February 2023

LIVERANO & LIVERANO and Yukio Akamine

赤峰幸生がLIVERANO & LIVERANO 大阪で語る「私が40年間惚れ続けている理由」

アントニオ・リヴェラーノ氏とは40年近い仲になる赤峰幸生氏がリヴェラーノ & リヴェラーノ 大阪を訪問し、その魅力を大いに語った。
text & photography yuko fujita
still photography jun udagawa
styling akihiro shikata

横川誠人氏(左)LIVERANO & LIVERANO 大阪 代表取締役社長。中部地区最大のパテック フィリップフロアを誇るパテック フィリップ正規販売店、ビジュピコ名古屋本店の取締役。2022年3月にオープンしたリヴェラーノ & リヴェラーノ 大阪の代表取締役も務める。両者が共通するのは時を超えた美しさだと語る。

赤峰幸生氏(右)インコントロ代表。1944年、東京都生まれ。90年、自身の会社インコントロを設立。98年、イタリア生産による紳士服ブランド「Y. Akamine」をスタート。2008年、カスタムクロージングのブランド「Akamine Royal Line」を立ち上げる。アントニオ・リヴェラーノ氏から最も慕われている日本人。

“Ciao Antonio, come stai? Scusa se ti ho chiamato così presto la mattina…(チャオ、アントニオ。元気? 朝早くに電話しちゃってすまないね)”

 2022年3月にオープンしたリヴェラーノ & リヴェラーノ 大阪を初訪問した赤峰幸生氏は、アントニオ・リヴェラーノに携帯電話をかけ、楽しそうに話し始めた。アントニオの声はこちらには聞こえなかったものの、赤峰氏が話す内容から察するに、かなりの仲のよさだ。氏こそ、アントニオの最大の理解者であり、最も信頼されている人物である。

赤峰 初めてアントニオの工房を訪ねたのは今から37、38年前かな。そのとき、なぜイタリアに興味があるのかとアントニオに訊かれたのをよく覚えています。当時の私はイタリアの服よりもイギリスの服を着ることのほうが多かったんです。イタリアに興味があったのは文化や歴史についてでした。20歳くらいからイタリアの映画が好きでしたので、ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』の話から始まって、フェデリコ・フェリーニ、バルジェッロ美術館の彫刻の話や、1950~60年代のポップス、特にジェノヴァ派やナポリ派のカンタウトーレ(作詞・作曲家)の話でずいぶんと盛り上がりました。そのときは服の話はまったくしなかったのですが、当時は兄のルイージも存命で、ふたりとも私のことにとても興味をもってくれたみたいで、アントニオとはそこからの付き合いになります。そのときは服は作りませんでしたが、2回目に訪ねたときに仕立てたのが今日着ている服です。

カシミアのタートルネックニットも多色展開。色を積極的に楽しむのがリヴェラーノ流だ。

リヴェラーノのタイは配色や柄のデザインが独特で、赤峰氏もいつも絶賛している。

横川 本当に長いお付き合いなんですね。そして、そのときの服を今こうして着てらっしゃることが本当に素晴らしいです。私どもが扱っているパテック フィリップもそうですが、本物は時を経ても輝きを失うことがありません。

赤峰 おっしゃる通りです。これまでアントニオの服を毎シーズン仕立ててきたわけですが、新旧関係なく、どれも今もずっと愛用し続けています。そして、それぞれの服に思い出が詰まっています。

横川 アントニオさんにとって、赤峰先生はリヴェラーノの服が最も似合う男性像のおひとりなんでしょうね。

1987年1月。このときはフォックス ブラザーズのフランネルにてオーダー。

アントニオ・リヴェラーノ氏。85歳にして今もフィレンツェの工房で毎日働き、弟子たちに指導している。Vゾーンの色使いが華やかなのも、今日の氏のスタイル。

赤峰 フィレンツェの店には富裕層を含めて世界中の人が訪れますが、これ見よがしな人をアントニオはあまり好まないですよね。このクルマに乗って、あの時計をして、どこそこでビスポークした靴で、といった感じで心の中で着手が自分の身に着けているものを見せようと思ったとき、一気に格が下がってしまいます。真のジェントルマンはアンダーステートメントで、そういうのをひけらかさないですよね。

