From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

「くるぶし見せ」がカルチャーショック!
宮川ダビデさん

Friday, July 10th, 2015

宮川ダビデさん

 ブルネロ クチネリ ジャパン代表取締役社長

interview kentaro matsuo photography tatsuya ozawa

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ブルネロ クチネリといえば、カシミアをはじめとする高品質な素材と、「スポーツシックな」デザインで広く知られるブランドです。常に一歩先行く提案で、業界のトレンドセッターといわれています。そのブルネロ クチネリ ジャパンの社長が、今回ご紹介する宮川ダビデさんです。

 

クチネリには、この4月から入ったばかりだそうで、この取材をした時点で、社長就任から、まだ2ヶ月しか経っていませんでしたが、すでに同社のアイテムを見事に着こなしていました。

 

ウール100%のスーツは、もちろんブルネロ クチネリ。「ちょっとデニム風な風合いのある生地が気に入って」購入しました。

「クチネリのスーツは、スリムなフィットなのに、本当に着心地がいい。それは至るところに、職人技術が活かされているからだと、入社して痛感しています。ある人は、それを『後ろから女の人にハグされているよう』と表現しました。私もその通りだと思います」

おお、なんと艶っぽい表現なのでしょう! 私もハグされたいなぁ。

 

シャツとタイ、チーフもクチネリ。宮川さんはシャツマニアで、ワードローブには、100着以上をお持ちだとか。しかも、そのうち数着は、「まだ袖を通してもいない」そうです。そんな宮川さんを唸らせるのがクチネリのシャツ。

「シンプルなコットンの白いシャツですが、やはりスリムなフィットで、見た目がキレイ。しかも着心地は抜群です」と。

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時計はロレックス・デイトナ。2009年に日本で買ったものです。

「ずっと前から欲しかった時計でした。特にブラックフェイスが好きだったのです。私は趣味でダイビングをやるのですが、この時計の持つスポーティなイメージに憧れていました。しかし、本当にダイビングをやる時には、この時計は外しますけれど(笑)」

時計は大好きだそうで、他にも、IWCのポルトギーゼやパイロットウォッチをお持ちです。

 

シルバーのブレスレットは、ティファニー。10年前に、友人からプレゼントされたもの。シンプルなデザインとシルバーの質感が気に入って、ずっと愛用しているそうです。

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シューズもクチネリ。

「最初は、正直見た目が自分のワードローブにないタイプだったので、違和感もあったのですが、履いてみると、軽くて実に歩きやすい。ピッティの会場で長時間立っていても、全然疲れませんでした」

クチネリのシューズは、コレクションの中ではリーズナブルで、狙いめのアイテムかも知れません。

 

短いパンツ、裸足にシューズイン・ソックスのスタイルには、今ではすっかり慣れましたが、それまでロングホーズを愛用していた宮川さんにとって、クチネリに入社した当初は、どうにも違和感があったようです。

「インターナショナルのビジネス・ミーティングで就任のスピーチをした時、最前列の重役たちが、全員くるぶしを見せていました。これは、ちょっとしたカルチャーショックでしたね(笑)」

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本日のコーディネイトは、典型的なアズーロ・エ・マローネ。ネイビー、ブラウン、グレイといったベーシックな色がお好みで、派手な色は極力控えるところが、実にイタリア風です。

 

ところで宮川さんは父上が日本人、母上がイタリア人です。ですから“宮川ダビデ”というお名前なのですね。

お父様の宮川秀之さんは、若い頃バイクで世界旅行を企て、たまたま立ち寄ったイタリアが気に入って、そのまま住み着いてしまい、現地の女性と結婚。その後、かのジウジアーロと“イタルデザイン社”を立ち上げ、大成功を収め、クルマ界における日本とイタリアの架け橋になった後、現在は自ら所有するトスカーナのワイナリーで悠々自適という傑物です(現在もカーグラフィック等で執筆をなさっているので、ご存知の方も多いでしょう)

 

「私は7人兄弟の末っ子なのです。家にはいつも、人がいっぱいいて大変でした。ぼやぼやしていると、お兄さんとお姉さんに、何でも持って行かれてしまう。腕力では敵わないから、一生懸命交渉して、欲しいモノを手に入れました。私が、タフ・ネゴシエーターなのは、そういう理由からなのです(笑)」

 

イタリア人のセンスと日本人の繊細さ、そして末っ子ならではの交渉力を持った人物がトップに立って、ブルネロ クチネリは、ますます楽しみなブランドとなりました。