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ブライトリング“プレミエ”― すべてが輝いていた時代

November 2023

デビューから80年、ブライトリングのプレミエ・コレクションは、何もかもが輝いていた時代を、もう一度思い起こさせてくれる。

 

 

text tom chamberlin

 

 

 

左から:プレミエ B01 クロノグラフ 42 ステンレススティール・ブレスレット付き/プレミエ B01 クロノグラフ 42 レザー・ストラップ付き/プレミエ B01 クロノグラフ 42 レザー・ストラップ付き

 

 

 

 今日、新しくラグジュアリー・ブランドを立ち上げることはとても難しい。なぜなら、ブランドにとって最も重要なのは、ブランドの持つ歴史だからだ。コミュニケーションのプロたちは、そう口を揃えて言う。優れたブランドは、キャンペーンやプレスリリース、デザインの中に、過去の遺産を取り入れる。あるブランドはアーカイブからスケッチを発見し、別のブランドはミリタリー、スポーツ、アドベンチャーとのつながりを掘り起こす。製品はそれを反映し、顧客はそういったストーリーに夢を見る。

 

 世界的に有名な時計コレクターであり、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)の審査員であり、そしてTHE RAKEの“サルトリアル・コンシェルジュ”であるシャリー・ラーマンは言う。

 

「私が時計を集める理由は三つあります。そのうちのひとつは、時計ブランドの血統と歴史です。その時計が語るストーリーはとても重要なのです」

 

 こういった点で、ブライトリングの新しいプレミエ・コレクションはどのような存在なのだろうか? 80年前に戻って、その歴史的意義を探ってみよう。シャリーは言う。

 

「ブライトリングは豊かな歴史を持つブランドです。プレミエ・ラインは、そのヒストリーを上手く活用して生み出されたモデルなのです。かつてブライトリングは“プロフェッショナルのための計器”を製造するということにこだわっていました。それがアビエーター・ウォッチのファンを虜にしてきた理由です」

 

 

Georges Kern/ジョージ・カーン

ブライトリングCEO。1965年、ドイツ生まれ。ザンクトガレン大学を卒業後、クラフトフーズスイス、タグ・ホイヤーなどを経て、リシュモン グループに入社。2002年にIWCのCEO、17年には時計製造部門、マーケティング部門、デジタル部門の責任者となる。2017年より現職。

 

 

 

 ここで第二次世界大戦を振り返ってみたい。1943年までには、連合国側はバトル・オブ・ブリテンに勝利し、北アフリカ作戦が終結し、大西洋の戦いもほぼ終わろうとしていた。注目はヨーロッパ本土に集まっていた。

 

 戦争の効果のひとつは、技術がものすごいスピードで進歩するということだ。第二次世界大戦においては、ナビゲーション・システムからスピットファイアに至るまで、航空業界は最も技術革新が進んだ分野だった。

 

 ここにウィリー・ブライトリングが登場する。彼は1934年には、初の2プッシャー・クロノグラフを発明し、1940年には、ブライトリング・クロノマットの特許を取得している。彼が発明した航空機用クロノグラフは、その後複数の航空会社で採用された。1943年までには、すでに航空機用計器や工具時計のメーカーとして高い評価を得ていた。

 

 その時点で、彼はもうすぐ戦争が終わり、また平穏な世の中が戻ってくると確信していた。そして、新たな時計シリーズの製作に着手し、最初のプレミエ・コレクションが誕生したのである。

 

 それから80年後、プレミエ・コレクションは再びリリースされた。そのデザインは1940年代へのオマージュではあるが、それ以上にブライトリングの時計作りへの情熱と、いつか再びよい日が来ると信じる心を表している。プレミエは、ブライトリングが得意とする“実用時計”とは趣を異にする。この時計はアクティブな男が、エレガントな時を過ごすときに着用するものだ。

 

