RED TARTAN by JEREMY HACKETT & VITALE BARBERIS CANONICO

ハケット氏、タータンの着こなしを考える

July 2022

text yoshimi hasegawa
photography nick tydeman

エリザベス女王2世の戴冠70周年を記念して行われた、バッキンガム宮殿のパレードをバックに。スコティッシュタータンのチョージャケット、ネイビーのトラウザーズに、赤のホーズがアクセントだ。

 そもそもこのスコティッシュタータンプロジェクトはバーンズナイトから始まった。バーンズナイトとはスコットランドを代表する詩人、ロバート・バーンズの生誕を祝う日で、英国では通常1月25日に祝賀会が催される。

「バーンズナイトのディナーに招待されて、ディナージャケットに合わせるトラウザーズ用のスコティッシュタータンを探していたとき、このヴィターレ・バルべリス・カノニコ(以下、VBC)製タータンのフランネルが目に止まった。紳士的にグリーンのブラックウォッチ柄を着るのは容易だが、それではありきたりだと思った。本来、黒という色は紳士の着こなしには難しい。私が持っている黒の衣類はディナージャケットとモーニングコートしかない。だから今回はあえてディナージャケットに赤のスチュアート柄を合わせたいと思ったんだ。通常のレッドタータンだと柄がはっきりし過ぎてタータンだけが浮いてしまう。このVBCのタータンは奥行きのある自然な色合い、古来のタータンの色合いをしている。私の探している理想にぴったりだった。今まで赤のタータンを着たことはなかったが、他にも試してみたくなり、トラウザーズに加え、ドレッシングガウンとチョージャケットもJ.P.ハケットのビスポークで作った。私を知っている読者ならご存じのように、フランネルは私が特に気に入っている素材のひとつ。このフランネルはしなやかで美しいし、着ていて快適だ。結果は素晴らしいものとなったよ!」

 果たして、バーンズナイトの祝賀ディナーではディナージャケットとともにトラウザーズを着用。ハケット氏初のスコティッシュタータンはその夜の大きな話題となった。

「今は誰もがシリアスになり過ぎている。ディナージャケットはしばしば堅苦しくなりがちだが、タータンはフォーマルにユーモアを与えてくれる。英国紳士の装いにイングリッシュユーモアは欠かせないものだよ。そう思わないか?」

ドレスダウンした装いに合わせた1963年製ロレックス・エクスプローラー。左のレザーバッグはアンティークマーケットで刻印されたイニシャルが気に入って購入したもの。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 45
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