July 2020

一生愛せる、ニッポンの職人が作る服 Vol.03

レスレストンの
“ビスポーク シャツ”

今や、世界一美しい手仕事とも称されている日本の職人たちであるが、
彼らの作品の中でも、まさに“一生もの”といわれているマスターピースを紹介する。


美しい。あくなきこだわりが生む端正な仕立てが、どこまでも美しい。
世界最高品質といっても過言ではない素晴らしいシャツが、日本にもある。
text yuko fujita
photography jun udagawa
styling akihiro shikata

底なしの探求心、どこまでも高い美意識と技術、芸術的に美しい縫製が生んだ究極ともいえる1枚。ビスポークは¥45,000~で、納期は3カ月~(パターンオーダー¥34,000~もあり)。カルロリーヴァの180双のローンによる写真のビスポークは¥71,000 Les Leston

 世界を見渡しても、ここまで美しいシャツにはそうは出合えまい。久木元 亨氏が手がけるレスレストンのシャツは、洗練を極めている。研究を重ね尽くして生み出されたパターンとディテール処理の美しさ、ミシンステッチを芸術的に走らせる素晴らしい技術には、思わず溜め息が出るほどだ。

イタリアを凌駕する美しい襟のロール地襟を正バイアスにすることによって縦方向と横方向のクセと余りを取っているため、襟の返りがよくなって美しいロールが生まれる。襟はシャツの顔なのだ。

 各ディテールにさまざまな技が隠されている。身頃脇と袖脇、袖付けは手折り&手伏せで本縫い。アタッチメントは使用せず、パッカリングを極限まで減らしている。袖の肘にもなだらかなカープをつけて運動量を設けているのだが、見た目に響かないよう美しいラインを意識している。

首後ろの中心から鎌底ラインの間に独自のパターンで縦横にゆとりをもたせ、そのぶんをヨーク付けのいせ込みで処理。動きに対しストレスがかからない。

 正バイアスにしてクセ取りし生み出された襟の返り、中縫いから返しているステッチなしのコンストラクションヨークなどなど、細部を細かく見ていくと、氏の工夫は枚挙に暇がない。外注は一切なし。縫製は40年以上のキャリアを誇る自社の職人がひとりで担当している。

身頃脇の手伏せ本縫いだけでなくカーブのきつい裾の三つ巻きもさらに細く手折りして縫っている。かなり芸術的な美しさだ。

Toru Kukimoto / 久木元 亨1955年生まれ。ジバンシィのシャツアトリエを経て、1986年にレスレストンを設立。精緻で美しい縫製は自社の職人の丸縫い。

レスレストン
大阪市北区中之島3-3-23 中之島ダイビル1F
TEL.06-6448-8330
www.lesleston.jp

本記事は2018年5月24日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22

Contents

<本連載の過去記事は以下より>

サルトリア チッチオの “マニカ フォルケッタ”

サルトリア シルヴァノ の “カッポット ミリターレ”

サルトリア カブート の “ツイード ジャケット”

ペコラ 銀座の “カシミア ハンティング ジャケット”