10 BOOKS EVERY GENTLEMAN SHOULD READ

全ての紳士に贈る、必読書10選

January 2024

text the rake

translation shuntaro takai

 

 

 

 

 エレガントに整えられた紳士の邸宅では、完璧に仕立てられたワードローブや充実したキッチンなど一つひとつの要素が、紳士の洗練された趣向を物語っている。その一方で、本棚はしばしば対照的な様相を呈すことがある。一時の興奮を呼ぶサスペンス小説やありふれた自伝が散乱し、他の分野で持ち得た、タイムレスなエレガンスさが欠けているのだ。紳士の書斎は服装選びと同様、洗練と知性の聖域であるべき。この “カプセル・ライブラリー ”は、ただ空間を充実させるだけでなく、心と魂を豊かにするためのものなのだ。そこに並ぶ厳選された蔵書は、単なる娯楽としてだけでなく、所有者の継続的なスタイルと本質を反映し、啓発するものでなければならない。

 

 そこで、ありきたりな日常を文化と知恵の非凡な経験に変える力を持つ、すべての紳士が手に入れるべき10冊の書籍を紹介する。

 

 

 

『グレート・ギャツビー』F・スコット・フィッツジェラルド

 

 

 騒々しく奔放なパーティ、最も華やかな退廃と耽溺、ミント・ジュレップ、クラシックカー、粋でエレガントなスーツ……あらゆる意味で紳士的な文学作品だ。ジェイ・ギャツビーが史上最も有名な文学紳士のひとりとしての地位を確立している。

 

 

 

『路上』ジャック・ケルアック

 

 

 

『路上』は、1957年にジャック・ケルアックによって発表された小説で、ビート・ジェネレーションの中心的な作品である。物語はサル・パラダイスとディーン・モリアーティがアメリカを横断する旅を描き、自由と新しい経験の追求がテーマとなっている。意識の流れをそのまま表現する「ストリーム・オブ・コンシャスネス」スタイルが注目を集め、アメリカ文学の古典とされている。登場人物は実在の人物に基づいており、彼らの友情や冒険は当時の若者文化に深い影響を与えた。

 

 

 

『モスクワの伯爵』エイモア・トールズ

 

 

 主人公のアレクサンドル・ロストフ伯爵は1922年、モスクワのメトロポールホテルに無期限軟禁される。高級ホテルに軟禁されるのも悪くないとお考えなら、ロストフ伯爵は屋根裏部屋にしか泊まることが許されなかったことを付け加えておこう(とはいえ、彼はホテルを自由に使うことができる)。感動的で、痛烈で、まったく忘れがたい物語である。

 

 

 

ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド

 

 

 この本は放埒なパーティと退廃に満ちた本で、アヘン窟が描かれており、少しゴシック・ホラー的である。主人公のグレイは失われた恋を悲しむのではなく、その息を呑むような若さと美しさを保つために悪魔と取引をする。不気味でゾクゾクしながらも、最初から最後まで興奮に満ちたストーリーが展開される。

 

 

 

『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』イーディス・ウォートン

 

 

 1870年代のニューヨーク、それも上流階級、上流社会、“黄金時代”のニューヨークへ。ニューランド・アーチャーは魅力的な若い紳士で、まもなく若く美しいメイ・ウェランドとの婚約を発表する予定だった。しかし、華やかで洗練されたオレンスカ伯爵夫人が彼らの社交サークルに現れたとき、アーチャーは自分が正しいと思うことと、自分が本当に望むことのジレンマに気づくこととなる。

 

 

 

『太陽がいっぱい』パトリシア・ハイスミス

 

 

 優雅で洗練されたスタイルが特徴的な永遠の名作。本書が提示するのは、憧れのスタイルや身だしなみだけではない。主人公リプリーは、これまで書かれた中で最も有名なアンチヒーローのひとり。アンチヒーローのおどけた行動は、真面目で義務感のあるキャラクターの物語よりも、読んでいて高揚することは誰もが知っている。リプリーと一緒に、快楽的で享楽的な人生を追求してはいかがだろうか。たとえどんな手段を用いたとしても。

 

 

 

『カラーパープル』アリス・ウォーカー

 

 

 紳士のみならず、すべての人に必読の書だ。アメリカ南部を舞台に、主人公の黒人少女セリーの物語が描かれる。セリーは貧しい境遇で人種差別のある社会で育った、困難な人生のスタートを切った少女だ。ところが、有名な歌手シャグ・エイブリーが彼女の人生に現れると、セリーの人生は想像もしなかったような変化を見せ始める。

 

 

 

『ANY HUMAN HEART』ウィリアム・ボイド

 

 

 紳士を名乗るなら誰でも読むべき必読の一冊。実際、ウィリアム・ボイドのほとんどの本がそうであるように。20世紀のうちの何十年にもわたって日記形式で語られるこの小説は、非凡でありながらも普通の人、ローガン・マウントスチュアートの物語だ。ヘミングウェイとパリで過ごした時間、イアン・フレミングとの交流、そしてフレミングの恐ろしい戦争体験を掘り下げている。そして何よりも、人間とは何たるかが書かれているのだ。

 

 

 

老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ

 

 

 ヘミングウェイ史上最も有名な本。時代を超えて感動的で、痛烈で、まったくもってユニークなこの本は、(言うまでもなく)海辺が舞台なので、海を望むホテルで読むのにぴったりだ。

 

 

 

ソネット集』ウィリアム・シェイクスピア

 

 

 

 154編からなるこの詩集を “カプセル・ライブラリー ”に加えれば、虎の威を借りずとも、芸術への理解を示すことができるだろう。劇的な描写、比喩、そしてシェイクスピアの個人的な人生への洞察が、彼のソネットに紛れもない独特のエッジを効かせている。