トッキーのラグジュアリー日記
Tocky's Luxury Escapes

THE RAKE 日本版 編集部員トッキーこと時田が出合った国内外のホテル、ダイニング、バーについて紹介します。

Waldorf Astoria Osaka Opened in April

2025年4月開業「ウォルドーフ・アストリア大阪」へ──アール・デコと大阪が織りなす、新時代のラグジュアリー

Wednesday, June 25th, 2025

世界最高峰のラグジュアリーホテルブランド「ウォルドーフ・アストリア」が日本初進出の地に選んだのは、文化と創造性の熱気あふれるこの街。歴史あるアール・デコのモチーフと大阪の活気が出合い、唯一無二のホテルが誕生しました。130年以上にわたる伝統と革新が、大阪の地で美しく花開きます。

 

 

 

 

 グラングリーン大阪に、注目のホテルが誕生しました。「ウォルドーフ・アストリア大阪」です。2026年には日本橋での開業(他には上海やモロッコ、コスタリカにも。さらにニューヨークの第一号もついに改装完了)も予定している、業界でいま最も注目されているホテルのひとつです。

 

 その歴史は1893年、ウィリアム・ウォルドーフ・アスターがニューヨークに開業した「ウォルドーフ・ホテル」に始まります。その4年後、いとこのジョン・ジェイコブ・アスター四世が隣に「アストリア・ホテル」を建設し、回廊「ピーコック・アレー」で両館をつないだことで、「ウォルドーフ・アストリア」が誕生しました。

 

 ふたつのホテルが合体して誕生したホテル「ウォルドーフ・アストリア」は、その当時、世界で最大のホテルでした。たくさんの政治家や芸術家が訪れ、数々のイベントが開かれるようになり、多くの人の憧れのホテルとなります。館内の回廊「ピーコック・アレー」は、上流階級が行き交う舞台となり、そこに集う紳士淑女の、羽を付けた帽子やステッキを持ち歩く姿が、まるで孔雀が歩いているかのように見えたことから、「ピーコック・アレー(孔雀の小径)」と呼ばれるようになりました。

 

「ウォルドーフ・アストリア」は、数多くの“初”を作ったホテルでもあります。例えば、客室で電気が使えた初のホテルであり、ボールルームを備えた先駆的な存在でもありました。また、ウォルドーフ・サラダやエッグベネディクト、レッドベルベットケーキ、カクテルのロブ・ロイなど、いまではそこかしこで目にするアイコニックな品々の発祥となったホテルでもあります。また、女性一人の旅行客に部屋を提供した初めてのホテルでもありました。

 

 その後1929年に、エンパイアステートビル建設地として譲渡するため、ホテルは一度解体されることに。しかし2年後の1931年には今ホテルが建つ別の場所に再建され、リニューアルを経て今年中に再オープン予定となっています。今では世界で36軒を展開しており、2030年までには65軒までに拡大予定という、現代においても彼らの勢いは衰えません。

 

 

 

 

 今回、「ウォルドーフ・アストリア大阪」の内装を手掛けたのは、世界的デザイナーのアンドレ・フーさんです。ホテル好きの方なら、どこかで耳にされたこともあるのではないでしょうか。アンドレさんは、任された時の思いをこう振り返っていました。

 

「ウォルドーフ・アストリアとの最初の出会いは、10代の頃、初めてニューヨークを訪れた時でした。その当時もやはり荘厳な物凄いホテルで、アール・デコ の素晴らしいデザインが取り入れられていたことがとても印象に残っています。何年もあと、今回のお話をいただいた時、最初に思ったことは『大阪にアール・デコは存在しているのだろうか』ということでした。いくらホテルの代名詞であるとはいえ、本物であるためには、アール・デコをそのまま大阪に押し付けるわけにはいかないと思っていました」

 

 

デザインを手がけたアンドレ・フー氏。©Yutaro Yamaguchi

 

 

 

