HOSHINO RESORTS, KAI ANJIN

「界 アンジン」のスイートで花火とシャンパーニュ三昧 

August 2023

text chiharu honjo

 

 

 

 

 この夏はさまざまなイベントが復活したが、夏の風物詩である花火大会もそのひとつだろう。静岡県伊東市に位置する「界 アンジン」は、夏の伊東エリアにおける名物「夢花火」を、最上階のスイートルームでシャンパーニュ片手に眺められる魅力的な宿だ。伊東ならドライブがてら車で行きたくなるものだが、東京駅からわずか1時間36分で着く、全車両グリーン席のラグジュアリーな特急「サフィール踊り子」で向かうのも渋滞知らずで快適だ。

 

 星野リゾートといえば、ユニークな発想で新たなホテルブランドを生み出すことで知られているが、「界」の名を冠した宿は和にこだわった上質な温泉旅館が揃う。界 アンジンは、伊東の海岸沿いに建つ全室オーシャンビューの宿で、日本初の造船ドックを開港した英国人航海士・三浦按針(ウィリアム・アダムス)ゆかりの地に建つ。館内には古船を解体して再利用した資材によるモダンなアートワークが飾られており、船旅を想わせる世界観を随所に感じられるデザインが見事である。

 

 

 

 

 この宿に惹かれる理由は、何と言っても豊富な湯量を誇る温泉にある。伊豆エリアにある伊東温泉は、別府温泉、湯布院温泉と並び日本三大温泉といわれる温泉天国で、源泉数は750本を超えるという。湧き出る源泉によって効能は違うが、界 アンジンの源泉はアルカリ性単純温泉で体に刺激がない無色透明の柔らかい温泉。ナトリウムを含む泉質のため湯上りはいつまでも温かさが持続し、驚くほど体が軽やかになる。

 

 また、最上階にある大浴場は、太平洋を一望しながら湯に浸かれる絶景の風呂。隣接する露天風呂は開放感があり、海風が何とも心地よい。実はこの露天風呂も隠れた花火のビュースポットなのだと、宿のスタッフが教えてくれた。

 

 

 

 

 温泉を満喫した後にゲストを虜にしているのが、湯上がり処で飲むビール。ここでは時間限定でインディアペールエールを好きなだけ飲める。ホップの強い香りと苦味が特長のビールで、ビールサーバーからセルフでいくらでも注げるため、つい飲み過ぎてしまったほどである。ほかに、伊東名産の「ぐり茶」やリンゴ酢、アイスキャンディーなどが置いてあるので、大海原を眺めながらのんびりとできるサンブエナデッキ(写真4枚目)で存分にくつろぎたい。

 

 

 

 

「按針みなとの間 オーシャンビュースイート」は、まさに花火を見るためにあるような、大きなガラス窓から海を見渡せる 77㎡の広々とした部屋。室内にはAmadana Musicレコードプレーヤーが備わっており、久しぶりにアナログなレコードの音を楽しんだ。レコードはライブラリーに数多く揃うので、滞在中に気に入った曲を探すのも一興だ。

 

 ベッドも秀逸である。界ブランドのためだけに老舗の日本ベッドとコラボレーションした「ふわくもスリープ」というマットレスで、星野代表が直々に寝た上で検討したという肝いりのオリジナルだ。とにかく日本らしさにこだわったというこのマットレスは、布団のようなふんわり感を出しながら、多湿という気候を考えた通気性のよさと、天井の低い日本家屋でも圧迫感のない30cm以下の厚みに仕上げている。迎賓館にも納めている上質なスプリングを使っているそうで、独立したひとつひとつのスプリングがそれぞれの体の形に合わせてフィットするため楽な姿勢で寝られるのだという。深く沈みこみ過ぎるということもなく、ほどよく体に沿う弾力があり大変寝心地が良い。

 

 

 

 

 夕食は半個室の食事処でいただけるため、プライベートな空間が保たれている。温泉旅館へ来た際、湯上りは浴衣に着替えて食事することがほとんどだが、ここでは食事している最中に人の目が気にならないのでゆったりと食事ができる。

 

 地元で親しまれているイカメンチを使った先付、アワビ真薯の煮物椀、ハイティーのようにスタンドに盛り付けられた八寸、金目や真鯛といった旬の魚のお造りなど、伊豆ならではの食材を使った豪華な会席料理を少しずつ味わえるのが「界」流。予約時に特別会席にアップグレードしておくと、伊勢海老、金目鯛、ムール貝など新鮮な魚介をじっくりと炊き込み、旨みを存分に際立たせた絶品のブイヤベース鍋や土鍋でふっくらと炊き上げたご飯を堪能できるので、是非ともリクエストしておきたい。

 

 ドリンクはワインや日本酒をボトルでも頼めるが、バイザグラスセットをオーダーするとその日の料理に合わせて酒をペアリングしてくれる。この日は伊豆高原ビールの甘夏スパークリング、中伊豆ワイナリーの伊豆シャルドネ、神沢川酒造場の正雪 辛口純米、ドメーヌ・ラフラン・ヴェロルのバンドールロゼを、美味しい料理に舌鼓を打ちながらいただいた。せっかく伊豆へ来たのだから地物の酒を味わいたいという時には最適だ。

 

 

 

 

 さて、お待ちかねの花火の時間。夏の伊東エリアにおいて目玉となるイベントで、界 アンジンからはグラスを傾けながら優雅に花火を楽しめる。中でも、最上階にあるスイートは目の前に花火が打ちあがる抜群のロケーションで鑑賞にはうってつけの特等席だ。窓を少し開ければ音も感じられ、臨場感がより一層溢れる。

 

 花火を愛でながら堪能できるのは、シャンパーニュのフリーフローとチョコレートという粋な組み合わせ。事前にオーダーしておけば、チャーチル首相がこよなく愛したという英国王室御用達の「ポル・ロジェ・ブリュット・レぜルヴ」のボトルをキリリと冷やして用意してくれる。また、チョコレートは静岡のチョコレート専門店「ミモザショコラトリー」に別注したオリジナルで、アールグレイ、ペッパー、深蒸茶といったシャンパーニュによく合う3つのフレーバーを愉しめる(シャンパーニュとチョコレートのオーダーは花火開催日のみ)。

 

 

 

 

 界 アンジンでは滞在中どこで過ごしてもスタッフの温かい笑顔に包まれ、また来たくなる宿という言葉がしっくりくる。そこでしか得られない体験やサービスもさることながら、やはりおもてなしの心を感じるかどうかで旅の満足度が決まるといっても過言ではない。そんな気の利いた宿でレコードをかけながらゆっくりと過ごし、海を眺めてまどろむ・・・この上なく気分が安らぐ時間がここにある。

 

 

 

界 アンジン

静岡県伊東市渚町5-12

TEL 050-3134-8092

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaianjin/