THE LIFE TEUTONIC

ゲルマンの遊び人たち

February 2018

text nick scott

サンモリッツのパーティからエヴァ・マリア・フォン・メイトをエスコートするプリンス・ヨハネス(1970年代初頭

愉しむこと=美徳 ドイツという国、そしてドイツの血を引く膨大な数のホモサピエンス(ドイツ系アメリカ人は5,000万人、ドイツ系ブラジル人は500万人もいる)が、多くの道楽者を輩出しているのは驚くことではない。どんちゃん騒ぎや遊びが好きな気質はドイツの文化に根差している。

 ゲルマン系の民族のひとつであるゴート族は、まるで喉の渇きを癒やすように、退廃的なローマ人の道徳観を受け入れたし、「vandal」(破壊者)という言葉は、5世紀にガリアやスペインの街を侵略したゲルマン民族の一派であるヴァンダル族に由来している。現に、大戦間のベルリンに代表される退廃的な快楽主義は、フリッツ・ラングが1927年に製作したSF映画『メトロポリス』や、ジョセフ・フォン・スタンバーグが監督した『嘆きの天使』、ベルトルト・ブレヒトの舞台『三文オペラ』に生き生きと描かれている。

 ベルリンは今でも、性的な自由や快楽主義、エロティシズムの温床である。「ヨーロッパの売春宿」と呼ばれてきたドイツでは、公共の場での酒宴が法的に認められているし、小学校では、新入生の登校初日におもちゃやお菓子を詰めたとんがり帽子のような袋が全生徒に配られる。この国では愉しむことが美徳と考えられているのだ。

 ザックス、プリンス・アルフォンソ、エデン、ローウェンスタイン、そしてヨハネス&アルベルトの生き様からはっきりとわかるように、ドイツは堅苦しさや時間を守る几帳面さ、精密なエンジニアリングのみならず、愉しいどんちゃん騒ぎでも評価されるべきだ。事実、ホイジンガがいう「ホモ・ルーデンス」をドイツ語に訳せば「spielen mann」(遊ぶ人)になるのだから。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 12
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