THE LIFE TEUTONIC
ゲルマンの遊び人たち
February 2018
面白いことに数多くの遊び人はドイツの血を引いている。彼らの共通点、そして生き様とは。
ジェットセット時代を象徴するブリジット・バルドーとギュンター・ザックス(1960年代頃)
「人間生来の遊ぶ力は、規律や野心、そして常識といった単調な日々の要件とのバランスを取るために欠かせない」
オランダの文化史家ヨハン・ホイジンガは、1938年に出版した著作『ホモ・ルーデンス』にこう記している。これは哲学の規範に挑んだ人間味あふれる著作であるが、歴史上で最も典型的なプレイボーイのひとりであるギュンター・ザックスのほうが、ホイジンガよりも禁欲的な生活を送っていたといえるかもしれない。
ホイジンガの研究(に加えて数学や経済学、言語学、占星術、アート、写真、そして専門分野である最強の快楽主義)を学んだザックスは、究極の「ホモ・ルーデンス」(=遊ぶヒト)を自認していたが、これには異論もあった。なんといっても、ブリジット・バルドー(ふたり目の妻)に出会うとすぐ、サントロペにある彼女のビーチハウスにヘリコプターから赤い花びらを降らせ、自分もヘリから海に飛び込んで、自分が来たぞと知らせるような男である。これほど大胆な口説き方に比べれば、後にペットとしてチーターを買い与えたことなんてかわいいものだ。
とびきりリッチな快楽主義者 こうしたロマンティックないたずらはもちろん、ヨットや飛行機、サントロペのヴィラ、シャンパンのマグナムボトル、そして、モンテカルロのカジノで悪友のポルフィリオ・ルビロサやプリンス・アリ・カーンと繰り広げるどんちゃん騒ぎに費やせるだけの金がザックスにあったのは、母方の曽祖父がアダム・オペル(オペルの創業者)、父親がウィリー・ザックス(大手自動車部品メーカーの経営者)という富豪一族の出であったからだ。