BENTLEY DRIVERS CLUB RSR RISING SUN RALLY 2024

ベントレー愛好家たち、美しき日本を走る

May 2024

世界中から集まった31台ものクラシックベントレーが、約3週間にわたり日本各地を旅した「ベントレーライジングサンラリー」。貴重な新旧のベントレーの姿にはもちろん、それを駆るオーナーたちの人柄にもまた感銘を抱くことになる、晴れがましい旅となった。

 

 

text takashi nakajima

photography hirohiko mochizuki

 

 

福岡からスタートしたラリーは、日本の名所旧跡を巡りながら北上。春の日差しを浴びて輝く新緑の中を、クラシックベントレーが力強く走った。ラリー終盤では、埼玉県加須市で貴重なベントレーを動態保存している博物館「Wakui Museum」を訪問。ひととき車両と身体を休めた。日本でも有数のベントレーコレクションを前にしたガーデンパーティでは、地域交流や、オーナー同士が談話を楽しんだ。

 

 

 

 それは、まるで映画の世界に飛び込んだような光景だ。心地よい風に運ばれた野太い排気音とともに、博物館クラスのクラシック・ベントレーが次々と到着する。

 

 動いている姿を見るだけでも貴重な歴史的モデルであるにもかかわらず、ドライバーたちは機敏に愛機をパーキングエリアへといざなう。それはまるで愛馬を操るような颯爽とした身のこなし。思わず見惚れないではいられなかった。

 

 世界のベントレー愛好家が日本を旅する「ベントレーライジングサンラリー」は、約3週間にわたり日本を文字どおり縦断するというスケールの大きなもの。世界で最も長い歴史を持つ自動車クラブBENTLEY DRIVERS CLUB(BDC)から、31台のベントレーと、60人以上のオーナーたちがこの長旅のメンバーとなった。

 

 

ラリーには100年にわたるベントレーの歴史を積み重ねてきた名車たちが参加。創始者である「W.O.」ことウォルター・オーウェン・ベントレー自身が設計した「3リッター」も、雨のなか行程を走り切った。

 

 

ベントレーのデザインは歴史と伝統に裏打ちされており、そのディテールにはすべて意味がある。

 

 

 

 福岡へと降り立った一行は、別府、広島、松江、天橋立、そして京都、高山、金沢、信濃大町、佐渡、さらには裏磐梯、日光、蓼科、富士、そして横浜というルートで、春の美しい日本を巡る。われわれは、旅の最終コーナーに当たる蓼科から富士までの行程を、最新のベントレーで同行した。

 

 蓼科へと向かう日の朝、集合場所となったのは、ベントレーを収蔵する博物館として名高い「Wakui Museum」。待機場所には、100年前に製造された3リッター、現在のモデルに受け継がれるマトリックスグリルを採用したスピードシックス、そしてW.O.時代の集大成ともいえる8リッターまで、各時代を代表するモデルが並び、さながらベントレーの歴史絵巻といった様相であった。

 

 蓼科の宿泊施設までの200kmを超える道程にはワインディングロードも組み込まれていて、決して平坦な道ばかりではないが、参加者たちはどんな道もまったく恐れない。そればかりか、現代の車両と変わらないペースで駆け抜けていく。ベントレーは生まれながらのグランドツーリングカーであり、ブランドを定義するのは、パフォーマンスとラグジュアリーの融合であるという言葉が、体験として理解できた。

 

 

上2点:「Wakui Museum」でのガーデンパーティでは、日本とベントレーの深いつながりを改めて確認することができた。

 

 

 

 同じくらい感銘を受けたのがベントレーオーナーたちの人となりであった。風雨をものともしないタフネスさ、笑顔を絶やさず、周りの人々に敬意を払う社交的なふるまいは、まさしく紳士淑女そのもの……。

 

 ブランドとは、製品そのものだけでなく、その顧客となる人々によって、よりいっそう磨かれ高められていく。そんなことを、理屈ではなく、体験を通して味わうことのできた随伴だった。

 

 

上2点:天候にかかわらず、精力的にベントレーを駆る参加者たちの冒険者的精神は、まさしくベントレーそのものであった。