Mercedes-Benz EQB

ちょうどいいサイズと
優れた使い勝手のEV
メルセデス・ベンツEQB

September 2022

text KENTARO MATSUO

 

 

 

 

 メルセデス・ベンツの電気自動車(EV)攻勢が止まらない。すでに販売されているミドルクラスのEQC、コンパクトクラスのEQAに加え、2022年7月14日には、コンパクト・ユーティリティ・ヴィークルであるEQBを発売。2022年秋以降には、アッパーミドルクラスのEQE、ハイエンドクラスEQSの導入も控えている。日本国内における2021年度のEQシリーズ販売数は、昨対比で4倍を記録したという。

 

 この度リリースされたEQBは、日本市場で大人気となっているGLBをEV化したものである。人気の理由は、使いやすいサイズだ。EQBの全長4,685×全幅1,835×全高1,705mmという大きさは、都市部においての取り回しに優れている。昇降式駐車場のパレット幅は1,850mm以下が標準なので、幅の広い外国車を敬遠していた方々には朗報である。

 

 EQBはコンパクトでありながら、2,830mmと長いホイールベースを活かし、3列シート7人乗りを実現している。これまた子供の送迎、帰省時など、日本ならではの使い方に合っている。3列目のシートは折り畳み、広々としたカーゴスペースとして使うことも可能だ。この場合、2列めのシートは大きく後ろに下げることができ、後席のレッグスペースの確保に役立つ。

 

 

 

 

 EQBのエクステリアはGLBと同じく、内部空間を最大限とするためのスクエアなものだが、随所にEV らしい未来的な意匠が散りばめられている。フロントグリルはブラックアウトされ、その上に大きなスリーポインテッド・スターが置かれている。もちろんエンジンはないので、エアインテーク(空気取り込み用の穴)もない。リアはウィンカーやストップランプがそのまま一文字に伸びて、ひとつに繋がったようなデザインである。これらはEQシリーズ共通のアイデンティティとなっている。

 

 

 

 

 未来を先取りするEQシリーズの一翼に担うだけあって、ハイテク装備も満載だ。メルセデス自慢の音声認識システム「MBUX」はさらに進化しており、「充電ステーションを探して」などEVならではの会話にも対応している。便利なのは「プリエントリークライメートコントロール」で、これはMercedes meアプリまたはMBUXでエアコンを設定し、出発前の車内温度を調整できるというもの。例えば、炎天下で温度の上がったクルマに乗り込む場合などに重宝しそうだ。

 

 自動車が通信することにより利便性を向上させる「Mercedes me connect」を使えば、スマホを使ってリモートで走行距離やバッテリー残量のチェックが可能だ。ドアロックやウィンドウ/サンルーフの開け閉めを行ったり、駐車したクルマの位置を地図アプリ上に表示することもできる。

 

 安全のためのインテリジェントドライブ機能も万全で、進化したカメラとレーダーセンサーにより周囲の交通状況を把握し、アクセル、ブレーキ、ステアリングを効果的にアシストする。この分野ではメルセデス・ベンツは、間違いなく世界の最先端を行っている。

 

 

 

 

 EVと聞いて心配になるのは航続距離の問題だが、EQBは最大520km(EQB250)を実現している。数値上では、東京から大阪まで無充電で行くことができる。また100kWまでの急速充電(CHAdeMO規格)に対応しているので、場合にもよるが、30分弱の充電で大きく走行距離を伸ばすことが可能だ。購入後1年間は付属する「Mercedes me Charge」カードを使えば、月会費も都度料金も無料で急速充電器を使うことができる(高出力急速充電スポットの不足という問題はあるが)。

 

 メルセデス・ベンツEQBは、多彩なスペース・ユーティリティと最新の装備をコンパクトな車体に詰め込んだEVである。クルマのベースは都市部だが、郊外でのレジャーを楽しんだり、帰省などにも使うという人は多そうだ。もしそういった方々で「次はEVを選んでみようか」と考えているなら、これが本命と言ってよい。