STATELY STYLE
「英国的」とは何か？
July 2016
「紳士」という言葉が最も似合う国。それは間違いなく英国である。
英国紳士。彼らは世界中の男たちの模範たるべき存在だ。
それではなぜ、彼らが紳士の真髄を極めるのか、その極意に迫ってみた。
祖父リッチモンド公爵9世の遺品1936年製のレーシングカーに乗り込んだマーチ卿（奥）とハケット氏（手前）。英国紳士の奥義を知る、生粋のジェントルマンふたり。男子一生をかけたモータースポーツへの愛情を通して、英国紳士の悦楽と本懐について存分に語る。
広大な敷地は、まるで一つの国のよう モーターサーキットに競馬場、それにゴルフコースと狩猟場があり、飛行場もある。
英国紳士が溺愛するスポーツとホビーの最高峰が生息する7キロ四方の広大な私有地。
それは公爵家に脈々と受け継がれる紳士のDNAが創造した夢の王国だ。
「8歳のとき、初めて自分の自転車を買ってもらいました。本当に嬉しかった。これでどこにでも行けると思いました。一日中、その自転車で走り回り、自分で修理して、ペンキも塗り直しました。16歳の時、初めての車を手に入れた時も同じように嬉しかった。1934年製のモーガンでした。それ以来、ずっと車が好きで仕方がありません」
英国男子として、いつから車が好きになったのですかと尋ねると、マーチ卿は目を細めて、その自転車やモーガンが目の前にあるような表情になってそう話した。そしてさらにこう続けた。
「6月の英国は本当に美しい。輝くような緑が溢れて、この世の楽園のような風景になる。その中を速い車で走る。すると、自分が周りの風景と自然の中に溶け込むような感覚を味わうのです」
大自然との一体感。英国男がスポーツカーにのめり込むのはそんな悦楽があるからなのだ。
Charles Gordon – Lennox ／ チャールズ・ゴードン=レノックス（左）1955年、第10代リッチモンド公爵の嫡男として誕生。次期11代公爵。グッドウッドの所有者。所有地内でG1競馬、『フェスティバル・オブ・スピード』等の大イベントを主催するスーパー・プロデューサー。また17歳でプロのフォトグラファーとしてデビューし、写真家としても著名。英知溢れる由緒正しい英国の大貴族。
Jeremy Hackett ／ ジェレミー・ハケット（右）1953年生まれ。ブランド『ハケット ロンドン』の創業者・デザイナーで、現会長。英国で“ミスター・クラシック”の愛称で親しまれるブリティッシュ・トラッドの権威。マーチ卿は創業時以来の古い顧客で親友。速くてエレガントな車を愛する生粋の英国男子。
10歳の時から写真を始め、17歳でフォトグラファーとしてデビュー。これは写真家としてキャリア42年を数えるマーチ卿自身が撮影した自宅風景写真。７キロ四方の広大なリッチモンド公爵家の領地の様子が伝わってくる写真。
PHOTO: Goodwood Collection
イングランド王だったチャールズ２世の庶子として誕生したチャールズ・レノックスが1675年に3歳で初代リッチモンド公となって以来、340年続く英国の名門貴族の家には、先祖代々の肖像画や競馬や猟りをモチーフにした国宝級の名画がさり気なくディスプレイされる。その前で英国人らしくティーを楽しみながら語り合うマーチ卿とハケット氏。
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