CODE 11.59 BY AUDEMARS PIGUET ULTRA COMPLICATION UNIVERSELLE RD#4

オーデマ ピゲ:瞠目の“超”複雑時計、その偉業と功績

September 2023

オーデマ ピゲ、今年の新作の目玉は、23もの機構を統合した超複雑時計。そこには、驚くべき革新性が宿っていた。

 

 

text norio takagi

 

 

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル RD#4

日付・月・曜日は見やすい窓表示。8時位置にあるムーンフェイズは、6種類の月のプリントを組み合わせた10枚の画像により、リアルな満ち欠けを再現。3時位置のリュウズ先端のボタンで、クロノグラフのスプリットセコンドを操作する。自動巻き、18KWGケース、42mm。

 

 

 

 オーデマ ピゲは、1875年にリピーターや永久カレンダー、クロノグラフといった複雑機構を専業とするムーブメント会社として創業した。そして1882年にブランドを創設し、オーデマ ピゲ銘の時計製作をスタート。その初作は、永久カレンダーとムーンフェイズ、15分単位のクォーターリピーター、そしてクロノグラフ機構を同時搭載した「グランド コンプリカシオン」であった。以降、オーデマ ピゲは今日まで、140年以上にわたってグランド コンプリカシオンを製作し続けてきた。現行のグランド コンプリカシオンのムーブメントCal.2885は、ミニッツリピーターと永久カレンダー、ムーンフェイズ、スプリットセコンド クロノグラフをひとつに統合した傑作である。

 

 しかしそれを凌駕する、オーデマ ピゲの腕時計史上最も複雑なモデルが今年誕生した。「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル RD#4」(以下ユニヴェルセル)である。グラン&プチソヌリ、ミニッツリピーター、スプリットセコンド クロノグラフ、フライング トゥールビヨン、永久カレンダー、ムーンフェイズを統合した自動巻きムーブメントは、グランド コンプリカシオンを超えるウルトラ コンプリケーションを名乗るにふさわしい。そしてメゾンが1899年に販売した、19もの複雑機構が備わる「ユニヴェルセル」ムーブメントの名を受け継いだ。

 

 21世紀のユニヴェルセルの設計・開発を担ったのは、2021年に完成した新ファクトリー「マニュファクチュール・デ・セニョル」を拠点とする「オーデマ ピゲ ル・ロックル」。その前身は、複雑機構専門のムーブメント会社「オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ」である。同社は、2015年から極めて革新的な複雑モデル「RD#」シリーズを生み出してきた。まず音響盤と共鳴室によりミニッツリピーターの音色を増幅させる「スーパーソヌリ」( RD#1)を発表し、2018 年には超極薄の永久カレンダー「RD#2」が誕生。2022年には極薄のフライング トゥールビヨンのテンプの振動を増幅させて高精度を得る「RD#3」が登場している。ユニヴェルセルは、これらRD#シリーズの新技術を継承すると同時に新たな革新を複雑機構にもたらしている。ゆえにモデル名に「RD#4」を冠しているのだ。

 

 

通常ダイヤルにはベージュも用意(スペックはブラックと同じ)。またWGもしくはPGケースのスケルトンダイヤルもあり、全4種類のモデルをラインナップする。すべて裏蓋は開閉式で、メカニズムを目にすることができる。

 

 

 

 チャイミング機構には、スーパーソヌリを導入。しかも既存は合金製だった音響盤を0.6mm厚のサファイアクリスタル製とし、共鳴室を形成する裏蓋を開閉式とすることで、精緻なメカニズムを裏側から目にできるよう進化させている。

 

 またオーデマ ピゲは、極めて複雑なユニヴェルセルを日常使いに支障のない厚さに抑えることを目指した。フライングトゥールビヨン機構は、極薄で高精度なRD#3を継承している。スプリットセコンド クロノグラフは新設計で、自動巻きローターをリング状のボールベアリングで固定する新たなセミペリフェラルローターとすることで、ベアリング中央に空間を確保。ふたつが重なるクロノグラフ用とスプリットセコンド用の各駆動車を収め、薄型化を実現している。

 

 さらにRD#2の薄型化技術を受け継ぐ永久カレンダーには、刮目すべきさらなる革新性がふたつもたらされている。ひとつは、優れた操作性。クロノグラフ用のプッシュボタンにリュウズを統合させたスーパーリュウズを新開発し、4時位置のリュウズで月を、3時位置のリュウズで日付を、ともに前後に調整できるようにした。月と日付の各表示が戻せるのは、極めて異例。そして2時位置のリュウズでは、ソヌリ機構のグランとプチ、オフとが切り替えられる。ケース左サイドにも、三つのボタンを装備。上はミニッツリピーターの作動用で、中央は曜日送り、そして下でムーンフェイズが調整できる。すなわち4時位置にある2桁の西暦表示を除く暦表示は、どれも指先だけで調整できるようにしたのだ。

 

 調整ができない西暦表示には、ふたつめの革新性が潜む。グレゴリオ暦における閏年の条件はやや複雑で、西暦年が4で割り切れる年は原則閏年となるが(4年周期)、100で割り切れる場合には平年となり(100年周期)、400で割り切れると閏年となる(400年周期)。例えば2100年は4年周期では閏年だが、100年周期に当たるため平年となる。ゆえに既存のほぼすべての永久カレンダーは、この年に調整が必要となる。対してユニヴェルセルの永久カレンダーは、西暦表示の10の位が0を示した際(100年周期をカウント)、2月29日の表示をスキップする仕組みになっている。したがって2400年まで調整不要なのだ。

 

 オーデマ ピゲ ル・ロックルのディレクター、ジュリオ・パピ氏曰く、「今回はスペースの関係上、西暦を2桁表示としましたが、フライング トゥールビヨンを取り除いて4桁表示にすれば、400年周期にも対応させられます」。

 

 その基本設計は、ほぼ完成しているとか。ユニヴェルセルは永久カレンダーを大きく進化させたが、その先には、未来永劫調整が不要な真の意味での“永久”カレンダーの登場が待っている。

 

 

ル・ロックルの丘陵地に建つ、オーデマ ピゲル・ロックルの新ファクトリー、マニュファクチュール・デ・セニョル。延床面積は1万400平米と広大。

 

 

同アトリエのディレクター、ジュリオ・パピ氏。これまでに数々の複雑機構をオーデマ ピゲ以外のブランドにも提供してきた。

 

 

THE RAKE JAPAN EDITION issue 52