オークションレポートVol.4
クリスティーズ：ジェームズ・ボンド コレクション

映画「007」シリーズの公開60周年を記念し、作品にまつわる貴重な品々だけを集めたオークションが開催された。ライブオークションに出品された25点の中から、最も高額な値で落札された品とは。

 

 

 

text yukina tokida

photography : Christie’s Images Limited 2022

 

 

 

シリーズ最新作『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』（2021年）で、イタリア南部の街マテーラでのカーチェイスシーンのためにつくられた一台。アストンマーティンとイーオン・プロダクションズが一般販売した唯一のDB5スタントカーだ。

 

ヘッドライトの中に隠されていたマシンガンの仕かけや側面に施された傷もそのまま。ダッシュボードは3Dプリント技術で製作され、DB5タイプのステアリングホイールとクロノグラフのダイヤルを備えている。落札額は日本円にして約4億5000万円。

 

 

 

　1962年に映画「007」シリーズの一作目『007／ドクター・ノオ』がイギリス・ロンドンで公開されてから60回目を迎えた2022年。この記念すべき年を祝うべく老舗オークションハウスのクリスティーズと映画制作会社のイーオン・プロダクションズによって『Sixty Years of James Bond 』と題されたライブオークションとオンラインオークションが開催された。

 

　出品されたのは、作中で使用されたクルマや時計、衣装や小道具、さらにはポスターや記念品など、ファン垂涎のアイテムばかり。全61点のうち25点が出品されたライブオークションでは、主に『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』（2021年）にまつわるアイテムが中心だったが、最後の６点に、ティモシー・ダルトンが『007／消されたライセンス』（1989年）で着用したタキシードや、ピアース・ブロスナンが『007／ワールド・イズ・ノット・イナフ』（1999年）で操縦したジェットボートなど、ダニエル・クレイグ以外のボンド俳優にまつわる品も登場した。最も高い値で落札されたのは、『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』で使用されたスタントカーのアストンマーティン DB5（上写真）だ。同車種のスタントカーとして今回初めて一般販売された一台だったこともあり、事前のアナウンス時から非常に注目を集めていたこの品。公道を走ることさえ許可されていないこのクルマが、なんと2,922,000ポンド（約4億5000万円）で落札されたのだ。

 

　本記事で紹介しているアイテムを筆頭に数々の品が予想落札額を大幅に上回ったことで、今回の総額は6,874,494ポンド、日本円にして約11億円にもおよび、これまで過去3回（2012年、2014年、2016年）開催された、ジェームズ・ボンドをテーマにしたオークションの総落札価格を凌駕する驚きの結果に。その売上金は、すべて慈善団体へ寄付された。架空のスパイ、ジェームズ・ボンドに対するファンたちの愛を感じられるオークションとなった。

 

 

左：デザインにダニエル・クレイグの意見も取り入れられたオメガの「シーマスター ダイバー 300M 007 エディション」。ケース素材にはチタンを採用。右：『007／ノー・タイム・トゥ・ダイ』でダニエルが実際に着用した時計が出品される様子。映画の世界観に合わせて、オークショニアたちも正装で参加しているのが窺える。落札金額は予想落札価格の約11倍もの額となる226,800ポンド（約3535万円）に。売上金はTIME’S UP UKへ寄付された。

 

 

ロジャー・ムーアがジェームズ・ボンドを演じた第13作『007／オクトパシー』（1983年）で使用された「インペリアル・イースター・エッグ」（またの名を“ファベルジェの卵”）。イギリスの宝飾品ブランドであるアスプレイが制作したもの。当時ふたつ制作されたうちのひとつ。1万ポンドという予想落札価格を遥かに上回る327,600ポンド（約5100万円）で落札され、その売上金はUNICEFへ寄付された。H10×W7cm。

 

 

『007／スペクター』（2015年）のオープニングシーンでダニエル・クレイグが着用していたトム フォードのネイビースーツ、シャツ、シルクタイの3点。ジャケットの胸ポケットには、「Daniel Craig/Bond 24」の刺繍が施されている。落札金額は、予想落札価格12,000ポンドの約3倍となる44,100ポンド（約680万円）に。売上金はBFIFilm Academyへ寄付された。

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue 49