横川 おっしゃる通りだと思います。パテック フィリップを見に来られるお客様には、これ見よがしな方がいらっしゃらないんですよね。ごく自然体で時計を身に着けられていて、それがその人に当たり前のように溶け込んでいるんです。自己顕示をする必要のない方が、本当にいいものとして愛用されているんですよね。そういったお客様にリヴェラーノ & リヴェラーノのお話をするとご存じない方も多くて、でもとても興味をもっていただけて、家に帰って調べたらリヴェラーノって素敵だね、言っていただけてお求めいただけることが多々あります。自分を見せるための道具ではなく、本当に素敵な服だから取り入れる。自分の人生を豊かにするっていう考え方ですよね。

左:赤峰氏が最も好むミディアムグレイの装い「目付けのしっかりしたグレイのピンヘッドは、オーセンティックでありながらアントニオらしく他とはちょっと異なるニュアンスがあります。ブルーシャツを合わせたオーセンティックな着こなしに、サテンのペイズリータイがスパイスを効かせてくれます」。スーツ¥572,000、シャツ¥66,000、タイ¥31,900 all by Liverano & Liverano チーフ property of stylist

右:休日の合わせには、コーデュロイ×タートルネックニット「アントニオもよくスーツにタートルネックニットを合わせていますが、ブラウンのコーデュロイと白のカシミアの組み合わせはとても相性がいいですね。上品でリラックス感があって、休日の格好にも最適です。シルクプリントチーフでアクセントをつけます」。スーツ¥517,000、タートルネックニット¥102,300、チーフ¥17,600 all by Liverano & Liverano

赤峰 せっかくいい服を着ているのに服が自分に馴染んでいない人って結構多いんです。どこそこの服を着ているという意識があるうちはダメですよね。でも、フィレンツェのリヴェラーノの店に20年、30年と通い続けているお客様には素敵な方たちがたくさんいます。見た目は本当にフツウですよ。でも、自然に服を着ている感じがとてもカッコいい。リヴェラーノ & リヴェラーノが日々の生活の中において自分の一部と化しているんですよね。

横川 パテック フィリップのお客様も、目立ちたくない方って多いんです。言い換えれば自分を目立たせる必要のない方に愛されているように思います。その控えめで自然な感じがとても素敵であるということを伝えていくことが私たちの使命だと思っています。

赤峰 今日はこのスーツを着たいというところから入っていく日もあれば、今日はこのネクタイを締めたい、このコートを着たい、だからどれを合わせようかなという感じで服選びをする日もあるわけです。そういったお客様に、お店のスタッフが積んできた経験からお客様に合わせてさまざまな提案をしてあげられる、そのためにこのお店はあるわけです。

横川 そうですね、お店にいらしていただいたお客様にリヴェラーノの魅力を知っていただき、リヴェラーノ & リヴェラーノを未来へと繋げていく、先生がおっしゃるようにアントニオさんの世界、彼が考える文化を伝えていくことが我々の大事な役割だと思っています。

左:トスカーナの田園風景を思わせる美しいグリーン「リヴェラーノ & リヴェラーノはアントニオ自身が色を楽しむタイプなので、このような深みのあるグリーン系コーディネイトも楽しめます。ドレスシャツは他にはない柄が揃っていて、一見の価値ありです」。ウールカーディガン¥53,800、シャツ¥96,800、コーデュロイトラウザーズ¥82,500、シルクストール¥68,200 all by Liverano & Liverano

右:フィレンツェの街並みに溶け込むブラウンジャケット「ジャケット&トラウザーズの組み合わせは、温かみのあるブラウンとミディアムグレイのトーンがきれいにまとまっていて好きですね。この上からストールを巻くのもアントニオらしい装いです」。ジャケット¥528,000、シャツ¥66,000、タイ¥29,700、ウールトラウザーズ¥96,800 all by Liverano & Liverano チーフ propertyof stylist

LIVERANO & LIVERANO OSAKA大阪府大阪市中央区北浜3-2-4
TEL. 06-6222-3000
営業時間:11時~20時(定休日:水曜・木曜)
https://liverano.jp

本記事は2022年11月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 49

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