HOPE IN HELL
世界のファッショニスタに学べ:ジョージ・ハーン
June 2022
インターネットを舞台に活躍するサルトリアリスト、ジョージ・ハーン。
Fox Newsを皮肉ってバズり、家に帰ってTHE RAKEを読みながらコーヒータイム、そんな人を我々が放っておくはずはない。
text tom chamberlin
translation wosanai
phorography rose callahan
George Hahn
ジョージ・ハーン
アメリカ・オハイオ州クリーブランドの郊外にあるレイクウッドで生まれ育つ。ニューヨーク在住。“大富豪ではないけれど、格好よく生きたいと思っている男性のために作られた”ブログ「georgehahn.com」を運営。TwitterやInstagram、TikTokやYouTubeなどインターネットを舞台に多彩に活躍している。
ブルーのスーツはジョージのユニフォーム。「トム・フォードが黒を着るように僕はブルーを着ます」と彼は語る。スーツはスーツサプライのもの。サイドアジャスター派のためにトラウザーズからはベルトループを排除してある。シャツはProper Cloth。シューズはオールデンのバルモラルで、コードバンレザーのもの。「いつだってコードバンです。馴らすのに時間が掛かりましたが、好きなのだから仕方ありません。タフですし、ケアも最小限で済みます」。タイはキートン。彼はスタイルの細部に至るまで注意を払っているが、あえて完璧は目指さないという徹底ぶりだ。「完璧は無味乾燥でしかありません。タイのディンプルをセンターから少しずらすとか、そういった機微が味なのです」。
世界が人種差別、テロリズム、そしてウイルスのパンデミックで混沌としている中、ジョージ・ハーンとの出会いは私にとってある種の光であった。
インスタグラムに投稿された彼の78秒の動画、それで彼は「人生が変わったよ」と語る。その動画は、大手であるFox Newsが伝えた、ジョージ・フロイド氏殺害に起因しさまざまな都市で暴動が起きどこもまるで戦場のようだ、と報道したニュースを皮肉ったものだった。彼はその渦中に自撮りしながらニューヨークの街中を歩き、「見てくれ、まるで地獄だ、アイスクリームを買うために人は列をつくり、レストランでは優雅に食事をしている」と実際に起きている状況をリアルに伝え、「Fox Newsなんて見るな」と締めくくった。
あるとき、ニューヨークにいる編集者から私宛にメールが届き、そこに添付されたNew York Timesのリンクを開いた。それはジョージ・ハーンの記事だった。かの動画の男性がThe Rakeを片手にそこにはいた。
ジョージの投稿する動画の中で、彼はいつもスタイリッシュだ。そして何年にもわたりYouTubeで洋服の着こなしをレクチャーしてくれている。私は完全に心を摑まれてしまった。このコラムに彼以上に適任な人物が果たしているであろうか?
左:銀でできたマグカップは母親からのプレゼント。彼女がジョージを妊娠したときに、お祝いでもらったものだという。「実際にこれで何かを飲むことはありません。小物入れとして使っています。今はカラーキーパーがはいっています」。/右:外出時に決まって持ち歩いているのがこれら。コネチカットにあるTerrapin Stationersのテッド・ハリントン氏が作っているノートは上着の右内ポケットに、iPhoneは左内ポケットに入れているという。ペンはパーカーで、サングラスはレイバンのアビエーター。「ペンはいつも持ち歩いています。手書きが一番しっくり来ます」。
Mougin & Piquardの腕時計。スティールのケースがシルバー等のアクセサリーと絶妙にマッチする、彼のお気に入り。
継父であるボブが10年前にプレゼントしてくれたスイスアーミーナイフ。「こういうのはやっぱり好きなんです。最低でも一週間に何度か使います。男であればひとつは持っていたいですよね」。
もうひとつ彼が生まれたときのギフトが現在の彼の手元にある。それがこの幼児用のヘアーブラシ。ともに50年以上の時を過ごしてきた。今彼には2匹の愛犬がいるのだが、無論別のブラシを彼らには使っているようだ。
このブレットは父親から受け継いだもの。「父は心臓がよくなく、常に薬を携帯していました。そのケースがこれです。私にとって非常に特別なものです」。
スカルとボーンのカフリンクスはFine And Dandyで購入。「正直言うと、アクセサリーはほとんど持っていません」とジョージは告白してくれた。1枚目の写真に見える時計とブレスレットも同様に数少ない彼のアクセサリーのひとつだという。ブレスレットは健康グッズらしく、友達がプレゼントしてくれたのだとか。
眼鏡はオリバーピープルズのリーディンググラス。いつも動画ではコレをかけている彼を拝見できるはずだ。「この眼鏡を買ったときは、テレビドラマの『Mad Men』がやっているときで、みんな60年代に夢中でした。レンズには、調光かつ遠近両用レンズが入っていますから、ずっとかけっぱなしです」。