MAZZI FINE ART

時を越えるアート、変容するかたち。

November 2025

芸術とは、創造ではなく“想起”である ── 新鋭イタリア人アーティスト、フランチェスコ・マッツィ氏が、新作とともに人間の内に眠る記憶と感性を呼び覚ます、“変容”のためのマニフェストを著した。

 

 

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永遠性と繁栄、そして平和の象徴であるオリーブの木をゴールドで創造。キャンバスにMAZZI FINE ART オリジナル油彩、純金、色銀。オリジナルフレームは3D FRAME PUSHUP、純金箔仕上げ。《オリーブの木 聖なる根からの光 ―》101×101cm(フレーム含む) 価格は要問い合わせ Mazzi Fine Art

 

 

 

 かつて彼は、料理の世界に生きていた。世界の名だたるファインダイニングで腕を磨き、アルマーニ リストランテのエグゼクティブシェフも務めた。だがその探求の手は味覚の完成にとどまらず、“絵を描く料理人”から“命を吹き込む芸術家”へと飛躍した。火を扱い、素材に触れ、時間を読む。そのひとつひとつが、人間の根源的な創造衝動を呼び覚ます儀式のように感じられたという。そして、料理と芸術のあいだに横たわる境界線を大胆に飛び越え、“生命の記憶”を描くアーティストとしての道を歩み始めた──。

 

「MAZZI FINE ART」。マッツィ・フランチェスコ氏が手がけるアートブランドである。純金など希少なマテリアルを油彩と組み合わせ、独自の技法によって新しい表現を生み出してきたことは、既に小誌でも紹介してきた通りだ。彼にとって素材は“生きた記憶”であり、それに触れることは過去の叡智と対話する行為に等しい。作品は「完成させる」のではなく、「呼び覚ます」もの。“変容し続ける美”の過程こそが、彼の創作の本質だ。

 

 そんな思想の核を記したのが、初の著書『OLTRE IL TEMPO ―時を越えて―』。彼は本書を「読むための書ではなく、通過するための書」と語る。頁をめくる行為は、知識の獲得ではなく、内なる変容を促す通過儀礼、彼曰く“閾(しきい)”を越える体験であるという。マッツィ氏の紡ぐ言葉は宝石のように美しく詩的で、しばしば難解だ。だがそこには、芸術が“発明”ではなく“想起”であるという信念が貫かれていることがわかる。

 

 

OLTRE IL TEMPO―時を越えて―

フランチェスコ・マッツィ氏による 初の書き下ろしとなる「マニフェスト」。既成概念に挑み続け、芸術を「生きる術」として歩んできた彼が、7つの章を祈りの彫刻のように刻む。

 

 

 

 MAZZI FINE ARTは、2020年の立ち上げから今日まで、国内外で着実に評価を高めてきた。芸術を“知識の産物”としてではなく、沈黙と素材の対話から生まれる“精神の現象”、すなわち忘れられた感性を呼び戻す行為として位置づけることで、独自の地位を築いた。例えば2023年に大阪・犬鳴山七宝瀧寺とコラボレーションし開催された特別展。霊峰の懐に抱かれた古刹に純金の作品を重ね合わせ、滝や祭壇の炎と祈りが融け合う空間を創出した。それは宗教や文化を超え、芸術が“祈りの共通語”たり得ることを示した象徴的な瞬間だった。さらに翌年には、犬鳴山を抱く泉佐野市と、マッツィ氏の故郷イタリアのラ スペツィア市が、友好交流都市として提携を締結。犬鳴山七宝瀧寺での縁が架け橋となり、両市を結ぶ交流へと発展した。MAZZI FINE ARTの作品は両市に寄贈され、永久に展示されることとなった。芸術が土地と人を結び、時を越えて共鳴する──まさに、『OLTRE IL TEMPO―時を越えて―』が説く“時を越える芸術”の実践でもある。

 

 新しい4作品には、木、石、雪、獣など、いずれも太古から受け継がれる自然のモチーフが取り入れられている。彼の手により、それらは“生命の記憶”を宿した祈りのかたちへと変わる。観る者がその前に立つとき、作品はひとつの姿を離れ、心の内で再び息づく。「作品は観る者によって完成する」という彼の信念が、そこに明確に表れている。

 

 

力を宿すパワーオブジェクトである「石」と「木」を神秘的に表現。《ストーンツリー》51×51cm 価格は要問い合わせ Mazzi Fine Art

 

 

静寂に包まれた氷の大地を、威厳と優雅さを纏い歩むユキヒョウ。《雪の守護者》91×71cm(フレーム含む) 価格は要問い合わせ Mazzi Fine Art

 

 

原始的な本能と内なる高貴さを同時に宿す豹を鋭く描いた。《黄金の豹》81×91cm(フレーム含む) 価格は要問い合わせ Mazzi Fine Art

 

 

 

 MAZZI FINE ARTは、芸術を「未来を築くための行為」と定義する。それは社会の構造や価値観を変革するための静かな挑戦でもある。マッツィ氏の作品が示すのは、効率や流行とは無縁の、時間と素材の声に耳を傾ける誠実な生き方だ。沈黙を恐れず、近道を選ばず、自らのビジョンを守り抜く者たちへの讃歌──『OLTRE IL TEMPO ―時を越えて―』もまた、そのための祈りの書といえる。

 

 

11月15日~11月24日まで、社会福祉法人 犬鳴山インテフィール施設内の101 WHITE SPACE にて特別展が開催される。

 

 

 

インテフィールINTEFEEL

www.intefeel.jp/

 

 

 

MAZZI FINE ARTの新ブランドブティックがオープン

 

 12月中旬、関西国際空港に程近いスターゲイトホテル関西エアポート2Fに、MAZZI FINE ARTのブティックが誕生。単なるアート作品が展示されたアートギャラリーではなく、ラグジュアリーブランドとしての哲学と審美眼を体験できる空間となっている。

 

 

Francesco Mazzi

フランチェスコ・マッツィ

1977年、イタリア、ラ・スペツィア生まれ。2020年、妻の三枝真綺氏とともに、自身のアート作品を扱い新しいビジネスモデルを展開するMAZZI株式会社を設立、ファインアートブランド「MAZZI FINE ART」を展開。イタリア・トスカーナと大阪にアトリエを構え、日本とイタリアを行き来しながら制作活動・展覧会を行っている。