MIAMI VICE, STEPPING INTO THE HEAT IN STYLE

『マイアミ・バイス』のスタイリッシュな世界

September 2022

ネオンが歩道を照らし、ディスコやバーではジョージ・マイケルの歌が流れている……。1980年代の大ヒットドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』をご存知だろうか?マジックシティ、マイアミを舞台に、フェラーリを駆るふたりの刑事がスタイリッシュに事件を解決していく。その着こなしは、メンズ・ファッションの流れを変えたのだ。

 

 

by chris cotonou

 

 

 

 

 マジックシティ、マイアミへようこそ。1980年代には、ネオンが歩道を照らし、ジョージ・マイケルの甘い歌声がディスコやバー、ラジオから流れていた。TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984〜89年)で描かれたふたりの潜入捜査官の話は、今となっては少し古臭くなってしまったかもしれない。それでも作品としては素晴らしく、2006年には映画『マイアミ・バイス』としてリメイクされ、その世界は生き続けている。スモーキーなパステルカラーのスタイルも、再び注目を集めている。

 

 ルーズフィットのジャケット、明るい色のローファー、シャツ代わりのTシャツ……。これが彼らのスタイルだった。ブランドはアルマーニやヴェルサーチだ。80年代の典型的なコーディネイトだが、実はこのドラマこそがこの時代のスタイル革命に一役買ったのである。2006年にファッション記者ガイ・トレベイは、このドラマについて『ニューヨーク・タイムズ』紙にこう書いた。

 

「マイアミ・バイス以前は、成人男性の間では、ジャケットの下にTシャツを着たり、ソックスなしで靴を履いたりする習慣はなかった。パステルカラーのトラウザーズはキャディーのためのものだった」

 

 

 

 

 当時はレーガン大統領の時代であったことを忘れてはならない。シャープで洗練されたビジネススーツが、事実上のスタンダード・ルックだったのだ。だからこそ、ピンクのテーラリングと白いスリッポンを身につけた正義感あふれるハンサムな刑事たちが、アメリカの男性に「解放感」を与えたのだ。

 

 特に、ジャケットにTシャツを合わせるスタイルは現代まで生き残り、猛暑の中でますます魅力的なものとなっている。それはもはや80年代的なものではなく、ジャケットの着こなしにおける、ひとつのチョイスとなった。

 

 ドン・ジョンソン演じるソニー・クロケット刑事は、上質なリネンやコットン製のゆったりとしたジャケットに、入念にカットされたTシャツを合わせている。ルーズな着こなしだが、カジュアルになりすぎてはいない。Tシャツはロゴやバンドネームのない無地を選んで、ジャケットの明るい色調を引き立たせることが重要だ。

 

 

 

 

 マイアミ・バイスのスタイルは時代を超越しており、強い日差しの季節がやってくる度に、選択肢のひとつとなり続けるだろう。楽しく、明るく、クールで、クリーンで、暑い日には首回りがリラックスできるのがありがたい。

 

 上質なジャケットを選んでプレーンなTシャツを合わせ、スマートなローファーとパステルトーンのトラウザーズをコーディネイトすること。それが肝要なのだ。