 このコレクションのフルネームは“プレミエ B01”である。ブライトリング渾身の自社製ムーブメントCal.01を搭載しているからだ。ブランドの伝統は神聖なものだが、技術的な進歩がなければ、市場にそっぽを向かれてしまう。ブライトリングは、デザイン、歴史、そして技術と、すべての面を追求し続けている。

 

 

プレミエ B01 クロノグラフ 42 レザー・ストラップ付き/1940年代初頭、ウィリー・ブライトリングはすでに戦後を予期。そこで、実用的でありながら目を見張るエレガントさを持つクロノグラフをデザインし始めた。それがプレミエの始まりであった。現代のプレミエには、当時の特徴的なディテール(スムーズな固定ベゼル、ツインレジスターダイヤル、流線型の角型プッシャー、アラビア数字のインデックスなど)がそのまま残されている。ダイヤルのカラーやケース素材のバリエーションも豊富。クラシックなアリゲーターレザーストラップ、または洗練された7連メタルブレスレットのいずれかを選ぶことができる。

 

 

 

 2017年、投資グループのCVCは、ブライトリングの株式80%を買収し、ジョージ・カーンがCEOとなった。2022年末には、その企業価値は数倍となったと評価された。カーンは、ブライトリングに新しくエキサイティングな息吹をもたらしたのだ。彼はかつてIWCでも同じことを行った。ハリウッドやヒストリーを活用して、ブランドを刷新し、復活へと導いた。

 

 カーンはTHE RAKEにこう語る。

 

「今日のプレミエも同じ哲学を踏襲し、ブライトリングの卓越した時計製造のノウハウと、モダンレトロなスタイルを紹介しています。このコレクションは、繊細なディテール、贅沢な素材、そして挑戦的な複雑機構を持っています。プレミエという名前は、ブライトリングの揺るぎない品質へのこだわりを表しています。ウィリー・ブライトリングがこのコレクションをプレミエと呼んだのは、ブライトリングが初めてスタイルの世界に踏み出したからであり、同時に最高級ラインであることを示すためでした。彼はこれらの時計に、その時点で入手可能な最高のデザイン、素材、ムーブメントを搭載することを望んだのです」

 

 このコレクションには六つの新モデルがあり、五つはステンレススティール製、ひとつはゴールド製だ。文字盤の色はブラック、ブルー、カッパー、グリーン、クリームと多彩である。各色ともトーン・オン・トーンのクロノグラフを搭載。アリゲーター・ストラップと7列のステンレス・ブレスレットのオプションがある。

 

 それぞれが異なる個性を発揮している。プレミエを選ぶ人は、自分のコレクションに欠けているもの、あるいは自分の服装にぴったりとハマるものを見つけることができる。

 

 グリーンはダークグリーンのベルベットのスモーキングジャケットに、ブルーはネイビーのスーツに、カッパーはほとんど何にでも似合うだろう。自社製ムーブメントはサファイア・ケースバックを通して見ることができる。

 

 ブライトリングのフラッグシップモデルは、往年のアビエーション・ファンタジーに浸ることができるものだ。飛行技術が新たな高みに達し、大空が征服され、新たな土地が発見された時代を思い起こさせる。

 

 ブライトリングは、エレガントで洗練された腕時計の世界を征服しようとしている。それは今や、彼らの手の届くところにある。ブライトリングの翼は、新しい目標に向かって風を切っているのだ。

 

 

 

プレミエ B01 クロノグラフ 42 ゴールド・ブレスレット付き/新しくなったプレミエは、ウィリー・ブライトリングの技術に対するこだわりをそのまま形にした時計である。自社開発されたCOSC認定のキャリバー ブライトリング01を搭載。最高の精度、信頼性、機能性を目指して設計された優れた自動巻きムーブメントが採用されている。10気圧防水、パワーリザーブ70時間。プレミエ・シリーズには、この他にも直径40mmのモデル、トゥールビヨンやフルカレンダー、スプリット・セコンドを搭載したモデルがある。