November 2023

Exclusive Interview: DAVID HARBOUR

遅咲きの実力派 俳優: デヴィッド・ハーバー

ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』で大スターになったデヴィッド・ハーバー。40歳を超えてからブレイクを果たした遅咲きの彼が、演技の原点、そしてアーティストとして伝えるべき共感について語る。
text tom chamberlin
photography mary ellen matthews
styling michael fisher

ジャケット、シャツ、タイall by Edward Sexton
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David Harbour / デヴィッド・ハーバー1975年、ニューヨーク州生まれ。ダートマス大学で演技を学んだ後、ブロードウェイなど舞台俳優としてキャリアをスタート。トニー賞にノミネートされるほどの演技力が評価され、テレビや映画へと活動の幅を広げるが、脇役ばかりで挫折を味わう。2016年のNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のジム・ホッパー署長役でブレイク。身長は190cm。

 映画『グランツーリスモ』(日本公開は2023年9月15日)のマスコミ取材が行われたのは、ロンドンのコリンシアホテル。主演のデヴィッド・ハーバーは、前日ニューヨークから夜便で到着。ウェストエンドで上演された妻リリー・アレン出演作の観劇には間に合ったものの、そこからロンドンの滞在時間はわずか48時間。時差ぼけも抜けないまま、オーストラリアへ向かう予定だった。これには同情を禁じ得なかった。

 ハーバーの役者としての成功は、とても「一夜にして」などとすることはできない。陰で努力を続けたにもかかわらず、鳴かず飛ばずの時期が長く続いた。だが、2016年に主演したテレビドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』が大ヒット。社会現象となり、ハーバーも一躍スターとなったのだ。

表現したいという欲求 ハーバーの“演じたい”という衝動の源は故郷にある。幼少期を過ごしたのは、ニューヨーク州ウェストチェスター郡の外れにあるホワイトプレーンズ。町並みは寂しく、隣近所も離れている。子供たちは森を探索したり、いたずらを始めたり、一日中空想を巡らせたりしていた。

「外から見れば素晴らしい場所だろうけど、中にいると寂しく暗く異様な感じ。それを演劇で表現したいと思ったんだ。人が見たいのはそういう部分だろうと」

 自分を表現したいという欲求は、さらなる学びへとつながる。彼はニューハンプシャー州のダートマス大学に進み、演劇の学位を取得。しかし、演劇を学問として学んだところで、腹の底から本能的に湧いてくる欲求は消えなかった。

スーツ ¥672,100、シャツ ¥104,500 both by Brunello Cucinelli
チーフ Edward Sexton
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「自分の演技の原点は、型にはまった表現への怒り。恵まれた環境に育ったとは思うけれど、周りで起きている暗い側面に対する怒りや不満があった。この感情は、破壊的な行動とクリエイティブな活動につながった。自分を異端者と感じたときに、自己破壊と舞台での表現が欲求となったんだ。はじめのうちは何か暗いテーマを表現したいというものだった」

 ハーバーにとっては、舞台に立つこと自体が一種のセラピーであるという。だから彼のキャリアは舞台で始まり、初期の多くをブロードウェイで過ごした。だが、ニューヨークに暮らす期間はそれほど長くなかった。『ロー&オーダー』シリーズや『PANAM/パンナム』(2011年)などのテレビドラマや、『宇宙戦争』(2005年)、『007 慰めの報酬』(2008年)といった映画に出演し始めたからだ。

 2012年には、アーロン・ソーキン企画・脚本のテレビドラマ『ニュースルーム』に、アンカーマンのエリオット・ハーシュ役で出演した。多くの俳優ならソーキン作品から外されまいと感情に蓋をするだろう。ソーキンはセリフのテンポのよさが特徴の作風で知られており、それを乱す者にはとにかく厳しい。脚本に「was not」とあるのに、役者が「wasn’t」と言ったら、大騒動になりかねない。多くを感覚に頼るハーバーにとって、どんな現場だったのだろうか。

「大変だったよ(笑)。自分はアメリカ式演技の原点は、型にはまった表現への怒りの演技メソッドにどっぷり浸かっている。型にはまらず即興で演じるうち、芝居の核を見つけて固めていくやり方だ。でも(ソーキンの現場には)そんな余地は皆無だった。プロセスが違うんだよ」

本記事は2023年11月25日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 55

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