January 2023

SCABAL “SAVILE ROW” 英国サヴィル・ロウのショップ50周年記念バンチ

SCABALの新作“SAVILE ROW”はRAKISHな個性派揃い

名門生地マーチャントのスキャバルが英国のサヴィル・ロウにショップを構えて50周年。それを記念して誕生した新作生地バンチ「サヴィル・ロウ」には、アーカイブを再編集したスキャバルらしさ溢れる50の生地が揃っている。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

スキャバルならではの個性派が50種揃うサヴィル・ロウ店のオープン50周年を記念して企画された新作バンチの「サヴィル・ロウ」には、全50種の生地がラインナップされている。無地はグレイやネイビーの奥行きあるバリエーションだけでなく、深みのあるトーンのカラーバリエーションも揃えている。柄ものは、織りに変化のついたシャドーウィーヴ系が揃っていて、このあたりは他の生地メーカーではなかなかない、スキャバルならではのものだ。ナチュラルで上品な光沢を湛えている。

 ベルギーのブリュッセルで1938年に創業し、今も同地に本社を構える名門生地マーチャントのスキャバルがロンドンのサヴィル・ロウ ストリートにショップを構えたのは1972年のこと。この度、スキャバルはサヴィル・ロウ店のオープン50周年を記念し、生地コレクション「サヴィル・ロウ」を発表した。過去50年の間に発売された膨大なアーカイブコレクションの中から選りすぐりの生地を再編集した50点の生地が収められたバンチブックは、トータルで見ると極めてスキャバルらしさに満ちた内容となっている。

 いずれも英国生地産業の聖地であるハダースフィールドで織り上げられた伝統的な経緯双糸の生地で、すべてスーパー100’sウールを使用した、目付け320g/mのものである。ネイビーやグレイの無地のバリエーションはもちろん、グレンチェックやペンシルストライプといった王道の柄をしっかり収めているほか、立体感豊かなシャドーウィーヴやヒネリの効いたさまざまなヘリンボーン、ファンシーな柄など、スキャバルならではの個性派もラインナップされている。無地に関しては深みのあるグリーンやバーガンディ、ブラウンなどのカラーパレットも揃っており、こちらもなかなかの個性を放っている。

 古きよき英国生地にあった魅力を引き出すことにこだわった同コレクションは、伝統的なフィニッシング工程も蘇らせた。ハダースフィールドの質の高い水と天然の液剤にこだわった洗浄工程によって生地に自然な膨らみを与えているほか、今ではハダースフィールドでもほとんど見られなくなってしまった伝統のペーパープレス仕上げによって、滑らかなタッチと自然で上品な光沢を生んでいる。

 スキャバルは、スーパー200’sなどの凄まじいラグジュアリーファブリックを揃えていることでも知られている。アニヴァーサリーファブリックゆえ、そういったド級の生地を登場させるかと思いきや、スーパー100’sを出してくるところがいい。ただし、ただのスーパー100’sではなく、それは明らかにワンランク上のものである。生地のプロやオーダーを愛する人たちが、見て触って納得する上質さ、しなやかさの中にも芯と膨らみ、自然で上品な光沢をしっかり備え、古きよき時代の英国生地にあった気高さを感じさせる。仕立て映えがし、耐久性の高さも備え、着るほどに育っていきそうなところもいい。

 極上のトリュフは毎日食べると飽きてしまうが、「サヴィル・ロウ」は腕のいい料理人が丁寧に作った至高の定食のようなものだ。派手さはないけれど真っ直ぐなおいしさで、毎日でも幸せに食べられる、そんな服に仕立てられる生地である。ぜひいちど触れてみてほしい。

左上:1991年。右上・左下:1972年、オープン当時。右下:2003年。50年の長きにわたって、仕立て服の聖地でいかにスキャバルが愛されてきたのがわかる。

スキャバル サヴィル・ロウ店のオープン50周年記念バンチは、スーパー100’sウールの経緯双糸による320g/mの英国生地。過去50年のアーカイブを再編集して企画された50点の生地が収められている。ネームタグもスペシャル仕様。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 49
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