AUDI RS E-TRON GT

Audi RS e-tron GT:まるでSFの世界に入り込んだよう

April 2022

ロー&ワイドなボディに、現在考えうる限りのハイテクを詰め込んだアウディのニュー・フラッグシップ。

近未来からやってきたラグジュアリー・カーをリポートする。

 

 

photography hirohiko mochiduki

 

 

Audi RS e-tron GT

アウディの高級電気自動車e-tron GTのパワーアップ・バージョン。エレクトリックカーとしては、屈指の高性能を誇る。

全長×全幅×全高:4,990×1,965×1,395mm/駆動方式:4WD/最高出力:475kW/最大トルク:830Nm/0-100km/h加速:3.3秒 Audi

 

 

 

 左右の景色は猛烈なスピードで後ろへ流れ去っていくが、室内は不思議なほど静かである。アクセルを踏むと、ヒューンというかすかな機械音が響く。路面の凹凸以外に、振動がまったくない。最新のエレクトリックカー、Audi RS e-tron GT のハイウェイ・ランは、異次元の体験である。まるでSFの世界に入り込み、未来のクルマを運転しているようだ。

 

 そう、RS e-tron GTはまさに未来のクルマだ。アウディの計画では、2022年から2026年の間に、電動化のために約180億ユーロの予算を割り当て、2025年までに20を超える広範囲な電気自動車の導入を予定しており、2026年以降にアウディブランドが発売するすべての新車は電気自動車となるという。その急先峰となるのが、この1台なのだ。

 

 アウディ自ら“ブランド・シェイパー”と呼ぶように、RS e-tron GT の斬新なエクステリアには目を奪われる。エッジィな直線で構成されたボディは、ステルス戦闘機を思わせる。プロポーションはロー&ワイドで、スタイリッシュさがウリのAudi RS 7より、さらに全高は低く、全幅は広い。空力性能にも優れ、Cd値は0.24をマークする。

 

 

ドライバーを取り囲むように配されたデジタル・ディスプレイ。オプションのレザーフリーパッケージでは、漁網やペットボトルからリサイクルされた、環境に優しい素材をチョイスすることも可能だ。

 

 

 

 インテリアも先進的だ。ドライバーオリエンテッドな配置が強調され、ディスプレイやスイッチ類がドライバーをぐるりと取り囲む。運転席はコックピットという呼び方がふさわしい。フロア下にはバッテリーが敷き詰められているが、後席前部、足を伸ばす部分には空きスペースが設けられ、居住性が確保されている。

 

 恐るべきは、その加速力だ。アクセルペダルを床まで踏み降ろすと、頭部がヘッドレストに押しつけられるほどのGが得られる。ガソリンエンジンの加速が回転数に連動するのに対し、電気モーターのそれは低速からダイレクトに作用する。0-100km/h加速は3.3秒となっているが、数値以上の速さを感じる。

 

 回生性能を備えたブレーキ性能も素晴らしい。RSにはセラミックブレーキが採用されており、このストッピング・パワーは他に類を見ないほどだ。速度を増した車体に、強烈な反作用を加える。加速力と制動力が見事にマッチしている。

 

 

 

家庭用ACの普通充電から、最大150kWの急速充電にまで対応している。

 

 

 

 電気自動車で心配なのは航続距離だが、RS e-tron GTの一充電あたりの最大航続距離はカタログ値で534kmとなっている。これは東京から神戸までの距離を上回っているという。また主要サービスエリアで設置が進んでいる90kW急速充電器はもとより、全国102店舗のアウディ e-tron店に順次設置される予定の150kW急速充電器の性能を最大限活用することができる。

 

 いずれ世の中のすべてのクルマは、電気自動車になるのかもしれない。しかしそのコストを考えると、普及するのはまず高級車からだといわれている。アウディRS e-tron GTは、進取の気性に富んだ富裕層が、自らのインテリジェンスとサステナブルな姿勢をアピールするのにぴったりの1台である。

 

 

 

ロー&ワイドなボディは、リアヴューも実にスタイリッシュだ。