GRAND PRIX D’HORLOGERIE DE GENÈVE

時計界のアカデミー賞、“GPHG”とは何か?

April 2023

02- Technological Innovation
革新技術を取り入れた時計

Innovation Prize 2022

VAN CLEEF & ARPELS
レディ アーペル ユール フローラル スリジエ ウォッチ
パリのハイジュエラーらしく、時刻表示にも詩的な表現を取り入れた。その表示はかなり複雑。ダイヤルに12の花があり、その開いている数で“時”を示し、“分”はケースサイドで表示する。0分になると花は一旦すべてが閉じ、そして再び開花する。ロマンティックな時の表現は、流れる時間を慈しもうという気持ちの表れだ。自動巻き、18KRGケース、38mm。

 巻き上げたゼンマイがほどける力を回転運動に変え、その力によって回転する歯車の速度を、調速脱進機によってコントロールするという機械式時計のメカニズムは、約400年前から変わっていないといわれる。しかしそんな古典的な機械であっても、やはりそのままでは生き残ることはできない。たとえ機械式時計であっても、時代に合わせて素材や構造などで革新を遂げてきたからこそ、時代の変化に対応できたのだ。

 GPHGの「Innovation Prize」は、まさにそういった“時代を超えるための挑戦”を行い続けるイノベーティブな時計を讃えるためにある。受賞した時計たちが搭載している革新的な機構が、「時計業界の次のスタンダードになる!」とは流石に断言はできないが、時刻表示やパワーリザーブに対する考え方や世界各地に残る独特の文化に対する表現方法、技術開発などを見ていると、時計技術の進んでいく方向がなんとなくわかってくる。それはただ興味深いだけでなく、教養を深めることにもつながるだろう。

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