PECORA GINZA SATO’s CHOICE
ペコラ佐藤の30年やってわかった
いい生地BEST 10
December 2021
※生地の順番は順不同。
Hideaki Sato / 佐藤英明1967年、千葉県生まれ。代々続く仕立て屋家系の3代目。1988年渡仏、裁断学校AICPを卒業。その後イタリア・ミラノへ渡り、名サルト、マリオ・ペコラ氏のもとで5年間修業する。1995年に帰国後、家業を継ぎ、2000年にペコラ銀座を開店。本場の仕立て技術を日本に持ち込んだパイオニア的存在である。
今でこそ、英国やイタリアで修業した日本人テーラーはたくさんいるが、佐藤英明氏が初めて渡欧した33年前は、そんなことをしている者は誰もいなかった。
「帰国したときは、一刻も早くイタリアへ戻りたかった。当時の日本では、シワひとつない背広がよしとされていて、自分がやってきたイタリア風の柔らかく立体的な服は、受け入れられない様子でした。テーラー業で食べていけるなんて、夢にも思っていませんでした」
しかしながら、1995年に帰国すると、彼の作る服は雑誌で“本場モノ”として紹介され、クラシコ・イタリアのブームとも相まって、新しい時代のテーラーを牽引する、パイオニア的存在になっていったのはご存じの通りだ。
以来四半世紀以上が経ち、何千着もの服を仕立ててきた。ヴィンテージ生地のストックも数百枚は下らない。佐藤氏は、ありとあらゆる生地を見てきたのだ。
「生地の世界の流行は、とてもゆっくりとしています。5年くらいのスパンで変わり、10〜15年も経つと、以前なら当たり前にあったものが、いつの間にかなくなっていたりするのです。しかしそうなると、また古い生地が懐かしくなる。難しいのは、むやみに新しいものがいいわけではないところです。例えば、製糸の技術は常に進歩していて、特に細番手やカシミアでの変化は著しく、昔の細番手より今の細番手のほうが、格段に作りやすく、シワにもなりにくいのですが、では最新の生地がベストかといえば、実は昔の生地が持っていた、柔らかくソフトな感じが失われていたりするのです」
そんな佐藤氏に、膨大な生地に触れてきたキャリアの中で、ベスト・オブ・ベストともいえる生地を選んでいただいた(ヴィンテージ、1点ものは除く)。
日本のクラシックシーンをリードしてきた男が選んだ、集大成ともいえるセレクションを御覧頂きたい。