CELLULOID STYLE "PHANTOM THREAD"

ファッション業界でも話題!
“ファントム・スレッド”のスタイル

June 2018

text anna prendergast photography ©2017 Phantom Thread, LLC All Rights Reserved

2度目のタッグとなるポール・トーマス・アンダーソン監督と打ち合わせする様子。

「当店ではラグラン袖のコートに仕立てることはあまりないんですが、彼がお父様の写真を持参して、このスタイルが好きだと話してくれたんです」

 おそらくデイ=ルイスは、スーツの上に着るならば、ラグランコートこそが理想的だとわかっていたのだろう。肩に縫い目がなく、ゆったり垂れる形状のおかげでスーツの縫い目を乱さず、シワになる心配もない。こうしたディテールは確かに、こだわりの強いクチュリエくらいしか気づきそうにないものである。さらにクローフォード氏は明かす。

「スクリーンには映りませんが、裏地にきちんと名前の刺繍を施しているんです。これは私たちのビスポークオーダーでは必ず行っていることですが、今回は特例として、片側に“ダニエル・デイ=ルイス”、反対側に“レイノルズ・ウッドコック”とお入れしました」。ビスポークならではのこまやかさを存分に感じさせるこのようなエピソードからも、本作の衣装に向けられた強いこだわりが伝わってくる。

衣装デザインを担当した、マーク・ブリッジスによるスケッチ画。ブリッジスは登場人物ごとに何点もスケッチを描き、全部で50点もの衣装を制作した。このスケッチ画からは、左ページ写真の衣装が生み出されている。レイノルズ・ウッドコックの衣装は、1906 年創業のテーラー、アンダーソン&シェパードが制作。靴はジョージ クレバリーによるものだ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22
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