HOTELS DELUXE Vol.35
ホテル連載第35回:一度は飲むべき名物カクテル
October 2025
非日常を味わわせてくれるホテルバーには、熱い想いが込められた名物カクテルがある。クラシックカクテルもいいけれど、たまにはその場所でしか飲めない一杯を。個性あふれるバーテンダーとともに、珠玉のカクテルをご紹介。
text yukina tokida
<ザ・リッツ・カールトン東京>
日本の二十四節気をカクテルで巡る。バーテンダーの情熱が込められた一杯は香りにまで思わず心を奪われる。
「小雪」(¥3,800)は、究極の和製アールグレイマティーニを作りたい、というヘッドバーテンダーの和田健太郎氏の思いから誕生した一杯。グラス中央に見えるベルガモットはガラスの飾り。
ザ・リッツ・カールトン東京「ザ・バー」のカクテルメニューは、日本の四季を巡る精霊の旅がテーマ。それぞれに二十四節気が名付けられており、こちらの一杯は10月5日から12月8日までを指す「小雪(しょうせつ):ベルガモットの歌」。
ベースは「季の美」が手がけるジン「季のTEA」で、緑茶の香りが奥から立ち上ってくる。そこにリレ ブランと和歌山県産の新鮮なベルガモット、そして赤松の香りを凝縮したビターズが合わさり、口に含むと思わず笑顔になる。グラスが纏っているのは「堀井七茗園」の繊細で滑らかなほうじ茶のパウダー。目の前に運ばれてくる瞬間に漂うその香り高さに虜になるだろう。
休みの日も生産者を訪れて上質な材料を探し続けているという和田氏。自宅には10本以上ものギターを所有している生粋のロック好き。
お問い合わせ先:TEL. 03-6434-8711
<フォーシーズンズホテル東京大手町>
ベースはスタッフ全員で仕込む梅酒。ウイスキーの味わいとスモーキーな香りの奥にあるのはやさしい甘味。
「スモークド梅ファッションド」(¥4,000)。トッピングはオレンジピールとチェリー、梅酒の梅。テーブルに運ばれてきてから桜のウッドチップに火をつけて燻される(右上)。オリジナルの梅酒の材料は、和歌山県産の梅とミクターズウイスキーと氷砂糖のみ。
イギリス生まれのバーテンダー、キース・モッツィ氏が率いるフォーシーズンズホテル東 京 大 手 町 のバー「VIRTÙ(ヴェルテュ)」のホスピタリティは日本随一だ。チームが作り上げる温かい雰囲気は、誰もが歓迎されていると感じるだろう。
そんなスタッフ総動員で年に一度、梅が旬を迎える6月に仕込んでいるのが、ミクターズウイスキーで漬けるオリジナル梅酒。それを使った「スモークド梅ファッションド」は、梅酒に日本のウイスキーと檜ビターズを合わせており、サービスされる直前にゲストの目の前で桜のウッドチップに火をつけて香りをプラス。奥深い甘味と豊かな香りにほっと落ち着く、じっくり時間をかけて楽しめる一杯だ。
ヘッドバーテンダーのキース・モッツィ氏。チームの核である彼の細やかな気遣いと温かいホスピタリティは別格。ウェルカムドリンクはシャンパーニュ。
お問い合わせ先:TEL. 03-6810-0655
<ザ・ペニンシュラ東京>
ホテル開業時に誕生したカクテルはハンフリー・ボガードのあの名作が着想源。時代を超えて輝き続ける。
ホテル開業時から愛されているカクテル「東京ジョー」(¥3,200)。ボンベイサファイアをベースに梅酒、ドランブイ、クランベリジュースとレモンジュースを合わせた。東京を舞台としたハンフリー・ボガードの出演映画『東京ジョー』に着想を得て誕生した。メタルでできた特注の土台は見た目以上にずっしりと重い。
ザ・ペニンシュラ東京の「Peterバー」でヘッドバーテンダーを務める鎌田真理氏。女性がバーカウンターに立つことが憚られた時代から変わらぬ情熱を持ち続けてきた彼女は数々の賞を受賞した実力者であり、その最高の一杯はもっぱらの評判だ。
情熱的なピンク色がアイコニックな「東京ジョー」は、同ホテルの開業時に誕生したジンベースのカクテル。クランベリージュースを合わせているので、コスモポリタンに近い味わい。盃に見立てたオリジナルグラスは、上部のガラス部分だけを持って飲むスタイルだ。思わずすっと背筋が伸びるような、アペリティフにも最適な軽やかで上品な飲み口のカクテル。
ヘッドバーテンダーの鎌田真理氏。今年より全スタッフが持ち回りで考案するウェルカムカクテルが登場。訪れるたびに異なる一杯に出合える楽しさがある。気に入れば注文することも可能。
お問い合わせ先:TEL. 03-6270-2888
<東京エディション銀座>
その名も「キレないマティーニ」。日本文化をパンチで表現した、銀座のエディションが発信する新スタイル。
シグニチャーカクテルのひとつである「キレないマティーニ」(¥2,700)。ウォッカ「白(ハク)」をベースに、シェリー、葡萄、ベルモット、熊笹茶を合わせた、やさしいマティーニだ。19世紀に日本で生まれたとされるカクテル「バンブー」をマティーニと融合させている。ミニ刀に刺さった若梅も秀逸。
開業から1年あまりで「アジアのベストバー 50」の36位にランクインするという快挙を果たした東京エディション銀座の「Punch Room Tokyo」。同店を率いるのは川久保安寛氏だ。氏は日本の文化を“パンチ”スタイルで表現。そもそもパンチとは、スピリッツ、スパイス、柑橘類、ティー、シュガーの5つを混ぜ合わせたカクテルのこと。それになぞらえ、同店のメニューもこの5つの要素で構成されたカクテルが揃う。
ユニークなネーミングも魅力のひとつで、例えばウェットマティーニをベースにしたこちらの一杯は、あえて“ドライのようなキレがない”という意味を込めて「キレないマティーニ」と名付けられている。
バーディレクターの川久保安寛氏。世界各国の名店で経験を積んできた人物だ。
お問い合わせ先:TEL.03-6228-7400
「The Rake 日本版」Issue66より抜粋
















