骨董通りで「いいもの」だけを扱う
木下慶仁さん
Wednesday, May 25th, 2016
木下慶仁さん
シャロン/株式会社イプシロン・シー・カンパニー 取締役社長
text kentaro matsuo photography natsuko okada
骨董通りのセレクトショップ、シャロンの木下慶仁さんのご登場です。意を決して始めたシャロンでしたが、オープン当初は苦労も多かったようです。
「はじめはマシンメイドも扱っていたのですが、全然売れませんでした。むしろ、ハンドメイドのものばかりが売れました。価格が高い方から売れていくのです。また直輸入にこだわっていたので、扱っていたのは知名度のないブランドばかり。最初の頃は、『これ、どこのブランドですか?』とよく聞かれました。しかしこれも、本当に品質がいいものだと、徐々に受け入れて頂けました。そこでわかったことは、お客様は、高くても無名でも、本当にいいものを欲しがっているということです」
スーツは、サルトリア・ソリート。シャロンが今回日本ではじめてプレタラインを扱うことになったナポリのサルトです。
「オーダースーツは4、50着ほど持っています。初めて商品を仕入れるときには必ず自分で作ってみるので、そんな数になってしまいました。色は紺無地ばかりです。同じ生地で作ると、それぞれの特色がよくわかるのです。今まで作った中でのベストスリーが、今ウチが扱っている、シャマット、直井茂明、そしてこのソリートなのです」
そういえば、ソリートはウチのフクヘン(=服変態)フジタも愛用しています。
タイはフランチェスコ・マリーノ、シャツはモンテサーロ。どちらもナポリのメーカーです。シャロンは本当にナポリに強いですね。
チーフと時計をしないのは、シャロン流のスタイル。
「昔はAPとか持っていたんですけど、なんだか面倒になってしまって・・」
ベルトはティベリオ・フェッレッティ。トスカーナのベルト屋さんです。
シューズは、丸山貴之さんが手掛けるイル・チェーロ。
確かに、日本ではあまり馴染みのないブランドが多いですが、シャロンのHPでは、それぞれのブランドに丁寧な解説が付いているので、一度覗いてみてください。勉強になります。
私がブログの取材をする際に、必ず聞くことがあります。それは、
「小さい頃、どんな子供でしたか?」という質問です。今まで何人もの人にインタビューしてきましたが、子供の頃のことを聞くと、その人の“本質”が、見えることが多いと思ったからです。
そこで、木下さんにも同じ質問をしましたが、彼は「とても貧乏な子供でした」と即答。「どの程度、貧乏だったのですか?」と続けると、「学校と家との間にある、甘い蜜を吸うことができる花が、全部なくなるくらい・・(笑)」というお答え。ファッション界の人は見栄っ張りが多いので、こういう正直な返答をした人は初めてでした。
木下さんは量販店から大手メーカー、セレクトまで様々なお店で販売の経験を積んできましたが、いつも「ナンバーワン・セールスになりたい!」と思ってやってきたそうです。事実ナンバーワンなることも多かったとか。「その秘訣は?」と問うと、「とにかく相手に何か一つ感動して帰ってもらうことを心がけていました。買わせようと思ったことはありません」と。
商売に対する情熱、そしてとびきりのセンスを持つシャロンは、これからきっと伸びていくと思います。