TO VICTORY!

オールドスクールを愛する稀有な存在:俳優 クリス・パイン

January 2023

もう実現するとは思わなかった……。しかしようやく機は熟し、THE RAKEはついにハリウッドで最も旬な俳優、クリス・パインの表紙起用にこぎつけた。彼の人柄の魅力と心地よさを存分に感じてほしい。
text tom chamberlin
photography kurt iswarienko
fashion direction grace gilfeather

Chris Pine / クリス・パイン1980年、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。カリフォルニア大学と英国のリーズ大学で学んだ後、舞台俳優の道へ。少しずつ映画への出演も果たし、2009年にリメイク映画『スター・トレック』でカーク船長役に抜擢され大ブレイク。以来、さまざまなジャンルの映画で活躍する。その実力とルックスやスタイルが高く評価されており、今最も引っ張りだこのハリウッドスターのひとり。

3ピーススーツ、シャツ、タイ すべて参考商品 Ralph Lauren Purple Label
シューズ「CAVENDISH3」 ¥92,400 Crockett & Jones
チーフ property of stylist
サングラス property of Chris Pine

 スパイク・ジョーンズ監督の映画、『her/世界でひとつの彼女』(2013年)を観た人なら、ホアキン・フェニックス演じる主人公セオドアが、完全にわかり合えると感じた相手との対話によって心地よさと安心感に浸っていたのを覚えているだろう。私はクリス・パインとのオンラインインタビューを終えたときに、それと同じような感覚を得た。彼は完全に私のっていた通りの人物だと感じたのだ。

 私は彼のいるロサンゼルスのタイムゾーンの朝9時半にログインしたが、画面の中の彼は既にぴしっとタイドアップしていた。「別に君に合わせたわけでも、張り切っちゃったわけでもないよ」。その言葉だけで、私の心はグッと摑まれてしまった。そこからは、ダブルのスーツが好きだとか、ウールはリネンと同じくらいの通気性を持っているとか、服についての他愛のない話が止まらなくなり、気がつけばかなりの時間が経ってしまった。THE RAKEの読者諸君なら皆、彼に心を奪われるに違いない。

 パインへのインタビューは、実は3年がかりで実現した。その経緯を説明しよう。この表紙&カバーストーリーについての話が上がったのは2019年11月で、撮影は2020年3月中旬の予定だった。まさにロックダウンのタイミングだったのだ。スタジオの上層部は頭を抱え、すべての映画を公開延期にした。その影響でプロモーション活動も中断してしまったため、我々の撮影とインタビューもキャンセルになってしまった。規制強化とステイホームの期間中も、私たちは撮影と取材を試みたが、何度もキャンセルに見舞われた。ある時期からはこの企画は呪われているのではないかと思ったほどだ。しかし、双方の忍耐と執念が結実し、ようやく今回実現したのだ。

 パインの近作といえば、Amazon独占配信の映画『オールド・ナイフ~ 127便の真実~』(2022年)から劇場公開作『ザ・コントラクター』(2022年)、『ドント・ウォーリー・ダーリン』(2022年)、そしていよいよ待望の公開となる『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』(2023年。日本公開は3月31日)に至るまで目白押しだ。しかしまずは過去を振り返りたい。ランドルフ・スコットやガイ・マディソン以来久しく見られなかった真の二枚目俳優となるべく、彼が歩んできた栄光の道程を辿ってみよう。

本記事は2023年1月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 50

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