THE MILITARY ACADEMY

拡大するラグスポの新アイコン“BR 05”

August 2022

ベル&ロスは、2019年に発表した「BR 05」とその拡大によって、さらなる成功をおさめている。

デザイナーのブルーノ・ベラミッシュが、その開発について語ってくれた。

 

 

text justin hast

 

 

オパライン仕上げのシルバー文字盤「BR 05 クロノ ホワイト ホーク」。ケースバックにはシルバーメタリックの鷹があしらわれている。

 

 

 

 私(筆者)が時計の世界にのめり込んだきっかけ、それはある夏のニースでのことだった。当時20代前半だった私は、ニースのあまりの陽差しの強さに耐えかね、休憩がてら有名な紳士服店Albert Artsに入店した。英国にインスパイアされた素敵な店には、生成りのショートパンツとデニムシャツを着たマネージャーがいた。彼は黒くて四角い大ぶりな時計を着けていて、私の目はその時計に釘づけになってしまった。尋ねてみると、ベル&ロスというフランスの時計ブランドだという。それから私は残りの休暇を費やして店を探し回り、カタログを夢中で読み漁ったのだった。

 

 長い歴史と伝統を持つ時計製造の世界において、ベル&ロスは新興の部類に入る。学生時代から友人同士だったブルーノ・ベラミッシュとカルロス・ロシロが1994年に創立したブランドだ。ベラミッシュ(「Bell」)がデザイナー、ロシロ(「Ross」)が経営のトップである。そのビジョンは、機能的かつ頑丈な腕時計。特殊部隊や潜水特攻隊、空軍、陸上活動などの軍隊にインスピレーションを得た時計を作ろうというコンセプトである。

 

 

銀行家としてキャリアを積んだカルロス・ロシロ(左)と、時計デザイナーのブルーノ・ベラミッシュ(右)。

 

 

 

 ベル&ロスの大きな転機といえば、2005年に発表されたスクエア型のケースの「BR 01」である。これはまさに同ブランドの礎となる時計だった。遠くからでもひと目でそれとわかるユニークなデザインは、どの時計ブランドも追求しているもの。ベル&ロスは「BR 01」で、その優位性をしっかり獲得したのだ。

 

 それ以降も同社のデザインは絶え間なく進化を遂げ、2019年発表の都会的でシックな「BR 05」へと至る。時計業界で最も勢いのあるジャンル、ラグジュアリースポーツの潮流を捉えた新コレクションだ。ケース径は40mmで、ステンレススチールのブレスレットとケースが一体となっている(少なくとも最初のラインナップはそうだった)。自動巻きムーブメントを搭載し、ブルーとブラックとグレイの3色の文字盤でスタート。やや小ぶりのサイズ感も相まって、発売から瞬く間に幅広い層の人気を獲得した。

 

 ベル&ロスのWEBサイトでは、「BR 05」の幅広いバリエーションを見ることができる。現在は、GMT、クロノグラフ、スチールケースの3針、スケルトンダイヤル、ゴールドおよびツートンのケースに分類されている。「BR 05」の開発について、ベラミッシュはこう語る。

 

「ブランドの創造性を活気づけるには目新しさが重要です。社内のチームから販売代理店に至るまで、時計業界は目新しさとそれに伴う創作に拠って立つところが大きいのです。まったく新しいモデルは、発表までに2年ほどを要します。製品ラインを拡張する場合は1年前から計画します。『BR05』の場合は、2014年から頭の中でプロジェクトが膨らんでいました。3年間熟考した末に、制作に取りかかったのです。最初のスケッチを描き始めてから最終デザインを承認するまで、2年かかりました。その目的は、ブランドを象徴するスクエア型と、ユニバーサルで汎用的なラウンド型の中間となるモデルを開発すること。そして、“都会向けの時計”を生み出すことでした」

 

 

「BR 05 スケルトン ブルー」。

 

18Kピンクゴールドとステンレススチールのツートンカラー、「BR 05 ブラック スティール&ゴールド」。

 

 

 

「BR 05」は発表された翌年以降も、さまざまなバリエーションが展開され、大きなコレクションへと拡大していった。2020年6月に500本限定で発売されたのが「BR 05 スケルトン ブルー」。機械式時計の内部が見えるスケルトン構造は、愛好家たちに好意的に受けとめられた。7月には「BR 05ブラック スティール&ゴールド」が、そしてその次にはついにクロノグラフ搭載の「BR05 クロノ」が登場した。42mmという新しいサイズのステンレススチールケースで、ブラックとブルーの2種類のダイヤルだった。

 

「『BR 05』は全体的にコンパクトで調和の取れたモデルであり、当社の象徴だったスクエア型と、ケースとブレスレットが一体化したタイプの時計を完璧に融合させています。実際に機能するムーブメントに合わせ、サイズを設定しました。“機能が形を作る”というのがベル&ロスのモットーであり、『BR 05』も例外ではありません。当社が最初のモデルを40mmで発売したのは、それが最も一般的で妥当なサイズだったからです。クロノグラフに関していえば、その機能に合わせた42mmが妥当と考えます。この両極端のモデルによって、明確にコレクションが完成されるのです。これは市場の期待に沿ったものでもあります」

 

 

ブルーのラバーストラップを装備した「BR 05 クロノ ブルー スティール」。

 

 

 

 2020年10月には、ゴールドケースにブルーダイヤルを用いた「BR 05 ブルー ゴールド」を発表。2021年初頭には、「ラム」というコンセプトを織り込んだ「BR 05 スケルトン ナイトラム」を500本限定で発表した。スーパールミノバコーティングによる薄暗い場所での視認性は誰もが知るところだが、このモデルはその効果と機能性をさらに高めている。

 

 2021年の目玉は、9月に発表された「BR 05 GMT」だ。ケース径は41mm。40mmと42mmの間のバランスの取れたサイズは、実にフランス的でエレガントである。また、10月にはふたつのハイエンドモデル「BR 05 スケルトン ゴールド」(99本限定)と「BR 05 ダイヤモンド」をコレクションに追加している。

 

 さらに12月には、250本限定の「BR 05クロノ ホワイト ホーク」を発表した。ベラミッシュは次のように語る。

 

「重要な賭けでした。時計をデザインするときには数多くの条件を満たす必要があり、常に繊細で複雑な作業となります。特に今回は、当社のアイコンであるタイムピースを歪めることなく、むしろ完璧なものにする必要がありました。この時計は、光沢のあるポリッシュ仕上げとツヤ消しのサテン仕上げという、ふたつのコントラストによって魅力を高めています。大事なのは、ディテールの仕上げを徹底的にこだわること。また、素材の品質、防水性など、卓越した性能も追求してきました。それはもう、宝石のようなものですよ」

 

 時計製造においてこのようなイノベーションは、10年単位でかかるものだ。ゆえに、ベル&ロスが「BR 05」という新しいコレクションを急拡大してきたスピードは実に驚異的である。次はいったい何が来るのか。今から楽しみである。

 

 

スーパールミノバが施された「BR 05スケルトン ナイトラム」。

 

「BR 05 スケルトン ゴールド」。

 

旅人必携の「BR 05 GMT」。

 

インデックスやベゼルにダイヤモンドをあしらった「BR 05 ダイヤモンド」。