From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

英国ブランドの王道を歩んできた
諸田佳宏さん

Thursday, July 25th, 2019

諸田佳宏さん

ユナイテッドアローズ メンズ商品部 商品1課

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

 今や業界のイケメンセンサーと化しているフォトグラファーの岡田ナツ子から、「とってもカッコいい人がいるから、ぜひ撮影しましょう!」との連絡を受け、今回取材させていただいたのが、ユナイテッドアローズの諸田佳宏さんです。UAではフォーマルと和装を担当されています。

 

その着こなしは、バリバリのブリティッシュ。それもそのはず、諸田さんはハケット、チェスターバリーなど、英国ブランドの王道を歩まれてきた方なのです。

「ハケット創業者のジェレミー・ハケットとロイド・ジェニングスに、特に影響を受けました。ハケットは英国人が作った英国人のための英国ブランドです。シューズはグリーンやクロケット、ブレイシスはサーストンなど、私の欲しいものが全部揃っていた。ここに入れば、すべて手に入れられると思いました(笑)」

かつて青山三丁目の交差点にあった伝説の名店、ハケット青山店の店長をなさっていたこともあるそう。

「ハケット青山店では、いつもイブニング・テイルコートやモーニングなど、フォーマル一式が取り揃えられていました。あそこまできっちりとやっている店は、他にはありませんでした。その頃のフォーマルウェアは、資料として今も家に保管してあります」

 スーツはユナイテッドアローズがオーダーしている工場へ自ら発注したもの。フルレングスの3Bでスラントポケット、トラウザーズのLポケットなど、正統ブリティッシュの意匠です。

 

ウエストコートは、友人に作ってもらったもの。

「もう30年も着ています。こういったフォーマル用のベストを、日常のスーツに合わせるのが好きなのです」

 

タイはハケット。こういった強めの色柄は英国ならでは。

「もうドット柄だけで、何種類あるのかわかりません(笑)」

 

シャツは、ミラーズ オース。

「ネクタイ着用時はほとんどワイドスプレッドしか身に着けません」

時計はジャガールクルトのメモボックス。某ブランドの別注品です。

「1960~70年代くらいに作られたもので、ずっと欲しかった1本です。何年も探していました。文字盤がネイビーなところが特に気に入っています」

 

左手のリングはカルティエの3連リングをさらに2つ着けしたもの。右手のカレッジリングは、かつてハナエモリ・ビルの地下にあったアンティーク街にて入手したもの。どちらも20代の頃から愛用しています。

 

シューズはエドワード・グリーン。

「靴は基本グリーンしか履かないのです。いろいろな形のものを持っています。エドワード グリーンは自分の足型にも合っていて、ソフトで洗練されているので好んで履いています。もうバカみたいに買いましたね(笑)」

 ファッションのポリシーを伺うと、

「こんな格好は、もう今の時代には合わないのかな、と思うこともあります。しかし、アパレル業界にはもう30年もいるので、今さら現在のものにアジャストするよりも、自分だけのテイストを守って行こうと思っています。今ではどんどんカジュアル化が進んでいますが、きちっとした格好をすると、緊張感が出ていいものです。こういう時代だからこそ、あえて自分に負荷をかけることも必要なのではと思っています」

 

ちなみに諸田さんのブリティッシュ好きは徹底しており、サッカーはマンチェスター・ユナイテッド、愛犬はトイマンチェスター・テリア、クルマも英国車と隙がありません。

 

原宿本店に立たれることも多い諸田さんが嬉しいのは、自分の子供でもおかしくないような年齢のスタッフから、「カッコいいっすね」、「そういう格好がしたい」と言ってもらえることだとか。

 

「最近の若い子は、いろいろなジャンルの洋服を着ます。同一人物とは思えないくらいに上手です。僕らの世代は情報も少なかったし、ひとつのスタイルにどっぷりハマるのが主流でした。でもそうやってジャンルをとことん突き詰めることが、自らのスタイルに繋がるのだとも思います。ファッションとは生き方です。時には自らのスタイルを貫き通し、そうではないものを排除する意志の強さも必要だと思います」

 

こういった諸田さんに共感する若いスタッフは多いらしく、最近のUAのインスタでは、ブリトラ調のスタイルをインスタにアップする若手が急増中だとか。

「若いヤツとは、ファッションとサッカーの話ばかりしています」

時代は変わっても、トラディショナルなスタイルとファッションを愛する心は変わらないようです。

 

 

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