THE LIFE TEUTONIC
ゲルマンの遊び人たち
February 2018
結婚式当日のプリンセス・イーラ・フォン・フュルシュテンベルグとプリンス・アルフォンソ(1955年)
もっとも、その潤沢な富だけで、華麗なプレイボーイぶりを発揮できたわけではない。ザックスには生へのあくなき欲望があった。これを失うことを恐れた彼は、2011年5月、スイスのグシュタードにあるヴィラで自ら命を絶ったほどだ。
ギュンター・ザックスの人生を語るのに“充実していた”という表現では控えめすぎる。ブリジット・バルドーはもとより、イランのソラヤー・エスファンディヤーリー元王妃や、アリストテレス・オナシスの元妻ティナとも浮名を流した。
富裕な快楽主義者の中でもとびきりリッチで、戦後に一世を風靡したゲルマンの遊び人は彼だけではない。同じくドイツ人のプリンス・アルフォンソ(Issue11,P156参照)も大物のひとりだ。
24エーカーの荒地をリゾートに アルフォンソの父方はヴュルテンベルクの王族で、母方の曽祖父はメキシコで財を成したバスクの冒険家だった。だが彼の実家の富は、莫大な資産を置いていたドイツやチェコスロバキアの裏側に引かれた鉄のカーテンやメキシコ革命のせいで目減りしてしまったのだ。一家の富を補充するための物件探しを任されていたアルフォンソは、1947年にスペインのアンダルシア地方の、のどかな海辺の美しさに魅せられる。そこで彼は、いくつかのワインセラーを売って資金をつくり、フィロキセラに冒された広大なブドウ畑を15万ペセタで購入したのである。