From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

ラスベガスから始まった倍々ゲーム
藤原寛一さん

Friday, August 25th, 2017

藤原寛一さん

 ギャレット専務取締役

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 ギャレット専務の藤原寛一さんのご登場です。ギャレットというのは、ソックスをはじめとして、キャップ、バッグ等、さまざまなファッション・アイテムを扱う総合アパレルです。グループ全体で400人もの従業員を抱えています。自社製品の研究室まで擁しているから驚きです。しかし、25年前に藤原さんが入社した時は、大分様子が違っていたようです。

 

「私が入った大阪支社には、社員が3人しかいませんでした。会社全体でも、15人くらいだったと思います。扱っていたのはソックスだけでした」

 

当時、会社は大変苦しい状況で、起死回生をはかって東京と大阪に支社を出したばかりだったのです。藤原さんは、そこへ就職してしまったというわけです。

 

「ある日社長に言われました。『お前、今からラスベガスのMAGIC(世界最大級のファッション展示会)へ行って来い。そして何でもいいから買ってこい』と。で、いきなり100万円を渡されたのです。『この100万を101万円にしろ』とも言われました。そこで私はその100万円で、帽子を買って帰ってきました。それが当たったのです。そこからさまざまなビジネスが広がっていきました」

 

 25年間で会社は20倍以上に成長したのですから、まさに倍々ゲームですね。その着こなしも、成功したビジネスマンに相応しいものです。

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 スーツはサルトリア セミナーラ。フィレンツェの名店でスミズーラしたものです。

「始めはリヴェラーノで作ろうと思っていたのですが、知り合いに薦められてセミナーラにしました。この色が気に入って」と藤原さんが言うと、すかさず横のスタッフから「いつも同じ色ばかり買われますよね」とのツッコミが。でもお洒落な人ほど、そうなんですよね。

 

シャツはバルバの“ブルーノ”というモデル。

タイは加賀健二さん率いるセブン フォールドです

「先日フィレンツェ店がオープンした時に買いました」

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 時計は、オーデマ ピゲのロイヤル オーク。私とお揃いです。ファッション界には、本当にロイヤル オークをしている方が多いですね。

 

シューズはエドワード・グリーン。1年のうち9割は茶色、そして8割は、スエードの靴を履くそうです。イタリア流の洒落たドレスダウン術です。

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そしてソックスはギャレットオリジナルのgark.(ガーク)というブランド。

「この商品は特許を持っています。履き口のところがナイロン製になっていて、締め付けがキツすぎません。立体的にカカトをホールドする形になっていて、シリコンストッパーが付いていないのに脱げにくいのです」

 

 実は私も一足プレゼントしてもらったので、いま同じソックスを履いてこの原稿を書いているのですが、なるほど快適です。シューズインソックスでお悩みの貴兄はお試しあれ。

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 見事なアズーロ・エ・マローネのコーディネイトですね。お顔までマローネ色によく焼けているので、理由を聞くと、一昨日までカプリ島でバカンスだったそう。

「1年に1度、家族とカプリへ行くのです。プンタ・トラガーラというホテルがあって、そこのプールで一日中ぼーっとしている。とにかく景色が素晴らしいし、来ている人たちもエレガントで、気に入っています」

カプリで休暇とは羨ましい限りです。

 

しかし普段の藤原さんは本当に仕事一筋。仕事のことを伺うと話は止まりませんが、「では、プライベートは?」と聞くと、「う〜ん」と黙り込んでしまいます。

「とにかく今、仕事が楽しくて仕方がない。25年間一生懸命やってきたので、60歳までの数年間は、自分の本当にやりたいことをやっていきたい」

 

それは実用衣料を超えた、本物の高級ファッションだとか(先日ご紹介したACATEもその一環です)。どうやら第2弾、第3弾もあるようで、しばらくは藤原さんから目が離せません。