ICONIC SPEED SIX TO BE BORN AGAIN

ベントレー、往年の名車
スピードシックスを現代に蘇らせる

July 2022

 

 

 ベントレーは去る6月、英国オックスフォードシャーで行われたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて、往年の名車スピードシックスのコンティニュエーション・シリーズの製作を発表した。手掛けるのはベントレーのコーチビルド部門マリナーである。

 

「コンティニュエーション」とは、昔のクルマを現代の技術で再製造すること。英国ではちょっとしたブームになっていて、今までにジャガーEタイプやアストン マーティン DB5、ベントレー ブロワーなどがメーカー自身の手で現代に蘇っている(ブロワーは戦前のクルマとしては唯一再製造されたモデルで、リリースされた12台はあっという間に完売となった)。

 

 

 

 

 今回製造されるスピードシックスは、戦前のベントレーの名車である。「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれた誇り高き貴族のドライバー、ウルフ・バーナート、ヘンリー・ティム・バーキン卿、グレン・キッドソンらの運転で、1929年と1930年のル・マンで連続優勝している。スピードシックスは、スタートからゴールまでリードし、他の3台のベントレーがそれに続いた。バーキン卿は、それまでのベストラップを46秒縮める7分21秒の新記録を樹立した。このような1メーカーによる圧倒的な強さは、その後30年近くの間ル・マンで見ることはできなかった。

 

 ベントレーの会長兼CEOであるエイドリアン・ホールマークは次のようにコメントしている。

 

「スピードシックスは、103年の当社の歴史の中で最も重要なクルマのひとつであり、12台のコンティニュエーションシリーズは、エンジニアリングの品質と細部への執拗なまでのこだわりを持って製作されたW.O.ベントレーのオリジナルと同じ価値を体現します。幸運なオーナーは、自分の車で世界中をレースし、オリジナルのベントレーボーイズの活躍を追体験することができるのです」

 

 

 

 

 クルマを製作するにあたってマリナーチームはまず、オリジナルの設計図とオリジナル車を詳細に分析し、完全な3D CADモデルを作成した。この過程で参考にされたのが「オールドナンバー3」と呼ばれるモデルだ。ベントレーが1930年のル・マンにエントリーした3台のスピードシックスのうちの3台目である。困難なレースにもかかわらず無事完走し、以来、完璧な状態で保存されてきた。現在も公道走行が可能でレースにも参加しているという。

 

 新しく作られるクルマは、物理的に同一であるだけではない。多くの場合1920年代に使用されたのと同じ技術で作られた再現パーツが使われている。6.5リッター直6エンジンは200bhpを発生し、最高速度は200km/hに達する。

 

 価格は150万ポンド(約2億5千万円)だが、製作される12台はすべて売約済だという。英国の英雄ともいえるベントレーボーイズが愛した一台が新車で手に入るなら、この値段は安いと思った人が大勢いたということだ。