SHACKLES OFF

VBCの新しい色、
モロッカンブルーを仕立てる

October 2022

text tom chamberlin
photography kim lang

手作業でハ刺しされた毛芯はビスポークならでは。

 生地はヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VBC)が、パントン社とコラボしたフランネル地だ。パントン社は色見本帳を提供する世界的な会社で、さまざまな製品の色はここのカラーサンプルによって決められることが多い。これは“PANTONE 19-4241 モロッカンブルー”と呼ばれる色である。大胆でエキゾチックな色彩だが、息をのむような美しさを感じさせる。自然光のもとでは控えめに見えるが、室内ではインパクトのある色となる。手触りはとても滑らかだ。上等のニットのようにソフトで“ヘアリー”である。こんな“フリスキー”な色の生地をうまく扱えるのは、ロレンツォ以外にいないと思ったのだ。

 しかしながら、ロレンツォと最後にスーツを作ったのは、私の結婚式用の衣装をお願いした2016年であったので、もう一度メジャーリングをする必要があった。古い型紙は修正が必要だった。

 デザインは実用性とシャープさを兼ね備え、伝統的なテーラリングの技術とルエットを踏襲することにした。私は幸いなことに背が高く、若い頃からボート競技をやらされていたので肩幅が広い。それがロレンツォの作風とよく合っている。そこで彼のシグネチャーである6×1のダブルブレステッド・ジャケットを選んだ。胸元のボタンは、美しく繊細なダークブルーのマザーオブパールボタンを選んだ。

 ラペルは三日月刀のようにシェイプされている。さらにカジュアルでスポーティな印象を与えるハーフベルトと、ピンチプリーツを加えた。このプリーツが重要なのは、ふたつの理由による。ひとつ目は、腰回りのシルエットを強調し、ジャケットのシルエットをシャープにして、そして後ろから見たときにミリタリー的な風合いを持たせるためだ。そしてふたつ目は、追加したフロント・ポケットをオフセットさせるためである。

1回目の仮縫いで、袖丈などを調整している。

2回目の仮縫いでポケットやボタン位置をチェックしているところ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 47
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