WOVEN TRACK RECORD
織物師の矜持
April 2021
さりげない着こなしの真髄
「私の友人のポール・スミスは、ツイストを加えたクラシックの達人です。私は英国のユーモアのセンスが好きなんです。一方、ブルネロ・クチネリは、ベージュやライトグレイのような色を使ってラグジュアリーを演出するのが得意です。スマートで、人を若々しく見せながらも、安心感を与えてくれるコレクションです」
「“スプレッツァトゥーラ”というのはイタリア語ですが、その真髄を知っているのは英国人だと思います。英国の紳士が赤や紫のソックスをはいていたり、若い人がパッチポケットのついた古いジャケットを着ていて、『ああ、これは私の祖父のものだった。50年前にアンダーソン&シェパード社が作ったもので、修理してもらったばかりなんだ』と言っていたりするのを聞くと、英国人は本当にこの言葉の意味を理解して、自分のものにしているのだと感じます」
ストックされたカラフルなファブリックのセレクション。
「ワードローブは、きちんと手入れをすれば一生使えるものを、ゆっくりと積み上げていくべきだと思います。私はお客様に、スーツは20年持つべきものだと言っています。まるで第二の肌のようになり、素晴らしい相棒となってくれるはずです」
「良い品というものは、何回もトライアンドエラーをして生まれるものです。例えば、ひとつのデザインを10回、15回とやり直しても、なかなかうまくいかないことがあります。デザイナー全員と話し合いをして、提案を重ねていきます。いつもチームで行動しています。まるでゲームのような感じです。『ほら、これをやってみよう。これは今までやったことがないことだから、こっちをやってみないか? もっと他のことをやってみないか?』」
「私たちはいつも、2年後にお店に並んでいるものを想像するようにしています。しかし今は、どんな色が流行るか、どんな生地が人気になるのか、誰にもわかりません。 わかっているのは、誰もが着ていて楽しい生地を求めているということだけです」