Dieter Knechtel Interview
テクノロジーも、エモーションも最高を追求する。それがフェラーリ。
May 2017
フェラーリ極東・中東エリア統括CEO
ディーター・クネヒテル インタビュー
text kentaro matsuo
Dieter Knechtel
ディーター・クネヒテル
1972年、オーストリア、ウィーン生まれ。ウィーン大学にて修士号取得後、シトロエンに入社。その後ルノーS.A.に移り、2003年にアジア・パシフィック地域にブランド拠点を構築するため東京に赴任。日本にて3年を過ごす。2006年ポルシェへ移籍、中国マーケットを担当。2015年より、フェラーリ極東・中東エリア統括CEOに就任。ドイツ語、英語、フランス語、スペイン語が堪能。会話レベルで日本語、中国語もこなす。趣味は旅行とスキー。ただし「旅は仕事になってしまった」とこぼす。三児の父。
2017年、フェラーリは創業70周年を迎えた。
フェラーリの代名詞といえば、怒涛のハイパワーと、官能的なサウンドで知られるV12エンジンだ。1947年にフェラーリが初めてリリースしたクルマ、125SにもV12エンジンが積まれていた。フェラーリは70年前から今日に至るまで、絶えることなく12気筒エンジンを作り続けてきた、唯一のブランドなのだ。
フェラーリの最新V12エンジンを積んだ「Ferrari 812 Superfast」。その名の通り、驚異的なパフォーマンスを誇る、ニューフラッグシップだ。
そんなフェラーリのV12エンジンの歴史に、新たなモンスターマシンが追加された。「Ferrari 812 Superfast」である。そのエンジンは6.5ℓV12で、なんとプロダクション車両の歴史上、最強となる800psを発生するという。今回812 Superfastのプロモーションのために来日したフェラーリ極東・中東エリア統括CEO、ディーター・クネヒテル氏に、その魅力を尋ねてみた。
通常市販車最強の800psを発生する6.5ℓV12エンジン。75%ものパーツが新設計されており、実質的には、まったくの新世代エンジンである。
「このクルマを見た誰もが叫びます。『ワオ、6.5ℓ、800馬力だって!こんなクルマ見たことがない!』と。そうです。これは今までマーケットには存在しなかったクルマです。自然吸気ながら、新型V12エンジンのパフォーマンスは凄いの一言。0-100km/h加速は、2.9秒しかかからないのです。」
そう言ってクネヒテル氏は胸を張る。確かに812 Superfastのエンジン性能は、当代随一だ。しかし812 Superfastの魅力は、エンジンばかりではないともいう。
「このクルマ第2の魅力は“美しさ”です。このリアフェンダー周りのデザインを見てください。どっしりとしていて、まるで大地と繋がっているようでしょう。しかも最新のエアロ・ダイナミクスが取り入れられ、ダウンフォースは10%も増加しています。強さと美しさが、うまく噛み合っているのです」
迫力のリアヴュー。造形美だけでなく、機能性にも優れている。ダウンフォースはF12と比べ、10%も増大しているという。
「そして第3の魅力は、とても運転しやすいことです。電動式のステアリングはとても軽く、指2本で動かせてしまうのです。またバーチャルショートホイールベースシステムを装備しており、後輪操舵によって比類ない“曲がりやすさ”も実現させています。こういったハイ・テクノロジーは、日本人の最もよく理解するところですね」
実はクネヒテル氏は、大の日本通でも知られる。2003~2006年にかけて、日本に住んでいたこともあるのだ。
「日本は私が初めて住んだ海外の国なのです。伝統とイノベーションが共存する、素晴らしい国ですね。日本人はモノのクオリティやサービスに対する理解が非常に深い。そしてテクノロジーに対する知識が豊富です。実はアジア地域で、フェラーリが一番売れているのは日本なんですよ。ええ、中国よりも売れています。そしてその売り上げは、毎年伸びているのです」
まったく新しくなったインテリア。スポーティかつラグジュアリーな空間は、フェラーリならではの世界だ。
日本時代はルノー、その後ポルシェといった自動車メーカーに籍を置いていたこともあるクネヒテル氏だが、フェラーリはそれらのメーカーとは一線を画しているという。
「フェラーリは実にユニークな会社です。クルマメーカーとしては小規模なところが、他と一番違う点です。よりパーソナル化されたブランドで、お客様に近いところにいることができる。われわれとカスタマーは、一心同体なのです。われわれも彼らも、常にベスト&ファステスト(最高で最速)のクルマを求めていますからね」
フェラーリ社創業70周年を記念してリリースされた「LaFerrari Aperta」。フェラーリ初のハイブリッド・スーパーカー、ラ・フェラーリをオープン化したもの。
フェラーリは創業以来、常にトップエンドを追求する姿勢を貫いてきた。そして70年もの長きにわたって、やはり最高を求める顧客の期待に応えてきたのだ。
「70周年という“ビューティフル”な年に、フェラーリ社に在籍しているのはラッキーでした。世界中でさまざまなイベントを予定していますが、そのハイライトが『LaFerrari Aperta』のローンチです。これは私自身、最も好きなフェラーリでもあります」
ラ・フェラーリ・アペルタは、市販フェラーリ初のハイブリッドカーであったラ・フェラーリのオープン・ヴァージョンである。V12エンジンとエレクトリック・モーターを組み合わせ、システム出力963psを得ている。ラ・フェラーリ・アペルタの販売価格は数億円とされるが、熱狂的なファンによって、限定209台はすでに完売したという。
「私はクルマというものが大好きです。なぜならクルマには、テクノロジーの部分とエモーションの部分の両方があるからです。それらを一緒に売ることができるのが、カー・ビジネスの面白いところです。フェラーリはテクノロジーにおいても、エモーションにおいても世界最高です。だからこの仕事が好きなのです」
クネヒテル氏のクルマ、そしてフェラーリに対する愛情と矜持は、限りなく大きい。