる。ヴィム・ヴェンダース、アンドレイ・タルコフスキー、デヴィッド・リンチ、ブリュノ・デュモン、ヌリ・ビルゲ・ジェイランといった映画監督、アラン・ロブ=グリエやナタリー・サロートといったヌーヴォー・ロマンの作家たち、さらにはカエターノ・ヴェローゾやビョークといったミュージシャンまでもが彼から影響を受けた。
カンヌ国際映画祭会場に到着したアントニオーニとモニカ・ヴィッティ。
アントニオーニは90年代まで断続的に作品を発表したのみで、2007年に94歳で亡くなってしまったが、それでも彼の才能は高く評価された。1995年にはアカデミー名誉賞を受賞しただけでなく、映画評論家の中にも熱狂的ファンがいるほどだ。評論家デヴィッド・トムソンは自身の著書の中で、「アントニオーニの傑作は不毛の世紀において、砂丘のように形を変えつつ成長し続けるのではないか」と書いている。
多くの映画作品と同じように、アントニオーニの作品もまた最後まで難解だった。あるインタビュアーが「もし世界に映画がなかったら、何を作っていたと思いますか?」と彼に尋ねると、彼はギリシャの哲学者のように眉を吊り上げ、こう言った。「映画です」。
『情事』の製作発表記者会見にて(1960年、パリ)。