「実際に訪れてみると、大阪にたくさんアール・デコはありました。府庁や証券取引所などのほか、大阪近郊にはアメリカの建築家フランク・ロイド・ライトが作ったヨドコウ迎賓館があって、本物のアール・デコを保ちながら、日本らしさも加えて作られたものばかりでした。これこそ、ホテルで表現するべきだと確信しました」

 

 また大阪らしさをどのように取り入れたかについては、「京都や東京に比べて、自由で大胆な色使いが印象的だったので、差し色として多彩なトーンを加えました。禅的でもなく、ヒップすぎることもなく、その中間のホテルを目指しました」と教えてくれました。

 

 

 

 

 ホテル中央には、先述した、宿泊者やゲストが必ず通る「ピーコック・アレー」が広がります 。誰もがその圧巻のビューと開放感に驚くでしょう。アンドレさん曰く「高い天井のスペースをいかに生かして、邸宅感を出していくか」を大事にしたとのこと。かつて多くのゲストが待ち合わせの目印にしたという「時計台」 は同ホテルでも健在です。

 

 ここではシグニチャーカクテルの「Osaka Rob Roy」をぜひ。ウイスキー「山崎」 やベルモット、さらにはゆず&紫蘇ビターズを合わせた甘口のカクテルは、食後にもぴったりな一杯です。

 

 なお、日中はペストリーやランチを、午後にはアフタヌーンティーも楽しめます。ビジネスシーンからプライベートまで幅広い機会に大活躍するでしょう。

 

 

 

 

 また、この「ピーコック・アレー」に隣接しているバー「ケーンズ&テイルズ」もTHE RAKE読者の方には特にお勧めしたい一軒です。流れているBGMはジャズで、1920年代のNYの“ジャズ・エイジ” の華やかな雰囲気を再現したクラシックな空間が広がります。

 

 スコット・フィッツジェラルドの『ジャズ・エイジの物語』インスピレーションを得て誕生した11種のシグネチャーカクテルメニュー は、全11編の短編小説を表現した独創的なものばかり。広々としたテラス席も完備しているため、夜風に当たりながら一杯傾けることも最高です。

 

 また客室にも、アンドレさんのこだわりがそこかしこに感じられました。例えば客室の壁やアメニティボックスやアクセサリーボックスにはアール・デコのテキスタイルがあしらわれていたり、ヘッドボードの照明は提灯を思わせる和風であったり、要所 にピーコックブルーと呼ばれる絶妙な緑色が用いられていたり、ベッドサイドのコンセントの位置も考えられた配置になっていたりと、今までありそうでなかったエッセンスばかりでした。

 

 

 

 

 今回はご紹介できませんでしたが、朝食も楽しめるフレンチレストラン「ジョリー ブラッスリー」と寿司と鉄板焼きを楽しめる日本料理「月見」もあります。30階にはウェルネス関連の施設が集まっており、サウナ(ドライ・ミスト)やジャグジーを備えたプールやスパ、フィットネスもあり、禅をテーマにした施術や、ここでしか受けることのできないトリートメントメニューも揃っています。

 

 梅田駅すぐ近くにある、今話題のグラングリーン大阪に位置しているため、大阪万博やUSJ、さらには京都観光の拠点としても理想的なロケーションです。伝統と革新が交差するこの場所で、記憶に残るひとときをぜひ体験してみてはいかがでしょうか。

 

 

ウォルドーフ・アストリア大阪

大阪府大阪市北区大深町5-54(グラングリーン大阪 南館)

TEL.06-7655-7111

www.hilton.com/ja/hotels/osawawa-waldorf-astoria-osaka/

 

 

筆者 トッキー(時田幸奈)/  Yukina Tokida

THE RAKE日本版のシニアエディター兼ウェブディレクター。国内外のラグジュアリーホテル、ダイニング、バーを中心に取材し、誌面およびオンラインで記事の執筆・編集を手がける。「トッキー」は、編集長からのニックネーム。