Dressing for a New Era 03

THE RAKEが注目するファッショニスタたち vol.3

April 2021

4. 沖 哲也
Clothing Designディレクター
ムードは90年代のパリ
シンプルな中に大人の色気を秘める

text & photography yuko fujita

Tetsuya Oki1972年生まれ。文化服装学院を卒業後、ニットの会社を経て1996 ~ 2006年までバセット ウォーカーにてクラシコイタリアの中心ショップのスタッフとして一時代を築く。2016年よりバッグブランド、アカーテのクリエイティブ ディレクター。昨年よりクロージングデザインのディレクターとして、レディースのデザインを始動。2017年より葉山在住。

シンプルで長年愛用している定番ものばかりなのに、“今”を感じるのは、そこに沖氏の“洗練”という選択基準があるから。モンクレールの25年ものの「パリス」に、オラツィオ ルチアーノのフランネルスーツ、ジョン スメドレーの黒のタートルネックニットでまとめたモノトーンスタイルに、差し色使いのパープルのカシミアシルクストールが映える。

 沖 哲也氏とは知り合ってから20年以上になるが、「今、これが気分なんだよね」と熱く語る感じはアットリーニやアンナ マトゥオッツォを熱く語っていた当時からまったく変わっていなくて、むしろ視点というか感覚はますます冴えわたってきて、ハッとさせられっぱなし。大人の装いをきちんと守りながら(ここ大切!)いい感じに力の抜けた感じを出しているあたりはサスガの領域で、今の時代のドレス感をすごく的確に捉えている人だと思っている。

「今は1990年代から2000年代のパリの人たちのスノッブな感じのスタイリングがすごく気になっています。イタリア人ともイギリス人とも違う大人のエスプリが利いた感じ。大人が若者の服を着るのではなくて、大人は大人の服を着てこそ若者には出せないカッコよさが生まれると思うんです。気分はモノトーンなんですけど、グレイにパープルとか黒にパープルとか、パープルの差し色が、自分なりのパリのイメージであり今の気分なんですよね」

 今の感じをスタイリングで出していながら、25年着ているモンクレールのダウン「パリス」を筆頭に、どれも長年着ているものばかりなのも面白い。

「服を購入する際は、10年着られるものかどうかという視点でいつも熟考するんです。オーセンティックなものが好きなので、昔から変わらずあるものになってしまうのですが、その中でも洗練されたものを選ぶようにしています。そうして選んだものを、その時代、その時代で使い回している感じかな」

沖氏の注目&愛用アイテム

ブレスレットはエルメスのシェーヌ・ダンクル、BJクラシックコレクションのサングラスは「jazz」の復刻。アセテートの黒の素材の質感がお気に入りだそう。アカーテで作ったクロコダイルのカードケースは「リセ」という加工が施されている。クロコダイルを水に浸して木に打ちつけて乾かして、そうすると斑が立ってきて、最後にメノウ石で磨くとこれだけ艶がでるという。

クロケット&ジョーンズの黒スエードのチャッカブーツと、サンプルで作った黒のコットンウールホーズ。ホーズは通常のより肉感があってフランネルにも負けない素材感であるところがお気に入り。

チューダーのミニサブは10代の頃から愛用している。

本記事は2021年1月25日発売号にて掲載されたものです。
価格等が変更になっている場合がございます。あらかじめご了承ください。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 38

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