FERRARI SF90 STRADARE ASSETTO FIORANO

スーパーカーの未来はもうそこまで来ている

January 2022

初めての体験は、人に驚きと感動をもたらす。

フェラーリの最新プラグインハイブリッドは、未来を垣間見させてくれる一台である。

 

 

text tatsuya kushima

 

 

フェラーリ SF90 ストラダーレ アセット フィオラーノ

パワーソース:4リッターV8ターボ+3モーター/最高出力:1,000cv(エンジン780cv+モーター220cv)/全長×全幅×全高:4,710×1,972×1,186mm/乾燥重量:1,570kg/ギアボックス:8速 F1デュアルクラッチ/0-100km/h:2.5秒/最高速度:340km/h

 

 

 

 未来を垣間見る瞬間がある。コンビニの無人レジがそうだろう。お客自身が商品のバーコードを読み取らせ合計金額を支払う。慣れないと戸惑うし、要らぬ誤解を招かないような態度をしなければならない。古くは高速道路でのETCカード、公共交通機関のプリペイドカードもそうだ。初めてのETCカードは恐る恐るゲートを通過したのを記憶する。

 

 これらは既存の概念の延長線上にある。が、初めての体験は驚きと感動をもたらす。要するに未来のスタート地点。少し経てば新たな常識になるのだろうが、やはり驚きは隠せない。

 

 フェラーリのニューモデル、SF90 ストラダーレはまさにそんなクルマであった。その正体はプラグインハイブリッド。電気で走るモードを有する。発表は2019年で、小誌でもお伝えしたことがある。フェラーリ初の市販型プラグインハイブリッドモデルはスーパーカーの未来を変えるのか!なんて感じだ。

 

 それはともかく、ジャパンプレミアから2年近く経って実際に乗り込む機会を得た。冒頭の未来を垣間見た瞬間とは、まさにそのときのこと。用意されたSF90ストラダーレ アセット フィオラーノに乗り込み、スタートボタンに指で触れると未来があった。待ち構えていたスタート時の「フォン!」というブリッピング音が……ないのだ。

 

 通常の電動化されたクルマであれば特に不思議ではない。概ねスタートはモーターで、電気的起動音とともにスーッと走りだす。が、ことスーパーカー、ましてやフェラーリとなると脳が混乱する。「えっ!これエンジンかかってますか?」とモータージャーナリストらしからぬ言葉を口にしてしまう。

 

 

 

 

 

 ハイブリッドアーキテクチャーは3つのモーターからなる。フロント左右のタイヤに一つずつ、リアに一つだ。充電された状態でのEVモードでは前輪を駆動する。今回スタート地点の六本木から高速道路までの間はそれで走った。スムーズな動き出しから加速までお見事。トルクステアなどなくジェントルに走る。

 

 そして高速道路に入ってからの加速では最新のV8ターボエンジンが期待通りの走りを見せる。そうそう、コレ! 780馬力の片鱗だけで頰が緩む。コクピット周りの未来感もたまらない。オールデジタル化されたメータークラスターもそうだし、スイッチ類もそう。ステアリング上に配置されたスイッチをテキパキと使いこなすのはオーナーの特権だろう。

 

 いずれにせよ、モーターと合わせ1,000馬力になるパワートレーンに不服の者はいないはず。スーパーカーの未来はもうそこまで来ている。

 

 

 

SF90 ストラダーレには他のフェラーリモデルにはない装備がある。それはエレクトロニック・ビークルダイナミクス・モードセレクターで、モーターだけで走らせたり、積極的に充電させたりする。気になるのは“クォリファイ”モード。システム最大1,000馬力(エンジン780馬力、モーター220馬力)を発揮できる。SF90の名はスクーデリアフェラーリ90周年の意味。2019年がレーシングチーム、スクーデリアフェラーリの創業から数えてその年に当たる。フェラーリ社内にあるテストコース“フィオラノ”の名前がついたアセットフィオラノは、標準モデルをレーシーにアップグレードしたもの。専用サスペンション、タイヤ、スポイラーとともにボディパーツにカーボンを多用して軽量化を図った。